【第3回プレミア12】侍ジャパンの戦いを展望 予選1位通過の最右翼も「容易な戦いはない」

村田洋輔

最大のライバルは「新星」擁する韓国か

韓国代表の金倒永(起亜タイガース)。20歳とリーグ最年少で「30-30」を達成した、今大会の注目選手だ 【Photo by Gene Wang/Getty Images】

 最後に、オープニング・ラウンドで侍ジャパンと戦うグループBのライバルチームについて見ていこう。

 最大のライバルとして侍ジャパンの前に立ちはだかるのは、やはり韓国だろう。第1回大会の優勝チームであり、前回大会でも決勝で対戦した。現在の代表チームは世代交代の途上にあり、投打とも核となる選手がいないという印象は否めない。

 しかし、今季は金倒永(起亜タイガース)というニュースターが誕生。打率.347、38本塁打、109打点、40盗塁、OPS1.067という凄まじい成績を残して史上最年少で「30-30」を達成しただけでなく、143得点はリーグ新記録だった。もともと侍ジャパン相手の試合では100%以上の力を発揮するチームであり、スーパースター不在とはいえ、侮れないチームであることは間違いない。

 オープニング・ラウンドの大部分が台湾で開催されるため、チャイニーズ・タイペイはホームの大声援を受けながらプレーすることになる。投手陣はダイヤモンドバックスのプロスペクト(若手有望株)として期待される林昱珉が軸となり、打線は首位打者の林立(楽天モンキーズ)、リーグ2位の23本塁打を放った吉力吉撈・鞏冠(味全ドラゴンズ)らがけん引する。地の利を生かし、スーパー・ラウンド進出を目指す。

 現役MLB選手が参加すればスター軍団となるドミニカ共和国だが、今大会ではMLB経験者と日本球界経験者を中心にメンバーを編成。先発は「完全試合男」のドミンゴ・ヘルマン、ブルペンはMLB通算107セーブのネフタリ・フェリス、そして打線はメル・ロハスJr.(元阪神)とアリスティデス・アキーノ(元中日)が軸となる。こうした選手たちが実力を発揮すれば、スーパー・ラウンド進出は現実的な目標と言えるだろう。

 東京・府中でキャンプを張ったオーストラリアは投手力に不安を残し、オープニング・ラウンド突破のためには、打線が各国の投手陣を攻略することが必要になる。長打力のあるロビー・グレンディニング、リクソン・ウィングローブ、ダリル・ジョージらの活躍が不可欠だ。また、今年のMLBドラフト全体1位指名でガーディアンズに入団したトラビス・バザーナにも注目。強打が魅力の二塁手で、将来のスーパースター候補生だ。

キューバ代表のリバン・モイネロ(ソフトバンク)。今季から先発に転向し、11勝5敗、防御率1.88をマークし、最優秀防御率のタイトルを獲得した(写真は2023年のWBC) 【写真は共同】

 韓国とともに、侍ジャパンにとって厄介な相手になりそうなのがキューバだ。パ・リーグ防御率1位のリバン・モイネロ(ソフトバンク)とセ・リーグ最多セーブのライデル・マルティネス(中日)に加え、今季メキシカンリーグで防御率1.18をマークした中継ぎのヨアン・ロペス(元巨人)がおり、この3人のリレーとなれば、侍ジャパンの打線といえども簡単には打ち崩せないはず。侍ジャパンがオープニング・ラウンド5戦全勝を目指すうえで、キューバがどの試合にモイネロを起用するかは大きなポイントとなりそうだ。

 ひいき目なしに見ても侍ジャパンが1位通過の最有力候補だが、何が起こるかわからないのが国際大会の怖さでもある。グループBの開幕戦は、今日11月13日にバンテリンドームで行われる侍ジャパン対オーストラリア。大会連覇を目指す侍ジャパンの戦いが、いよいよ幕を開ける。

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著者プロフィール

神戸出身。2001年、イチローのマリナーズ移籍をきっかけに本格的にMLBに興味を持つ。2016年からMLBライターとしての活動を開始し、2017年から日本語公式サイト『MLB.jp』編集長。2021年にはSPOZONE(現SPOTV NOW)で解説者デビュー。ジャンカルロ・スタントンと同じ日に生まれたことが密かな自慢。

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