プレミアリーグ「ビッグ6の中間査定」 最高評価は首位快走のリバプール、続くのは…

田嶋コウスケ

首位で新年を迎えたリバプールと、6ポイント差で追う2位アーセナル。覇権を争う両クラブをはじめとするビッグ6の前半戦を振り返る 【Photo by Marc Atkins/Getty Images】

 プレミアリーグでしのぎを削る強豪6クラブ、いわゆる「ビッグ6」はそれぞれどんなシーズン前半戦を送ったのか。ロンドンを拠点に世界最高峰のリーグを追い続ける識者が、昨年末までの各クラブの戦いぶりを総括。併せて、成績はもちろん、ピッチ上で見せたパフォーマンスも考慮に入れて、S、A、B、Cの4段階で6クラブの前半戦を評価した。
※記録はプレミアリーグ第19節終了時点(現地時間2025年1月1日)。ただし、リバプールは1試合未消化。1月11日時点で第20節まで実施。

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リバプール【前半戦の評価:S】

スロット監督の手腕は見事というほかない。大功労者クロップの後任という重圧に負けず、攻守とも隙のないチームを作り上げた 【Photo by Alex Livesey - Danehouse/Getty Images】

 戦前の予想を上回る出来だったと、そう評していいだろう。

 9年にわたるユルゲン・クロップ長期政権が昨シーズン限りで終焉し、オランダ人のアルネ・スロット監督を迎えて、新たなサイクルがスタートした。大きな成功をもたらした前政権からの移行は決して簡単なタスクではなかったが、新指揮官はクロップ体制の長所をうまく残しつつ、ポジショナルプレーを軸としたポゼッションスタイルという自身のカラーを落とし込んで、高品質のサッカーを披露した。

 しかも、14勝3分1敗の首位で前半戦をターン。悪天候で第15節エヴァートン戦が延期となり、ひとつ消化試合が少ないにもかかわらず、2位のアーセナルに6ポイント差をつける好成績を残したのである。45得点はリーグトップ、17失点もリーグトップタイの数字であり、チームは攻守両面で十二分に機能した。

 個人でひときわ貢献度が高かったのは、いずれもリーグ最多の17得点・13アシストを記録したモハメド・サラー。ゴールとアシストを足したゴール関与数において、リーグ史上最速の18試合で30の大台に乗せる大活躍を見せ、文字通り前線からチームを牽引した。

 また中盤に目を向けると、セントラルMFとして新たな才能を開花させたライアン・フラーフェンベルフがまばゆい輝きを放った。しなやかさとパワーを利して、敵を背負った状態から前を向き、さらに前方へボールを運ぶことで、チームに縦の推進力を注入した。

 最終ラインを束ねたフィルジル・ファン・ダイク、12月に入ってセンターフォワードとして存在感を示したルイス・ディアスも躍進の功労者であり、後半戦に向けて大きな穴は見当たらない。2019-20シーズン以来、5年ぶりのプレミア優勝は極めて現実的な目標である。

マンチェスター・シティ【前半戦の評価:C】

開幕4連勝と5連覇に向けて順調なスタートを切ったが、第10節に初黒星を喫すると、そこから4連敗。第12節トッテナム戦では0-4とホームでまさかの惨敗…… 【Photo by Shaun Brooks - CameraSport via Getty Images】

 戦前は前人未到のリーグ5連覇に期待が集まっていたが、10月30日のリーグ杯トッテナム戦で敗れてから突然呪われたように勝てなくなり、ここから悪夢の公式戦5連敗を喫した。その後も立て直せず、新年を迎えるまでの公式戦14試合で2勝3分9敗と嘘のように失速。プレミアでの順位はずるずると下がり、チャンピオンズリーグ(CL)出場圏外の6位で折り返し地点を通過した。

 すでに6敗という敗戦数の多さもさることながら、得点数32がリーグ6位タイ、失点数26が9位タイと、ペップ・グアルディオラ体制には似つかわしくない数字が並ぶ。しかも、ひとつ消化試合が少ない首位リバプールに14ポイントの大差をつけられており、いくら後半戦に強いシティといえども、5連覇の望みは早くも前半戦で事実上ついえてしまった。

 低迷の理由を挙げれば、なにより痛かったのは怪我人の続出だ。大黒柱のロドリを膝靭帯の大怪我で失うと、ケビン・デ・ブライネ、ルベン・ディアス、エデルソン、ジョン・ストーンズ、カイル・ウォーカー、マヌエル・アカンジらも代わる代わる故障し、フルメンバーが一向にそろわなかった。

 もともとグアルディオラ監督は少数精鋭のスカッドをフル稼働させることで、選手のモチベーションを高い状態に保ってきた。だが世代交代が進んでいない事情も重なり、怪我人続出でチーム力の著しい低下を招くことになった。

 とりわけ響いたのはロドリの離脱だ。中盤の守備強度が目に見えて落ち、ディフェンスライン手前まで簡単にパスを通される場面が散見された。結果として、ディフェンスラインの背後にスルーパスを通されて万事休す──。守備陣は、盤石には程遠い出来だった。

 ただ今回の不振は故障者の多さだけが理由ではなさそうだ。ビルドアップの途中で不用意な形でボールを奪われ失点したり、カウンター型のレスターにボール保持率で下回ったり(第19節)、さらには選手から覇気が伝わってこなかったりと、明らかに歯車が噛み合っていない。英メディアで監督と一部選手の不仲が伝えられるなど、問題の根が深そうに見えるのは気がかりである。

 もちろん後半戦の焦点は、グアルディオラ監督がいかにチームを立て直すか。まずは手薄な守備的MFとサイドバックを冬の移籍市場で強化し、来季のCL出場権を獲得できる4位以内を目指したい。ペップの策はいかに……。

アーセナル【前半戦の評価:A】

ライス(左)など主軸が期待通りの働きを見せている。21シーズンぶりの優勝へ、年末にハムストリングを痛めて離脱したサカ(右)の早期復帰が望まれる 【Photo by David Price/Arsenal FC via Getty Images】

 昨シーズンは、リーグ覇者のマンチェスター・シティにわずか2ポイント差の2位で涙を呑み、あと一歩のところで悲願のリーグ制覇に手が届かなかった。迎えた今シーズン、優勝争いの最大ライバルであるシティが前半戦でまさかの失速。当然アーセナルにとっては優勝のチャンスが広がったはずだが、ここまで波に乗り切れない戦いが続いている。

 前半戦は11勝6分2敗の2位。得点数38はリーグ3位タイ、失点数17はリーグトップタイと、成績もスタッツも決して悪くないが、第8節ボーンマス戦(●0-2)、第10節ニューカッスル戦(●0-1)、第15節フラム戦(△1-1)、第16節エヴァートン戦(△0-0)と、リーグ優勝を目指すなら勝利が必須の試合で勝ち点を落としてしまうケースが少なくなかった。結果として、消化試合のひとつ少ないリバプールに6ポイント差をつけられ、彼らの背中を追いかける展開となっている。

 それでも、選手個人の充実度は高かった。5ゴール・10アシストとしっかり結果を残したエースのブカヨ・サカや、攻撃のタクトを振るマーティン・ウーデゴー、中盤で攻守に奮闘したデクラン・ライスは、彼らがいる・いないでパフォーマンスレベルが変わってしまうほどチームにとって不可欠な存在だった。センターバックコンビのウィリアム・サリバ、ガブリエウ・マガリャンイスとGKダビド・ラヤの守備ユニットも強固そのもので、中盤で新戦力のミケル・メリーノが抜群のキープ力とパスセンスで存在価値を高めているのもプラス材料である。

 目標は、2003-04シーズン以来となるリーグ優勝。ミケル・アルテタ監督はアーセナルを頂点に導けるか。その手腕に注目だ。

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著者プロフィール

1976年生まれ。埼玉県さいたま市出身。中央大学卒。2001年より英国ロンドン在住。サッカー誌を中心に執筆と翻訳に精を出す。遅ればせながらX(旧ツイッター)の更新を24年12月から開始。

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