古今東西「究極のユーティリティープレーヤー」 海外の歴代No.1はフリット、では国内は?
山田暢久の偉才は超のつく汎用性の高さ
現役日本人プレーヤーでは、札幌の駒井(左)と宮澤の2人が代表格か。いずれも最前線から最終ラインまで幅広くこなせる万能性を有している 【(C)J.LEAGUE】
まず、現役選手から探れば、北海道コンサドーレ札幌のMF駒井善成が最上位に来る。ミシャ・ペトロヴィッチ監督の下、最前線から最終ラインに至るまで幅広くこなしてきた。具体的には3-4-2-1システムにおける2シャドーの一角とウイングバック、さらに中盤ではダブルピボーテの一角、そして3バックの一角を任されることもあった。
サイズ(168センチ)の問題もあり、4バックのCBを担うのは難しいだろうが、それ以外のポジションなら十全に機能するだけの技量とサッカーIQを備えている。
さらに、同じ札幌のMF宮澤裕樹もFW、MF、DFのセンターポジションでプレーしてきた。サイズ(182センチ)に恵まれたこともあり、円熟期を迎えると、主にダブルピボーテの一角か3バックの中央に収まった。
歴代の名手からナンバー1を選ぶなら、日本代表でも活躍した山田暢久だ。浦和レッズ一筋のワンクラブマンとしても名高いが、その偉才はやはり超のつく汎用性の高さにあった。
右のSBやウイングバックの印象が強いが、2トップの一角やトップ下、ピボーテやCBにも難なくフィット。スペイン代表やバルセロナなどで活躍したチキ・ベギリスタインが浦和在籍時に、「海外で成功する可能性は小野伸二以上」と語るなど山田の底知れぬ潜在能力を高く評価していた。
175センチと大柄ではなかったが、卓越した運動能力を誇り、外国籍選手との1対1でも負けない速さと強さを兼ね備えていた。攻撃的なポジションを任せれば、本職の選手たちも真っ青の独特のセンスを発揮し、決定的な役割を果たしている。ある種の天才だった。
スピードがあれば福西は“和製フリット”に
その汎用性の高さで複数のポジションに難なくフィットした山田(右)は、ある種の天才だった。福西(左)も3つのセンターポジションに対応した例外的存在だ 【(C)J.LEAGUE】
翌年はギョキッツァ・ハジェヴスキー新監督の意向により、3バックを束ねるリベロに据えられ、新境地を開いている。なかでも機に乗じて攻め上がるセンスは抜群だった。
FW(特にCF)とCBは互換性があり、実際にCBからCFに転向してブレイクした中山雅史(元日本代表)のような例もある。また、ボランチとCBも互換性のあるポジションだろう。だが、3つのセンターポジションをすべてこなせる選手は極めて少ない。その点、福西は例外的存在だった。もしもスピードに恵まれていたら、“和製フリット”になっていたかもしれない。
水準以上のスキルが備わっていることを大前提とすれば、フットボーラーの進化・発展を促してきた三要素は大型化、高速化、多様化にある。現代においてもなお、これらの条件をことごとく満たすハイスペックなフットボーラーは少数派。洋の東西を問わず、未来の担い手にふさわしい《21世紀のフリット》が続々と現れるのはこれからだ。
(企画・編集/YOJI-GEN)