【カープ投手対談】大瀬良大地と栗林良吏が9月の勝てない時期を回想/二人の考える「カープイズム」とは?
【提供:Timely!編集部】
ノーヒットノーランは〇〇さんのお陰
今年6月にノーヒットノーランを達成した大瀬良投手 【写真は共同】
栗林 数字的には負けの数(6敗)が多いので、そこが一番の反省点だと思っています。一つの登板を挙げるなら9月のジャイアンツ戦の6失点は、やってはいけない試合でやってしまったので、一番悔いが残るというかチームに迷惑をかけて申し訳ないなと思っています。9月はチームも勝てる試合が少なかったなかで、自分が余計にそういう試合を増やしてしまって、あれ以降ずっとチームにも勝ちがつきませんでしたし。来シーズンは絶対に「あの試合で勝てたお陰」と言ってもらえるようにしたいなと思っています。
——そういった経験もこれからの財産になっていくと思いますが、大瀬良投手から声をかけたりとかは?
大瀬良 敢えて声はかけませんでした。自分も経験してきているし、分かっていると思いましたし。周りの選手が声をかけていると思いましたし、あまり行き過ぎてもな、と思ったので敢えて何も触れずに様子を見ていました。
——栗林投手の今シーズンは登板数60、セーブ数38、投球イニング55回という多くのキャリアハイの記録もありました。2024年シーズンに点数をつけるとすると?
栗林 20点くらいです。
——かなり低い点数ですが、その理由は?
栗林 負けが多いのがクローザーとして一番情けないところですし、20点取れたのも、開幕前に目指していたチーム最多登板という目標を達成できたので20点には値するのかなと。あとは先ほども言いましたけど、優勝争いのなかで一番やってはいけないことをしているので、他はもう点数はないかなと思っています。
——大瀬良投手は今シーズンを振り返ってみていかがですか?
大瀬良 個人的には昨年、一昨年と成績も思うように伸びてくれなくて、そこに肘の手術もあって、最初のほうは長いイニングを投げることができないスタートだったのですが、リリーフ陣や良吏に助けてもらいながら結果をちょっとずつ残してイニングも伸ばせるようになりました。ちょっとピッチングスタイルも変えようと思いながら臨んだシーズンで、勝ち星は伸びなかったですけど防御率も1点台で終わることができて。久々に規定投球回数投げることができましたし、久々に頑張れたシーズンだったかなと思います。
——OBの野村謙二郎さんがスポーツナビのYouTubeで「シーズン前からキーマンは大瀬良だと思っていた」「インサイドに投げられるようになったのが復活の要因ではないか」と仰っていました。ご自身ではいかがですか?
大瀬良 僕と言ったらカットボールとか曲がり球のイメージが強いと思うんですけど、その対になるシュートボールをより多く使っていこうと思ってスタートしたシーズンだったのですが、上手くハマってくれました。やっぱり逆のボールを意識しないといけなくなってくるというのはバッターにとっては嫌な残像の残り方をしますし、インコースを突くことができたのはすごく大きなポイントだったと思います。
——今年6月にノーヒットノーラン、37イニング連続無失点記録がありましたね。
大瀬良 ノーヒットノーランのときは、状態自体は良くなかったんですけど、キャッチャーの會澤(翼)さんに引っ張ってもらって、野手のみんなに守ってもらって、達成できた記録だと思いますし、そこで勢いをつけてもらって無失点の記録も伸ばすことができたと思っています。プロ野球生活の中で非常に濃い一カ月だったと思います。
——女房役の會澤選手は、酔うといつも「いつかは完全試合、ノーヒットノーランの場面に立ち会いたい」と話されていたそうですね。
大瀬良 若いときから、飲んでいるときは耳にタコができそうになるくらいずっと言っていたので、「いつか達成できたらいいですね」という話をしていたので、それが僕ですごく嬉しいなと思いましたね。でもまだ完全試合はやれていないので、今度は僕じゃない誰かと達成してもらえたらいいなと思います(笑)。
大瀬良さんの〇〇が欲しい!
「譲りたくない」と抑えにこだわる栗林投手 【写真は共同】
大瀬良 やっぱりあのフォークボール。絶対的なボールがあるのと、クローザーというと強くて速い真っ直ぐに落ちるボールがあって空振りが取れるイメージだと思うんですけど、そこに、カーブだよね?
栗林 そうです。
大瀬良 あのカーブも勝負球になるしカウント球にもできるし。今年は割合が多かったカットボールも「本物のカットボールを投げているなぁ」と思いながら見ていました。全てが勝負球にできる、こういうクローザーもなかなかいないんじゃないかなと思います。それが38セーブできる所以だなと思いますし、先発でもいけるんじゃないかなと思わせてくれるボールを投げていましたね。
——「先発」という言葉も出てきましたが?
栗林 1、2年目の頃は打たれたときとかは「先発をやってみたいな」と思っていましたけど、3年目くらいからは全然そんなことは思わなくなりましたし、今の立場、ポジションというのはすごく気に入っているので、だからこそ譲りたくないという気持ちを持っています。大瀬良さんをはじめ、先発投手陣の勝ちを消したくないという気持ちで、自分の力じゃなくて、そういう力をもらってマウンドに上がれるので、だからこそやりがいを感じています。
——相手が持っている物や能力を、何か一つ貰えるとしたらお互いに何が欲しいですか?
栗林 (大瀬良さんの)コントロールですね。一番は野球のコントロールですけど、それだけじゃなくて、大瀬良さんの人柄は人を動かす力、人を巻き込む力とか、他にもいろんなコントロールする力があるので、そういった全てをひっくるめてのコントロールが欲しいです。
大瀬良 上手に言ってくれていますね。僕が上手く手のひらで転がされているということですね(笑)。
栗林 いやいや、これは本音なので。選手会長もされていましたし常にチームの先頭に立っているのはそういうことだと思っているので。
——大瀬良投手は栗林投手の何が欲しいですか?
大瀬良 シンプルにあのフォークボールが欲しいですね。あのフォークがあれば僕ももう少し楽にピッチングができるかな。あのボールはなかなか真似ようと思っても真似できるボールじゃないので。僕はカットボールがメインですけど本来は空振りを取るボールではない、バットの芯をずらすボールなので。空振りを取るボール決めかねてもう11年経っているんですけど(笑)。歳もそろそろ熟してきたので、そういうものを見つけたいなと思いながら、羨ましい目で見ています。