「2024年度 野球指導者講習会」が1月25日から開催。育成年代の指導者に向けた最新トレンドのインプットと繋がりの場に

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【©BFJ】

1月25日〜26日の2日間、都内での「2024年度 野球指導者講習会」開催に向け、1月13日(月)まで募集が行われている。

約30年続くこの野球指導者講習会、別名「Baseball Coaching Clinic(以降、BCC)」は毎年最新のトレンドを交えつつ、受講した指導者が現場でアウトプットできる内容を揃えている。

開催に先立ち、BFJ(全日本野球協会)の高橋大地 事務局次長に今年の受講ポイントなどを伺った。

小中学生を指導する方を中心に受講

BCCは野球の競技人口拡大や発展を実現するため、指導者の資質向上を目的にスタートした。

30年の中で座組を変えながら継続されており、現在は公認野球指導者基礎や全日本軟式野球連盟公認学童コーチ、日本スポーツ協会(JSPO)の軟式野球コーチの資格更新研修としても認可されている。

主に受講者層は小学生・中学生の指導者が中心で、高校生の指導者も多い。

また、現在は資格更新研修の一環として参加する人に加え、資格問わず指導者として学びを深めたい人が全国から受講している。

毎年数百名が受講しており、1000人を超える年もあった。
今回は5年ぶりに、オンラインのみの形式から集合研修が復活。定員は260名だが、3月に録画配信での開催も予定している。

今回5年ぶりに集合研修が戻ってくる 【©BFJ】

高橋氏は開催に向けて以下のように想いを語った。

「毎年意識の高い指導者が多く受けてくださっています。現場に来ると同じ志を持った指導者と交流できますし、全国有数の知識や経験を持った講師の方の話を聞くことはもちろん、直接質問することもできます。

アンケートでも、『自分と同じ年代で指導している人との繋がりができた』『講師の〇〇さんに直接聞けたことが励みになった』といった声をこれまでいただいていますので、これらがまさに集合研修の魅力だと感じています」

座学ではBCC初めてのカリキュラムも

今年のカリキュラムは2日間の構成で、初日は座学とパネルディスカッション・2日目は実技講習が行われる。

座学やパネルディスカッションは毎年テーマを変えて展開されている。

「アンガーマネジメント」の講習は昨年から継続しながら、今年は新たに「バイオメカニクス」「タブレットやスマホで簡単!映像を使った野球指導」の2つを加えた計3講座が行われる。

バイオメカニクスでは、過去に登壇経験のある筑波大学の川村卓教授が担当する。

「以前のアンケートでも川村教授の講義は受講者の満足度が高かったです。今回もバイオメカニクスのタイトルで、野球の動きを科学的に分析した内容をお話いただきます。

川村教授は研究者でもありながら現役の野球部監督でもあります。ですので、理論だけでなく野球部で行っている練習やトレーニング方法を具体的に教えてくださるため、多くの指導者に参考になるお話をしていただけると思っています」(高橋氏)


また、「タブレットやスマホで簡単!映像を使った野球指導」はBCC初のカリキュラムとなる。

日本スポーツ振興センター デジタル推進室の田中仁氏を招いて行われる本講義の内容について、高橋氏はこのように解説した。

「今はプロなど野球のトップレベルでは、トラックマンやラプソードといった機材を使って数値分析する取り組みが広がりつつあります。

ですがBCCでは、受講者層が小・中学生から高校までの指導者が多いため、高額の機材を容易に使うことはできません。このため、タブレットやスマートフォンという手元にあるものを上手く指導に活かしてほしいということでピックアップしました」

中学野球の現在と未来を共有するディスカッションに

パネルディスカッションの今年のテーマは「中学生年代の野球環境整備について」。

近年クローズアップされている部活動の地域移行。野球界では現状どんな考えや取り組みを行っているか、また展望について語られる。

昨年行われたパネルディスカッションの様子 【©BFJ】

高橋氏は「野球界全体の課題として指導者に知ってもらいたい」として、今年度のテーマに設定したと述べた。

「中学生においても野球競技者が減ってきた現状がある中で、部活動の地域移行の話も出てきました。何とかしないと野球界が先細りしてしまう危機感を我々も抱いています。

中学生の野球環境をどう整備したら競技人口を増やすことができるか、ここで話し合いながら現在と未来を共有していきたい考えです」

本編は中学生が対象となっているが、高橋氏は「ぜひ、小学生の指導者にも聞いていただきたい」と語った。その意図を続けて語った。

「今までですと、選手が卒団し、中学の部活動や硬式クラブチーム等へ進んでも、以降は選手を指導する機会はほぼなかったかと思います。
ですが、今後中学の部活動の地域移行が進むと、地域の中でその受け皿を探さなくてはなりません。卒団した選手が中学でも野球を続けたいとなったときに、その環境があるかどうか、小学生の指導者の方々にも気にかけていただきたいですし、場合によってはこれまで小学生選手だけを抱えていたチームが、新たに中学生選手の受け皿となるケースもあるかもしれません。

中学生の野球環境をどう整備していくかは、プロ野球(NPB)と構成する『日本野球協議会』でも話し合いがされています。BCCを受講にいらっしゃる熱心な指導者の方々には、技術指導だけでなく、野球の普及・振興につながるような事柄にもぜひアンテナを張っていただきたいということで、今回このテーマが選ばれています」

今回パネリストとして登壇するのは4名。

まず2名はスポーツ庁運動部活動の地域移行に関する検討会議委員の石川智雄氏と、日本中学校体育連盟軟式野球競技部 副部長の南林達也氏。

「石川さんは中学校の教員を経て、現在は長岡市の教育委員会に在籍されています。元中体連軟式野球競技部長でもあります。そのご経験を踏まえつつ、スポーツ庁の検討会議の最新情報についてもお話をいただく予定です。
南林さんはまさに今、中学野球部の現場にいらっしゃる方です。中学の部活動で今どのようなことが起きているのか、当事者としての声や、今後の展望をお話いただいきたいと思っています。」

そしてもう2名は北海道日本ハムファイターズの執行役員でベースボールオペレーション統括部長の遠藤良平氏と、東北楽天ゴールデンイーグルスのチーム戦略部部長を務める佐々木亮人氏。

NPBの球団に在籍している方を招いた理由について明かしてくれた。

「実はお二人とも日本野球協議会の中で、中学野球の環境整備の議論に関わっていらっしゃいます。プロ野球における取り組み事例を紹介いただきながら、この中学野球の課題に対して『プロとアマチュアが協力して対策を練っている』ことを知っていただきたいと考えています」(以上、高橋氏)

「野球をやっていた人は社会でも通用する人材に」

これらに加えて、2日目には実技指導が組まれている。

今年も捕手では中尾孝義氏(元中日ほか)や、清水隆行氏(元巨人ほか)など、プロ野球界で選手そしてコーチ経験もある面々が講師を担当する。

ここでも質問できる機会を設けているため、プロの技そして指導法などを直接吸収できる場となる。

昨年は杉山賢人氏(元西武ほか)などが実技講師を務めた 【©BFJ】

2日間の充実したカリキュラムを用意しているBCCは今年度も間もなく開講を迎えようとしている。最後に高橋氏は、受講後に現場で活かしてほしいことについて語った。

「BCCで資格更新の対象となっている公認野球指導者資格には『野球の指導を通じて健やかな夢のある社会に貢献する』という基本理念があります。

スポーツである以上、勝利を目指す、そのために技術の向上を目指すというのは当然のことですが、それに加えて、グラウンドを離れても野球人は社会に貢献できる人材であってほしい。そのために指導者が果たす役割は大変重要です。

それに向けて今回のBCCを参考にしていただければ幸いです。」

冒頭の通り、BCCの申し込み期限は1月13日(月)。
現在も募集中なので申込の上、ぜひ足を運んでいただきたい。


(取材 / 文:白石怜平)
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著者プロフィール

「Homebase」は、全日本野球協会(BFJ)唯一の公認メディアとして、アマチュア野球に携わる選手・指導者・審判員に焦点を当て、スポーツ科学や野球科学の最新トレンド、進化し続けるスポーツテックの動向、導入事例などを包括的に網羅。独自の取材を通じて各領域で活躍するトップランナーや知識豊富な専門家の声をお届けし、「野球界のアップデート」をタイムリーに提供していきます。さらに、未来の野球を形成する情報発信基地として、野球コミュニティに最新の知見と洞察を提供していきます。

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