選手権「20得点」を目指す日章学園のエース 英プレミア内定・高岡伶颯は何がスゴいのか?

大島和人

過去の「怪物」と何が違うのか?

大迫勇也(写真右)は第87回大会で10得点を決めた 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 例えば87回大会の大迫勇也(鹿児島城西)、第82回大会で9得点を挙げた平山相太(国見)は体格に恵まれた豪快なストライカーだった。対する高岡は小柄で、パワーで相手を跳ね飛ばすタイプではない。

 しかし試合を通して高岡を追っていると「反応」「動き出し」の速さに気づくはずだ。西目の安田洋介監督も「動き出しの質があそこまで高いとは想定し切れていなかった」と悔いていた。

 高岡のプレー自体はFWとしてオーソドックスで、基本に忠実だ。相手と相手の間に立つ、DFの視界から消える、味方がボールを出しやすいタイミングで動き出すといった「原則通り」のプレーを繰り返す。ただ味方がキックモーションに入ったか入らないかという、誰よりも早いタイミングで動き出している。

 「合法フライング」で10センチ、20センチのアドバンテージを得て、自分が有利な形に持ち込んでしまう。17歳にして老練なFWのように相手が嫌がる、相手が困る選択を矢継ぎ早に繰り出せるのが高岡だ。

 攻撃から守備への切り替え、ファーストDFも彼の強みだ。そのアプローチスピード、球際の鋭さを見るとFW以外のポジションでも生きそうだ。予測と反応の速さは彼をいい選手でなく「スーパーな選手」にしている。

 高岡が見せるDFとの駆け引き、オフ・ザ・ボールの動きを、原監督はこう分析する。

「代表の合宿に行くたびによくなってきていますが、『消える動き』は教えてできるものでもない。点を取る能力は本当に高いけど、教えてできない部分かなと私は感じています」

「メンタリティ」も強みに

高岡は日章学園のキャプテンも担っている 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】

 もう一つの強みはメンタリティだ。キャプテンという立場もあり、試合中の高岡は審判に対してはっきり意思表示をする。その理由を彼はこう説明していた。

「文句ではないですけど、チームの代表として、中でしか分からないことをしっかり伝えています。審判も人間なので、あまり言い過ぎないようにはしていますけど、自分たちは日本一を目指しているので、公平でないジャッジはしっかり伝えています」

 高岡の取材をしていると、久保建英と似た印象を受ける。頭の回転が速く、堂々としていて、自分の意見を言葉にできる。大人数の大人に囲まれても、物怖じした様子や、背伸びした様子が一切ない。そのようなパーソナリティは、海外プロ生活でも生きるはずだ。

 「20得点」という今大会の目標については、こう言い切っていた。

「色んな人が『大きい』ということに対して、それを力にしていくし、今日も力にできた。『あと5試合で20点に行けるのか』という意見もあると思いますけど、それが逆に嬉しい。こういった緊迫感のある試合で、ワクワクしてモチベーションを持っていける選手なので、そこは『20点』と言っています」

 周囲の異論、批判をエネルギーに変えられる。そして大舞台のスリルを楽しめる――。それは間違いなくアスリート、ストライカーとして最高のメンタリティだ。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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