プレミアリーグ「ビッグ6の中間査定」 最高評価は首位快走のリバプール、続くのは…

田嶋コウスケ

チェルシー【前半戦の評価:B】

加入2年目のパーマーにはエースの風格が。年明け初戦でもゴールを挙げて得点数を13まで伸ばし、リーグのランキングで3位タイにつける 【Photo by Visionhaus/Getty Images】

 マウリシオ・ポチェッティーノ監督が昨シーズン限りで退任し、新たにエンツォ・マレスカを監督に迎えた今シーズン。イタリア人指揮官は、マンチェスター・シティのアシスタントコーチ時代にペップ・グアルディオラの下で戦術知識を蓄え、経験も積んだ。チェルシーで実践しているのも、ポジショナルプレーを基盤としたポゼッションベースの攻撃サッカー。攻撃時に4-2-3-1から3-2-5に変形する可変システムで、適切な配置を利して試合の主導権を握るスタイルだ。

 前半戦は10勝5分4敗の4位。年末に調子を落とさなければ、「B」の評価は「A」でもよかった。オーナー交代の影響から近年は混乱ばかりが目立っていたが、一時は2位につけるなど、復活を印象づけるシーズン前半戦だったと言えよう。

 組織の基盤が整備されたことで、選手個々の能力も存分に発揮された。抜群の攻撃センスを有するコール・パーマーはトップ下の位置で躍動。第6節ブライトン戦では前半だけで4ゴールを奪う大暴れを見せ、ここまで12ゴール・6アシストを記録するなど、プレミアを代表する選手に進化中だ。

 そのイングランド代表アタッカーの後方でフィルターとなるモイセス・カイセド、攻守のバランスを取りながら存在感を示すエンソ・フェルナンデスも貢献度が高く、偽サイドバックのタスクをこなすマロ・ギュストとマルク・ククレジャも輝きを放った。さらに、決定力が課題とされたセンターフォワードのニコラス・ジャクソンが9ゴールを奪えば、プレミアではなかなか芽が出なかったジェイドン・サンチョも新天地で水を得た魚のように活躍するなど、マレスカの指導力が効果を上げている点も特筆に値する。

 攻守両面で充実度が高く、もはやCL出場権の獲得はノルマに近い目標となる。

マンチェスター・ユナイテッド【前半戦の評価:C】

ポルトガルのスポルティング監督を辞してマンUと契約し、11月中旬から指揮を執るアモリムだが、ここまで負けが先行。名門再建には相応の時間が必要だ 【Photo by Ash Donelon/Manchester United via Getty Images】

 迷走は、またしても繰り返された。開幕9試合の成績が3勝2分4敗。この時点で14位と低迷し、クラブは成績不振を理由にエリック・テン・ハグ監督を解任すると、その後任にルベン・アモリムを迎えた。2013年のアレックス・ファーガソン監督の勇退以降、暫定監督を含めると11年間で10回目の政権交代となり、名門復活を期して再スタートを切った。

 2022年夏に発足したテン・ハグ前政権を振り返ると、問題点ばかりが目についた。目指していたのはオランダ仕込みの流動性の高い攻撃サッカーのはずだが、ボール保持の不安定さは最後まで解消できず、アタックは単調そのもの。守備陣もスピード不足と連携不足が顕著で、いとも簡単に相手にゴールを許した。解任の決断はむしろ遅すぎたぐらいで、新監督のアモリムに求められるのは抜本的なチーム改革である。

 3-4-2-1システムを戦術基盤とするポルトガル人指揮官が志向するのは、人もボールもよく動く組織的なサッカーだ。就任間もないことから、第19節まで2勝1分5敗と結果がついてこないが、今季は「戦術の落とし込み」と「選手指導」に時間を割き、しばらくは我慢のときが続くだろう。

 選手を個別に見ると、新体制下で右シャドーとして存在価値を示しているアマド・ディアロ、左右兼用のウイングバックとして堅実なプレーを見せているディオゴ・ダロット、マルチな能力を駆使して最終ラインやウイングバックでチームを支えるヌサイル・マズラウィには及第点以上の評価がつけられる。一方、再び退団騒動を起こしているマーカス・ラッシュフォードは、明らかにチームの足を引っ張っており、夏に売却されるシナリオは十分ありえる。

トッテナム【前半戦の評価:C】

ファン・デ・フェン(中央)、ロメロの両センターバックとGKヴィカーリオ(左)の守備ユニットはチームの生命線。3人が復帰すれば巻き返しも可能だろう 【Photo by Marc Atkins/Getty Images】

 在任2年目を迎えたアンジェ・ポステコグルー監督の下、昨季の5位からさらなる飛躍が期待されたが、前半戦を11位で折り返すという厳しい戦いを強いられた。得点数41はリーグ2位の数字であり、攻撃サッカーを志向するオーストラリア人指揮官の持ち味がよく出た一方で、失点数28はリーグ12位タイ。もともと前輪駆動型のチームだが、今季は特に守備が脆弱で、チームとしてバランスの悪さが目立った。

 痛恨だったのは、クリスティアン・ロメロとミッキー・ファン・デ・フェンのセンターバックコンビに、GKグリエルモ・ヴィカーリオを加えた守備ユニットが揃って負傷離脱したことだ。

 ポステコグルー体制では両サイドバックが偽サイドバックとして中盤中央まで位置取りを上げ、チームとしてポゼッションを維持したまま押し込む。その際、スピードとパワーに加えて足技にも長け、広大なエリアをカバーできるロメロとファン・デ・フェンが後方に控えることで、絶妙なバランスをキープすることができた。しかも、最後尾にいるのはGKヴィカーリオ。セービングもさることながら、優れた足技を兼備し、ビルドアップや攻撃の起点としても機能する。

 この3人が揃って不在となった第13節以降は1勝2分5敗(ファン・デ・フェンは第15節に1度復帰したが、再び離脱)。黒星がかさみ、それまでの6位から11位まで順位を一気に落とした。はからずも、ポステコグルー体制の肝がこの守備ユニットであることが示された格好だ。

 ポジティブな要素を挙げるなら攻撃陣になる。利他的なセンターフォワードのドミニク・ソランキが周囲をうまく活かしながら、6ゴールとまずまずの出来。インサイドハーフや右ウイングを務め、5得点・4アシストとコンスタントに結果を残したデヤン・クルセフスキも評価に値する。ハムストリングの怪我で度々欠場したソン・フンミンが、少しずつ調子を上げているのも朗報だ。

 攻撃陣には好材料が多いだけに、3人とも1月中の戦列復帰が見込まれる守備ユニットの復活が待たれる。

(企画・編集/YOJI-GEN)

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著者プロフィール

1976年生まれ。埼玉県さいたま市出身。中央大学卒。2001年より英国ロンドン在住。サッカー誌を中心に執筆と翻訳に精を出す。遅ればせながらX(旧ツイッター)の更新を24年12月から開始。

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