今の日本人選手は、史上最強世代なのか―― 凱旋した大谷、今永の思い、そしてイチロー独自の感覚とは?

丹羽政善

日本人選手が示すポテンシャルの高さ

2023年、3度目のWBC制覇を成し遂げた侍ジャパン。連覇を目指す来春WBCで“最強世代”集結なるか 【写真は共同】

 もちろん、振り向かせたのは大谷だ。昨年、2年連続、満票による3度目のMVPを獲得。今年は二刀流に再挑戦するが、打者だけでもメジャーリーグ最強の選手となった。そもそも誰もが、二刀流の成功を疑っていた。それが間違いであることは、早々に証明してしまった。

 また、メジャーリーグに来たら、せいぜい先発3番手ではないか、と見られていた今永の活躍は、日本人投手の裾野の広さを知らしめ、さらに幅広く日本プロ野球、高校生のスカウティングの必要性をメジャーの各球団に意識させることになった。アスレチックスが、東京・桐朋高校の18歳、森井翔太郎とマイナー契約を結んだことが、それを象徴する。

 さらに、まだ開幕ローテーションを勝ち取ったわけではない門別啓人(阪神)が、カブス打線を五回パーフェクトに抑えたことは、どうメジャーの関係者の目に映ったか。

15日カブス戦の4回、2番・鈴木誠也を中飛に打ち取った阪神・門別啓人(手前) 【写真は共同】

 メジャーには、今回日本に凱旋した5人だけではなく、菊池雄星(エンゼルス)、吉田正尚(レッドソックス)、千賀滉大(メッツ)、菅野智之(オリオールズ)らもいる。まさに百花繚乱で、そのメジャー組が来年のWBCに出るというのなら、日本組から選抜されるのは狭き門となる。

 大谷は、「今までもたくさん素晴らしい選手がメジャーリーグでプレーしていたと思いますし、必ずしも今がそうかというのは分からない」と話したが、確かに、さらに遡れば、多くの日本人選手がメジャーで活躍できた時代もあったかもしれない。もはやそのことは証明しようがないが、最強世代を考えるなら、WBCはその一つの目安になりうる。

 個人的には、イチロー、松坂大輔、ダルビッシュらがいた2009年のチームか、大谷、山本、ダルビッシュ、村上宗隆らが揃った2023年のチームか、ということになるのだが、いずれにしても、メジャーリーグでも対等に戦える時代がやってきた。

 もっとも、イチローさん(マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)に言わせればこうなる。米野球殿堂入りを決めた日、こんな話をした。

「今、日本人選手たちの活躍、あるんですけれど。感覚的にはまだまだ少ないんですよね。今年で僕が初めて来てから25年目となるんですけど、『25年後にこんなに少ないの』という感触です。だって、南米系の選手、どのチームだっているじゃないですか、何人もいます。なんだったらアメリカ人よりも多いチーム、感覚的にね、実際の数は見ていないですけど、そこまで到底及んでいないですよね。あまりにも進み方が遅いというのが僕の感触です。各チームに一人、二人、最低いるぐらいになっているんじゃないかと期待していました。でもまったくそこまで届いていないです。これが僕の感想です」

 まだまだ余地があるというのは、それはそれで、日本人選手のポテンシャルの高さを示しているとも言えそうだ。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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