渡邊雄太不在のピンチを救う千葉Jのベンチメンバーたち 田代直希が「地元」で思い、表現していること

大島和人

開幕戦は出番のなかった田代(中央)が6日の試合では大きな貢献を見せた 【(C)B.LEAGUE】

 千葉ジェッツにとって、10月6日の宇都宮ブレックス戦は、新アリーナで迎える祝祭感に満ちた開幕2戦目だった。しかし第1クォーター残り3分57秒に、チームは大きなアクシデントに襲われる。ファンやメディアの「お目当て」だった新加入の渡邊雄太が左足首付近を痛め、プレー続行不可能と思われる状態でロッカーに下がってしまった。

「NBA通算6シーズン、213試合に出場した206センチのオールラウンダー」「左利きでスキルが高く、3PシュートもNBA通算37%と高確率で決めている29歳」というスペックは、外国籍選手だったとしてもこのリーグでは超大物だ。千葉Jは外国籍枠を割かずにその渡邊をコートに立たせられるのだから、優勝候補の筆頭に挙げられているのも当然だろう。ただ、そんな大黒柱が開始早々にコートから姿を消してしまった。

ベンチメンバーが作った流れ

 それでも千葉Jはベンチメンバーが渡邊の穴を埋めて開幕2連勝を飾った。クリストファー・スミスのドライブは特に有効で、彼が24分33秒の出場でチーム最多の20得点を挙げている。田代直希、金近廉は得点こそ多くなかったが20分近いプレータイムで役割を果たした。37歳のパワーフォワード(PF)荒尾岳も、しっかり「つないだ」一人だ。

 最終スコアは80-61。渡邊が不在の中で第2クォーターにリードを広げ、後半もリードを保って試合を終えた。トレヴァー・グリーソンヘッドコーチ(HC)はこう試合を振り返る。

「金近やスミス、田代、西村(文男)や荒尾がいい流れを作ってくれた。ウチの強みはベンチメンバーが戦えることで、そこはとても誇りに思います。アクシデント、ファウルトラブルがある中で勝ち切れて良かった」

 田代は188センチ・85キロのウイングプレイヤー。琉球ゴールデンキングスで9シーズンプレーし、今季から千葉Jに移った新戦力だ。5日のプレータイムはゼロだったため、10月6日が「デビュー戦」だった。

 グリーソンHCは田代のプレーについてこう述べる。

「プレシーズンはコンディションが整わず、なかなか彼がどういうプレーヤーかを見出せていませんでした。しかし今日はホームゲームで素晴らしいプレーを作っていた。自分のリズムを作り出せて、ディフェンス面も頼れますし、良いシューターです。ローテーションの中に上手く組み込めたらいいのかなと思っています」

富樫が語る田代効果と金近の成長

お互いの健闘を称える田代(左)と富樫(右) 【(C)B.LEAGUE】

 キャプテンの富樫は同い年の田代をこう評価する。

「3年連続でファイナルに進出した『勝ち方』を知っている選手が加わることで、またさらにチームは良くなると思います。(西村)文男さんと(荒尾)岳さんと田代の3人は常にベンチから出てきて、シーズンを通してチームの大きな助けになるはずです」

 富樫はもうひとり、金近の成長と貢献も強調していた。金近は渡邊と同じスモールフォワード(SF)で、スクリメージ(いわゆる紅白戦)は頻繁にマッチアップする同士だ。21歳とまだ若く、日本代表の未来を担う人材だが、元NBAプレイヤーと対峙する中で守備力が短期間で向上しているという。

「練習では金近選手が毎日のように(渡邊と)マッチアップをしていて、成長をすごく感じます。去年の彼はシュートが入る日はいいけど、入らない日は他の活躍をそこまで感じられなかったかもしれません。今年はシュートが入る、入らない関係なく、彼の存在を大きく感じます。雄太の怪我の状況は分からないですけど、間違いなく金近はその穴を埋めてくれると思います」(富樫)

金近(左)はDF力の向上が目覚ましい 【写真は共同】

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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