【月1連載】ブンデス日本人選手の密着記

“00世代”第3の男、横田大祐の評価が上昇中 堂安律と重なる「日本人っぽくないメンタリティー」

林遼平

英語もドイツ語もそこまで堪能ではないが

23-24シーズンにはポーランドのグールニク・ザブジェでリーグ戦18試合・7得点。欧州の複数クラブでプレーする中で、横田は発信することの大切さを学んだ 【Photo by Mikolaj Barbanell/SOPA Images/LightRocket via Getty Images】

 試合後、「ピッチ上での雰囲気が日本人選手というより海外の選手っぽい」と感想を伝えると、横田は「よく言われます」と笑い、その思いの丈を言葉にした。

「意識しているところでもあります。もちろん、日本人っぽい雰囲気を出しているほうがいい時もあるんですけど、自分はもう日本人として考えずにやっているというか、いち選手として言いたいことは言おうと思っている。ちょっと度が過ぎてたまに喧嘩になったりもしますけど、そこは海外でやっていく上でいいあんばいを見つけながらやっていくことが大事だと思っています。そこが自分の良さというか、自分から発信することは特に意識していますね」

 欧州に来たばかりの日本人選手で、ピッチ上で発信するという点で存在感を出せる者はあまり多くない。特に言語面でのディスアドバンテージがある分、ガンガン意見していくのが難しいというのが大きな理由の1つとなっている。

 しかし、24歳にしてすでに欧州の複数チームでプレーしてきた横田は、本人が英語もドイツ語もそこまで堪能ではないという中で、発信していくことの大切さを過去の経験から学んできたようだ。

「ラトビア時代ぐらいからですね。それまではいわゆる日本人っぽい感じでけっこう静かにしていたんですけど、変えたというか、変わらなければいけないなと思って。傲慢なわけではないけど、自分に寄越せと言っていかないとボールが来ないんです。言い続ければ、来ないものが来るようになる。もちろん結果を出さないとチームメイトから信頼されないし、『うるせえな』となってしまうので、そうならないように頑張るだけです」

堂安と共通するのは「結果への飢え」

自己主張の強さという点でイメージが重なるのがフライブルクの堂安だ。横田もステップアップ移籍できるだけの結果を残し、日本代表入りという目標に近づきたい 【Photo by Carmen Jaspersen/picture alliance via Getty Images】

 横田の話を聞いていた時に思い浮かんだのは、フライブルクで活躍する堂安律の姿だった。

 堂安の試合を取材していると、彼がピッチ上で言い争いのようにチームメイトとコミュニケーションを取っている場面を度々見かける。試合後には笑顔で会話をしていて、そのスイッチの切り替えが”彼らしさ”なのだが、意見する、発信することの重要性をあらためて実感させられることが多い。

 例えば、11月30日に行われたブンデスリーガ第12節のボルシア・メンへングラッドバッハ戦。ハーフタイムに入る際にセントラルMFのニコラス・ヘフラーと何やら喋りながらロッカーへと向かっていたのだが、試合後にはその時を振り返り、「ちょっと言い合いですね。言えないです、それ以上(笑)。怒ってました、向こうも」と言って笑っていた。

 結局、そういったコミュニケーションがピッチ上に変化を生み、後半開始直後の49分には堂安のゴールが生まれることになる。もちろんそれがすべてとは言わないが、意見のすり合わせをすることで、堂安がボールに触る機会が増えたのも事実だった。

 この2人に共通しているのは、「結果に飢えている」(横田)ということだ。得点を取りたい、いいプレーをしたい。その飢えを満たすためにやれることはすべてやる。そんな思いが行動に表れている。チームメイトと遠慮なく言い合える関係を築くことで、結果につなげているのだ。

 横田はまだまだ無名の存在である。カイザースラウテルンで着実に評価を上げているが、さらに結果を残していかなければ、目指す「日本代表」の舞台は見えてこない。それでも、日本人っぽくないメンタリティーに、誰とも違った可能性を感じている。同期の2人とは別の道を歩んでいるが、欧州で揉まれた経験を生かしてさらなる飛躍を遂げられるか。今後の活躍に注目したい。

(企画・編集/YOJI-GEN)

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著者プロフィール

1987年生まれ、埼玉県出身。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることに。帰国後、サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ担当を歴任。現在はフリーランスとして各社スポーツ媒体などに寄稿している。2023年5月からドイツ生活を開始

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