無我夢中-鈴木愛が示す新境地

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【Photo:Hiromu Sasaki/Getty Images】

JLPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ 宮崎カントリークラブ(宮崎県)第1日

 気がつけば、18ホールのプレーを終えていた。鈴木愛が5バーディー、1ボギーの内容で、首位から2打差の4位タイと好スタート。ところが、内情はどうだったか、といえば、「パッティングが良かった」と、好調の要因をひとこと明かし、見えない苦悩を話した。

 「体調が悪すぎて、スタート前はとてもゴルフになる-そんな感じがしなかった」と、安どのため息がもれる。マスクでカバーし、表情をそれほど見て取れたわけではないが、いつものような目の輝きが影を潜めていた。今週初め、ノドの痛みからはじまり、38度を超える発熱。19日に風邪と診断されている。最終戦を目前にして、実にやっかいな状況をかかえてしまった。

 苦難に直面し、これまでの豊富な経験が生きた、といえるだろう。奪った5バーディーの内訳は、3メートルが3回。4メートルが2回だった。培った、パッティングの名手の冠はダテではなかったことの証明だ。こんなヒントをつかんだ。「テークバック0.5、フォローが1.5の配分でストロークしていた。でも、前週の練習でストロークを1対1にすることで、よりスムーズなストロークができるようになったのです」。

【Photo:Hiromu Sasaki/Getty Images】

 ロープの外では不安ばかりが脳裏を過ったが、いざスタートホールのティーイングエリアに立てば、言い訳は許されない。それこそ、目前の1打だけに全集中。「体に力が入らず、1Wで10ヤードは飛距離が落ちていた。そんな感じでしたから、アイアンショットはひと番手あげて対処をしたのです」と、そっと囁く。楽しみに来場した、ギャラリーにヘタなプレーは見せられない。過去、賞金女王のタイトルを2度獲得したプライドだった。

 かかってしまった病を、どう緩和させていたのだろう。「水分をたくさん補給し、ビタミンCとはちみつを摂取。ひたすら静養につとめました。特に昨晩からつかって、高価があるなぁと思ったのは寝ている時のマスク。しかも二重構造になっていて、水分を含んだスポンジのようなシートが入っている。おかげでノドの痛みがなくなり、呼吸がすごく楽になりました」という。

 あすの回復を祈りながら、グリーン攻略の工夫を質問。「上りの逆目、下りの巡目はタッチを合わせることだけを意識することです」と、挑戦中だ。ルーキーの頃から人一倍の練習を欠かさなかった。好調時は当然として豊富な練習量を積み重ねることは、ピンチで役立つ。今大会、11年連続11回目の出場は、申ジエに続く、2番目のキャリアだった。
(青木 政司)
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