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3戦連続ゴールで「時の人」となった三笘 快足ドクも封じた遠藤は“天王山”でいぶし銀の活躍

森昌利

ブライトンの三笘は自らのゴールで、リバプールの遠藤はクローザーとしてそれぞれチームの勝利に大きく貢献した 【Photo by Getty Images】

 三笘薫の勢いが止まらない。2月22日(現地時間、以下同)のサウサンプトン戦。速さと力強さが融合したドリブルから公式戦3試合連続となるゴールを決め、ブライトンを4-0の勝利に導いた。一方、リバプールの遠藤航も負けていない。翌23日、王者マンチェスター・シティとの大一番でクローザーとしての役目を立派に務め、2-0での勝利に貢献。5シーズンぶりの優勝へ大きく前進したチームの中で、重要なピースとして存在感を示している。

飛んでいるのかと思うほど“絶好調”

「Kaoru Mitoma! The man in the moment!!」
 
 サウサンプトンとのアウェー戦で三笘薫がブライトンの3点目を奪った瞬間、試合を実況していた現地アナウンサーがそう叫んだ。「三笘薫、まさに時の人」とでも訳せばいいか。
 
 またプレミアリーグの国民的ハイライト番組『マッチ・オブ・ザ・デイ』の実況アナウンサーは、三笘のゴールシーンで「The Japanese international is frying!」と叫んだ。飛んでいるのかと思うほど“絶好調”という意味だ。

 これで公式戦3試合連続ゴール。まさに時の人である。3戦連続でゴールを決めると、そのフットボーラーはすさまじく輝く。今回のゴールで今季のリーグ戦での得点は12試合を残した時点でプレミアでの自己最多の7に並び、スーパースターがひしめくリーグで20位タイにランクされ、その存在感も一際増した(※編集注:2月25日のボーンマス戦ではゴールはなかったが、同日時点で得点ランキング20位タイは変わらず)。

 しかもこのゴールが、チェルシーとのFA杯、そして同じチェルシーとの前週のリーグ戦でのゴールに続いて非常にクオリティが高く、人々の記憶に鮮明に残り、話題を呼んでいる。

最高峰の速さと力と技術が相まったゴール

一気の加速でペドロを追い越してパスを引き出すと、ブリーの妨害をものともせず前進。最後は冷静にGKの動きを見て、ボールをふわりと浮かせてゴールを陥れた 【Photo by Mike Hewitt/Getty Images】

「(相手が)マンツーマンで来てましたので、ああいう形はチームとしてありました。真ん中の選手が収めてくれれば走れるスペースがあったので」

 三笘はまず40メートル独走ゴールの“きっかけ”をそう語った。

 後半26分、マンツーマンで守っていたサウサンプトンを相手に、三笘が語った“真ん中の選手”のFWジョアン・ペドロがセンターライン付近で縦パスを受けてマークを引きつけると、後方から猛然と走り込んできた三笘に素早くボールを流した。

 ペドロがサウサンプトン守備陣を引きつけたことで三笘のマークが外れていた。三笘はボールをひったくるように足元に収めると、ここからマッチ・オブ・ザ・デイの実況が叫んだように、まさにふっ飛ぶようなドリブルで最終ラインを切り裂き、その裏に突き抜けた。

 この試合で三笘をマンマークしていたDFのジェームズ・ブリーが、疾風のように脇を駆け抜けた日本代表MFの走りに「しまった!」とでもいうように、本能的に後ろから三笘のシャツをつかんで引きずり倒そうとした。しかし三笘はそんなことはお構いなしに加速して、その姑息な手も振り切った。速いうえに力強いドリブルだった。

 そしてあの見事なフィニッシュ。先制点を決めたペドロのゴールシーンが頭に残っていたという。「キーパーが前に飛び込むのは分かっていた」と言った三笘は、前半23分にペドロがそうしたように、前進してきた元アーセナルGKのアーロン・ラムズデールの頭をふんわりと越えるボールを蹴って、ブライトンの勝利を決定づける3点目を奪った。

 瞬時にGKが触れないループシュートを打つ判断をして、そのタッチを生み出す技術も備えていた。これを“クオリティ”と呼ばずに何と呼ぶのだろう。最高峰の速さと力と技術が見事に相まったゴールだった。

 しかも、ペナルティエリア内で強い浮き玉に対応したチェルシーとのFA杯でのゴール、そして後方から頭を越えてきたロングボールを身体能力に優れた相手DFと競り合いながら、英国中を魅了した神業のようなファーストタッチでコントロールして奪った前週のゴールに続き、ハイクオリティのゴールを決めたのである。それも前の2ゴールとは全く違うパターンで。

 三笘はフィニッシュの引き出しの多様さを問われると、「もともと1つのプレーだけではなくて、いろんな形で取るというのはもちろん、練習の中に取り組んでいる。そこが出ているのは嬉しいです。そういうところでいろんなパターンを見せられれば相手も難しいと思います」と語った。

 日本代表MFが普段からいかに真摯(しんし)にトレーニングに取り組み、進歩を心掛けているか、それが伝わってくるコメントだった。

 さらにはこうも言った。「スプリント自体は良くなっていると思う。でもフィジカル的なものはまだまだ上がると思うんで。そこが上がれば、ああいうシーンも増えてくると思います」と。

 三笘は今後もさらに強靭で速い肉体を作り、こうした独走ゴールを増やすというのである。つまり、27歳日本代表MFの最終形はまだまだこの先にあるということだ。

 プレミアでの自己記録である7ゴールに並んだ感想を聞いたが、「全く気にしていない」という答えが返ってきた。これもやはり、三笘が遠くににらみ、イメージする自身の選手としての最終形からすれば、あくまで通過点でしかない数字だからだろう。

 これからもタフな戦いが続くが、残り12試合で三笘がどんなパフォーマンスを見せてくれるのか、本当に楽しみで仕方がない。

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著者プロフィール

1962年3月24日福岡県生まれ。1993年に英国人女性と結婚して英国に移住し、1998年からサッカーの取材を開始。2001年、日本代表FW西澤明訓がボルトンに移籍したことを契機にプレミアリーグの取材を始め、2024-25で24シーズン目。サッカーの母国イングランドの「フットボール」の興奮と情熱を在住歴トータル29年の現地感覚で伝える。大のビートルズ・ファンで、1960・70年代の英国ロックにも詳しい。

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