日本代表から高校に異例の「1日限定逆レンタル」 福岡大大濠・渡邉伶音がU18リーグ制覇に貢献

大島和人

先輩の応援、同級生との縁

同級生・柴田獅子は10月のドラフト会議で1位指名を受けた 【写真は共同】

 片峯監督は福岡大大濠の育成方針をこう言葉にする

「チームとしてどう戦うかより、最大限『個』を伸ばすことを大事にして、コーチングを行っています。チームで戦うことはもちろん大事ですけれど、勝負の場面でもいかに強い個が集結しているかが大事になってくると思います」

 渡邉への期待はこのように述べる。

「留学生はたくさんいますけれども、そこをなぎ倒していく姿をウインターカップで見たいですね。力強いプレーだけではなくて、スピーディーに、それからスキルもある状態に持っていければと思っています」

 渡邉は年代別代表の活動に加えて、2023-24シーズンにはB2ライジングゼファー福岡の特別指定選手としてコートに立った。留学生とのマッチアップ、年代別代表の国際試合、Bリーグ、そしてA代表と様々な経験を重ねている。それは今後のキャリアで生きてくる部分だろうし、個を尊重するチームの方針も彼の成長を後押ししている。

 17日の代々木体育館には、日本代表のスタッフやチームメイトが視察、応援に駆けつけていた。ベンチ裏には井上宗一郎、牧隼利、西田優大といった福岡大大濠OBに加えて、川真田絋也の顔も見えた。

「代表に入るときは(藤枝明誠戦に)出られるか分かっていなかったんですけど、1日2日前に出られることが確認できました。昨日の練習が終わった後に『頑張れよ』『応援行くから絶対勝てよ』みたいな言葉をいただいていました。休みの日に自分のため、大濠のために足を運んでくれたので感謝しています」(渡邉)

 高校に戻ると同級生には渡邉と同等以上の有名人もいる。北海道日本ハムファイターズからドラフト1位指名を受けた柴田獅子(れお)だ。

「3年生はスポーツ生が全員同じクラスで、柴田は3年間同じクラスで、仲もいいです。部活が違っても一緒に勉強を頑張ったりして切磋琢磨しています。寮も同じなので、ずっと一緒にいる感じです。(柴田選手は)いつも静かですけど、自分には結構ちょっかいを出してきます」(渡邉)

 柴田は186センチ・85キロの大型右腕だが、スポーツ生クラスでは中型サイズだという。206センチの渡邉がいて、バスケットボール部は190センチ近辺が標準サイズ。さらに「バレーボール部に203くらいのやつがいる」(渡邉)というから、全国の高校でもっとも平均身長が高い学級かもしれない。

この先の目標は?

Bリーグ出場経験も渡邉の糧になっている 【(C)B.LEAGUE】

 日本代表はFIBAアジアカップ2025 予選に向けた活動中で、11月21日にはモンゴルとのホーム戦、24日にはグアムとのアウェイ戦が組まれている。渡邉の目標はまず代表として公式戦のコートに立つことだろう。

 渡邉の経験と成長は、福岡大大濠のためにもなる。彼はこう抱負を語っていた。

「今はまず代表に選ばれたい。11月末からウインターカップまでの期間は合宿で得たものを発揮しつつ、周りの選手たちに落とし込めていけたらと思います」

 4年後の2028年にはロサンゼルスオリンピックがある。

「トムさんから『ロサンゼルスを狙えると思う』と言っていただいて、『ロサンゼルスに絶対出る』という気持ちは強く持っています」(渡邉)

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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