【第3回プレミア12】侍ジャパンの戦いを展望 予選1位通過の最右翼も「容易な戦いはない」

村田洋輔

11月9日に行われたチェコとの強化試合で、7回に3ランを打った辰己涼介(楽天)を迎える井端弘和監督。第3回プレミア12における侍ジャパンの戦いが、いよいよ今日、幕を開ける 【写真は共同】

 世界ランキングの上位12カ国が出場する大会として、2015年に始まったプレミア12。MLBのロースター40人枠に登録されている選手に出場資格がないため、多くの現役MLB選手が出場するワールド・ベースボール・クラシック(WBC)と比較して「レベルが低い」との声も聞こえるが、侍ジャパンが第1回大会で3位に終わったように、勝ち抜くのは決して容易ではない。

 2019年の第2回大会を制した侍ジャパンは、ディフェンディング・チャンピオンとして今大会を迎えるが、レギュレーションの変更もあり、簡単な戦いにはならないことが予想される。

 まず、今大会のレギュレーションを改めて確認しておこう。オープニング・ラウンドはA組とB組の2グループに分かれ、各6チームが総当たりのリーグ戦を行う。侍ジャパンは11月13日にバンテリンドームでオーストラリアと対戦したあと、台湾に移動し、15日から韓国、チャイニーズ・タイペイ、キューバ、ドミニカ共和国と4日連続で試合が組まれている。

 オープニング・ラウンドの各グループの上位2チームが東京ドームで開催されるスーパー・ラウンドに進出。スーパー・ラウンドは4チームの総当たりで行われ、1位と2位が決勝、3位と4位が3位決定戦に進むことになる。前回大会と比較すると、オープニング・ラウンドからスーパー・ラウンドに進めるチーム数は2枠減少。スーパー・ラウンド進出をかけて、オープニング・ラウンドからハイレベルな戦いが予想される。

打線の中心は牧秀悟か

主将として、DeNAを26年ぶりの日本一に導いた牧秀悟。今大会では、打線の中心としての活躍が期待される 【Photo by Gene Wang/Getty Images】

 次に侍ジャパンのメンバー、そしてそれを踏まえた目指すべき戦い方について見ていこう。

 前述のとおり、プレミア12ではMLBのロースター40人枠に登録されている選手には出場資格がないため、今大会は大谷翔平、山本由伸(ともにドジャース)、ダルビッシュ有、松井裕樹(ともにパドレス)、今永昇太、鈴木誠也(ともにカブス)、吉田正尚(レッドソックス)といった選手たちは出場メンバーに含まれていない。

 また、2023年のWBCで主力を担った村上宗隆(ヤクルト)、近藤健介(ソフトバンク)、岡本和真(巨人)、佐々木朗希(ロッテ)らもメンバーを外れており、各国の現役MLB選手を圧倒するパワーとスピードで大会を制した2023年のWBCとは、異なる戦い方を強いられるのは間違いないだろう。

 オープニング・ラウンドが6チームの総当たりとなったため、先発投手は5人必要。井端弘和監督はオーストラリアとの開幕戦に井上温大(巨人)を先発させることをすでに発表しており、井上のほか、髙橋宏斗(中日)、戸郷翔征(巨人)、早川隆久(楽天)、才木浩人(阪神)といった顔ぶれが、先発ローテーションを形成するとみられる。

11月13日に行われる日本の初戦、オーストラリア戦の先発に抜擢された井上温大(巨人)。井端弘和監督の期待に応えることはできるか 【写真は共同】

 いずれも26歳以下の若手だが、確かな実力を持つ投手ばかり。シーズン終了から間隔が空いているため、コンディションや試合勘の部分には若干の不安を残すものの、現役MLB選手がいない対戦各国の打線を相手に大量失点を喫することは考えにくい。基本的には先発投手陣が相手打線をねじ伏せ、それを打線が援護し、救援投手陣がリードを守り抜くという試合運びになっていくはずだ。

 打線については、26年ぶりの日本一に貢献した牧秀悟(DeNA)が中心になりそうだ。パ・リーグ打率2位の辰己涼介(楽天)、パ・リーグ打点3位の栗原陵矢(ソフトバンク)、セ・リーグ打点4位の森下翔太(阪神)など、各球団で主力を張る実力派の若手が多く選出されており、時には盗塁や送りバント、エンドランといった小技も絡めながら、勝つために必要な得点を挙げることが求められる。

11月9日、10日に行われたチェコとの強化試合で、連日のマルチヒットを記録した森下翔太(阪神)。10日には2ランを放った 【写真は共同】

 また、守りの中心は源田壮亮(西武)、ブルペンの軸は大勢(巨人)だろう。オープニング・ラウンドでは、勝敗が並んだ場合に1イニングあたりの得点数や失点数が重要になってくるため、余計な点を与えず、その一方で取れる点は確実に取っていくことも大切だ。

 9イニングで決着がつかず、延長戦になった場合、無死1・2塁から始まるタイブレークが採用されていることも忘れてはならない。侍ジャパンを代表する「足のスペシャリスト」である周東佑京(ソフトバンク)は今大会メンバー入りしていないが、セ・リーグ盗塁3位タイの小園海斗(広島)、パ・リーグ盗塁4位タイの辰己、そして周東に代わる「足のスペシャリスト」として招集を受けた五十幡亮汰(日本ハム)らの機動力が必要になる場面も出てくるだろう。

 投・打・走・守で各選手がしっかり役割を果たせば、5戦全勝でのグループBの1位通過は決して不可能な目標ではない。昨年10月からトップチームの指揮を執る井端監督の采配にも注目だ。

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著者プロフィール

神戸出身。2001年、イチローのマリナーズ移籍をきっかけに本格的にMLBに興味を持つ。2016年からMLBライターとしての活動を開始し、2017年から日本語公式サイト『MLB.jp』編集長。2021年にはSPOZONE(現SPOTV NOW)で解説者デビュー。ジャンカルロ・スタントンと同じ日に生まれたことが密かな自慢。

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