広島・矢野を1年前に絶賛した天才打者と名捕手は? 今季ブレーク選手の飛躍を予感していた男たち【守備・走塁編】 

加賀一輝
 フジテレビ系『すぽると!』内の企画「プロ野球100人分の1位」が今年も放映中だ。同企画はプロ野球選手が各部門のナンバーワンプレーヤーを挙げるもの。各部門の1位が発表されると毎年トレンドワードに入るほどの話題となり、選手からも目標にされていると聞く。

 2011年、無名時代の柳田悠岐(ソフトバンク)を井端弘和氏(侍ジャパン監督)が紹介したのはよく知られた話。今のナンバーワン選手を確認するだけでなく、近未来のナンバーワンを見つけられるのもこの企画の魅力の一つだ。

 本稿では昨年の少数意見から、今季飛躍した選手についてのコメントを拾っていく。かつての井端氏のように「慧眼」を披露したのは誰なのか。守備編、走塁編を見ていこう。

天才打者が矢野の守備を絶賛

矢野(写真左)は持ち前の強肩と身体能力でゴールデン・グラブ賞に輝いた 【写真は共同】

 まずは守備編から、矢野雅哉(広島)を挙げたい。

 大卒4年目の今季は自己最多の137試合に出場。主に遊撃を守り、持ち前の強肩と身体能力で数々のファインプレーを見せた。オフにはゴールデン・グラブ賞を初受賞。来季からは背番号「61」から「4」に変わり、主力としての活躍が期待される。

 そんな矢野を昨年の時点でナンバーワンに挙げたのが西川龍馬だ。昨季限りで広島を離れオリックスに移籍した天才打者は、外野のポジションから感嘆の声をあげていた。

「今年は矢野!自分がレフトを守っていて、矢野は基本ショートに入るので、後ろから見てても一歩目の早さはすごいし、肩も強いし、菊さんっぽいプレーもするから」

 菊さんとは言わずもがな、菊池涼介のことである。10年連続ゴールデン・グラブ賞の名手と矢野はどんなところが似ているのか。

「それできんの?みたいな。菊さんは見慣れたけど、矢野もたまにそういうプレーするので、『やっぱこいつもすげぇな』って思いながら。直近で言うと、サトテルのピッチャーの後ろのやつ。あんなん普通出来ないですからね。なにげなく三遊間(の打球)とかを取ってアウトにしているけど、多分矢野以外だったら追いついてないかなって後ろから見てて思う」

 西川の言う「サトテルのピッチャーの後ろのやつ」は、23年9月30日に行われた広島vs.阪神(マツダ)でのプレー。広島1点リードで迎えた9回2死一塁、佐藤輝明の打球は投手の栗林良吏と遊撃を守る矢野の間にポトリと落ちる。矢野はバウンドしたボールを素手でつかみ、そのまま一塁へジャンピングスローすると、間一髪でアウトとなり試合終了。矢野はガッツポーズと雄叫びで喜びを表した。

 最後に、菊池は「忍者」と言われるが矢野は? との問いに、西川はこう答えたという。

「泥棒(笑)のようにサササと何でも取って、ちゃんとアウトにする。泥棒もそうでしょ?」

 相手の出塁を奪う意味では、「泥棒」という表現も悪くないかもしれない。

燕の正捕手からも称賛の声

 もうひとり、早い段階から矢野の守備に目をつけていた選手がいる。ヤクルトの正捕手・中村悠平だ。他球団の選手からはどう見えていたのか。

「ちょっと意外な選手だと思うんですけど、広島の矢野選手。出ていますか?」

 インタビュアーが「いつも源田選手とか……」と答えると、「源ちゃんも相当うまいですけど、矢野選手の守備範囲。あれは結構広いし、肩が強いんですよね」。西川とも共通した理由である。

 自分の打席でどうこうはないとのことだが、「他の試合のリプレイとかも見ていて、あんなところに追いついたとか、三遊間深いところからバッと投げたりとかもしてるし、そういうの見ると」。客観的に見てもすごいということだろう。

 今季の矢野は規定打席に到達し打率.260と及第点の成績を残している。相手投手に1打席で22球投げさせるNPB新記録を打ち立てており、もはや「守備だけ」の人ではなくなってきている。そのあたりも中村のコメントが聞きたいところだ。

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著者プロフィール

1988年3月6日、愛知県生まれ。成蹊大学卒業後、一般企業を経て独立。ライティング、MCなど幅広く活動する。2016年〜23年まで『スポーツナビ』にて編集・編成を担当。在職中に五輪・パラリンピックへの派遣、『Number』『文春オンライン』等への寄稿を経験。趣味は草野球で、1週間で20イニング投げることも。

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