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代表2連戦+片道13時間半の移動はつらい!? 三笘が今季初めて先発落ちした明確な理由

森昌利

8試合で3失点はダントツのリーグ最少

リバプールは好調チェルシーを撃破。堅守を基盤に2-1というスコア以上の強さを見せつけ、首位の座を守った 【写真:ロイター/アフロ】

 翌日は第8節のなかで最高のカードとなったリバプール対チェルシーの試合に出かけた。

 試合直前にマンチェスター・シティが最後の最後の、正真正銘のラストミニッツ・ゴールを奪ってウルバーハンプトンに2-1で勝ち越し、暫定首位に浮上していた。大きな3つのモニターがこの試合を映していたアンフィールドの記者室には、コーナーキックにジョン・ストーンズが頭で合わせてゴールを決めた瞬間、失望のため息が充満した。

 しかしリバプールは勝てば首位奪還。一方のチェルシーは開幕戦でマンチェスター・Cと対戦し、0-2の完敗で今季の幕を開けたが、その後は22歳イングランド代表FWコール・パーマーを中心に若いチームが急激に伸びて、第2節から4勝2分の無敗と立ち直っていた。

 しかも両軍ともに新監督。強豪対決でその真価が問われる試合にもなっていた。

 試合は途中、特に後半に激しい攻防もあり、見どころの多い一戦となった。結果はリバプールが2-1で勝利を収めて、マンチェスター・Cから首位を奪還した。

 この試合でリバプールは2-1というスコア以上の強さと安定を見せたと思う。

 その源にあるのは守備力の向上だ。チェルシーに1点を取られたが、このゴールを含めても第8節を終えて失点3は断トツのリーグ最少。リバプールに次いで少ないのは、堅い守りが売りものであるノッティンガム・フォレストの6である。リーグ2位のマンチェスター・Cの失点は9、3位のアーセナルが8、さらに4位アストン・ヴィラ、5位ブライトン、6位チェルシーは揃って10失点と二桁に達しており、リバプールの3という数字は際立っている。

 チェルシー戦後のアルネ・スロット監督のコメントにも守備に対する自信が如実に表れていた。まさに“知将”というイメージがイングランドで定着しつつある46歳のオランダ人指揮官は、まず上り調子のチェルシー相手のリーグ戦を「今季で一番厳しい試合だった」と振り返った。しかし「チームが1つにまとまった守備が非常に強かった。信じられないようなハードワークだった」と話して、ニコラス・ジャクソンに一瞬の隙をつかれて一度は追いつかれながらも、90分間を通してコンパクトな陣形を保ち、力で押さえつけるように守り切って勝利を手繰り寄せたチームを絶賛した。

 また主将のフィルジル・ファン・ダイクは「センターバックとGKだけで守っていない。チームにしっかり守りの意識が生まれている」と話して、オランダ人監督のトータルフットボールが今季の堅守の裏側に存在することを明かしている。

ジャーナリスト協会会長も「遠藤は厳しいね」と同情

チェルシー戦の遠藤は出場機会なし。ここまでリーグ戦8試合でプレータイムはわずか2分と厳しい立場に置かれている 【Photo by John Powell/Liverpool FC via Getty Images】

 守備力が上がった一方で、確かにユルゲン・クロップ時代のヘビィメタル・フットボールの興奮は去った。この試合はわずか8本のシュートに終わった。シュート数が8本以下だったのは、2021年2月のマンチェスター・C戦以来のことだ。

 また1試合における相手ペナルティエリア内でのパスの平均本数は昨季の39.3本に対し、今季は28.9と10本以上も減少。さらに相手のファイナルサードでボールを奪い返した回数も、クロップ時代の1試合6.1回から4.3回に減っている。

 しかしこれらの数値の差は、激しさを前面に押し出し、意識的にカオスを作り出して決定機を創造した、プレミアリーグのなかでも過激極まりなかったクロップのスタイルとの比較で生じたものである。

 常に攻撃的でチーム全体を押し上げ、いつでもゴールが生まれる予感に沸いたドイツ人闘将のアンフィールドは、クールなオランダ人知将に引き継がれて、高い最終ラインの裏を突かれる恐怖が薄れると、1点をリードすれば勝利を確信できるスタジアムになった。

 次戦はアーセナルとのアウェー戦。試練は続くが、果たしてこの抑制が利いた新しいリバプールが今季のプレミアで最終的にどんな成果を挙げるのか。非常に楽しみになってきた。

 このチェルシー戦で遠藤は出番なし。生え抜きの23歳MFカーティス・ジョーンズが中盤から飛び出して、1-1の同点から勝ち越し点を奪って輝いたことも考えると、残念ながら31歳日本代表主将の存在感がさらに薄れる試合になった。

 スタジアムを去る時に一緒になった英大衆紙『デイリー・ミラー』の主任ライターで、英国フットボール・ジャーナリスト協会会長のジョン・クロスが「遠藤は厳しいね」と同情するように言った。

 その一言が、10月下旬となり、日が暮れると気温がグッと下がるようになった英国で、筆者の体をブルっと震わせた。

(企画・編集/YOJI-GEN)

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著者プロフィール

1962年3月24日福岡県生まれ。1993年に英国人女性と結婚して英国に移住し、1998年からサッカーの取材を開始。2001年、日本代表FW西澤明訓がボルトンに移籍したことを契機にプレミアリーグの取材を始め、2024-25で24シーズン目。サッカーの母国イングランドの「フットボール」の興奮と情熱を在住歴トータル29年の現地感覚で伝える。大のビートルズ・ファンで、1960・70年代の英国ロックにも詳しい。

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