バドミントン日本代表、新体制で大堀HCが掲げた「五輪メダル3個」は苦難の道

平野貴也

2025年から新しく就任した大堀ヘッドコーチ(右)。左は、朝倉強化部長 【平野貴也】

 日本バドミントン協会は、1月21日に2025年の日本代表選手を記者会見で発表した。2024年パリ五輪で銅メダルを獲得した女子ダブルスの志田千陽/松山奈未(再春館製薬所)や五輪3大会連続出場の女子シングルスの山口茜(再春館製薬所)ら主力選手が継続して選出された(※代表選手一覧は、記事末参照)。

 世界と伍する戦力を有するが、世界ランク上位でなければ自費派遣となる事情もあり、今後を見据えた強化は前途多難だ。後述するが、混合ダブルスで五輪2大会連続銅メダルの渡辺勇大(BIPROGY)が代表に入っていなかったのは、この辺りの事情を含めて辞退した可能性がある。

2028年ロサンゼルス五輪の目標は、前体制超えのメダル3個

 会見には、2025年から大幅にスタッフが刷新された日本代表を束ねる役を担った大堀均ヘッドコーチ(以下、大堀HC)が出席。3年後の2028年ロサンゼルス五輪の目標として「メダル3個」を掲げた。2004年アテネ五輪でわずか1試合の勝利に終わった弱小国を世界大会上位の常連にまで押し上げた前任の朴柱奉(1月からアドバイザー職)体制で獲得した五輪の1大会最多メダル数が2個。前体制を上回る成果を目標に定めたが、険しい道のりになりそうだ。

財政難により、従来通りの強化は不可能

 何しろ、日本バドミントン協会は、財政難だ。2023年6月に就任して以来、財政問題と向き合っている村井満会長は、会見の冒頭にあいさつをした際に「何とか底を打って、回復基調にある。ただ、まだ十分な資金があるわけではなく、財政再建の途上。大堀さんのご期待に十分応えられる財政的な後ろ盾があるわけではないが、知恵を出し合いながら、何とか次に向かって行きたい」と話した。

 大堀HCも「20数年にわたって、日本が世界で勝てない時代から、一躍世界のトップに押し上げてくださった朴さんの功績は素晴らしい。私なりの考えを組み込みながら、今までの流れを継承していければと思っている。ただ、実際に予算等の関係で同じようにできるかというと、そうでもない状況。手法としては変わってくるかもしれない」と従来通りの強化策は実施できない状況を認めた。

A・B代表を廃止して協会派遣を入れ替え制へ、代表合宿は復活

 これまで、日本代表は、主要国際大会に出場するA代表と、それ以外のB代表に分かれていたが、A・Bの区別は撤廃。代わりに、BWF(世界バドミントン連盟)の規定で上位大会への出場義務を課される選手を想定し、11月第3週時点で世界ランク15位以上だった選手を対象として、トップコミットメントプレーヤー(TCP)を新設。今回選出された41人は、TCP対象12名と他の強化選手での構成だ。

 主要国際大会の派遣はTCPが中心となるが、選手のコンディションやランキングの状況によって協会派遣選手を決める方針とした。ただ、協会派遣以外の選手は、代表選手であっても自費派遣。パリ五輪前から協会は財政難により、五輪出場選手以外は自費派遣としている。実質、トップ選手のみ派遣する形が多くなりそうだ。パリ五輪直前から中止が増えていた大会前代表合宿は基本的に復活させる方針だが、毎回実施できるかどうかは分からないという。

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著者プロフィール

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。主に育成年代のサッカーを取材。2009年からJリーグの大宮アルディージャでオフィシャルライターを務めている。

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