「下手になっているんじゃないか」石川真佑がイタリア2季目で直面した“壁”【インタビュー前編】

田中夕子

2023年からイタリアに渡り、成長を求める日々を送る石川真佑 【平野敬久】

 19歳で日本代表に選出され、東京、パリと二度の五輪出場を果たした。2023年からはイタリアへ渡り、成長を求める日々。試合出場を重ね、攻守において安定した働きを魅せ続けているように思われたが、今季、イタリアでの2シーズン目、石川真佑はこれまでに感じたことがない壁に直面していた。

「全然うまくいかなくて。あー、とか、うー、とか。もやもやすることがすごく多いし、特に最近は気持ちよく打てていないんです」

 ノヴァーラでのレギュラーラウンドを終え、イタリアリーグの準決勝、CEVカップ決勝と結果を見れば昨シーズンを上回るステージで戦っていることに間違いないのだが、本人の中では「しっくりこない」と首を傾げる。

 プレーオフを迎える直前の2月末、イタリアで石川に話を聞いた。

「自分の調子だけで言えば絶不調です」

所属するノヴァーラは昨季は届かなかったプレーオフ進出も果たした 【平野敬久】

――イタリアでの2シーズン目はノヴァーラへ。レギュラーラウンドは4位、昨季は届かなかったプレーオフ進出も果たしているクラブで、着実に階段を上がっているように見えますが石川選手ご自身の手応えは?

 まず、自分の調子だけで言えば絶不調です(笑)。シーズンが始まったばかりの頃はそれなりに調子よくできていたんですけど、今はスパイクが全然しっくりこない。昨シーズンはイタリアに来たばかりで、何がいい、悪いと感じる前に環境に慣れることで精一杯だったからそこまで感じたり、考える余裕がなかったのかもしれないですけど、2シーズン目になって少し余裕も出てきたので、自分も求めるものも高くなった。もっとやらなきゃ、という焦りが常にあります。

――「絶不調」という理由は?

 スパイクもレシーブも昨シーズン以上でありたいと思っているんですけど、むしろ自分では真逆。サーブレシーブもミスが増えたり崩れることが多くて、スパイクも「こんなに打てなかったっけ?」と思うこともすごく多い。ヘタになっているんじゃないか、と思うことがすごく多くて。前は簡単に決められたのに決められない、ディフェンスもこのボールはもっと楽に上げられていたのに上がらない、と思う回数が増えた気がします。うまくいかないから余計にどうしよう、大丈夫かな、と不安が先行するし、迷いながらプレーしている。悪いところばかりを見ずに吹っ切ってプレーをしようと意識していますが、なかなかうまくいかない。今までもいい時ばかりではなかったですけど、ここまでの感覚、気持ちになることはなかったですね。

――壁に当たる、という感じ?

 そうですね。いつもシーズンの最初はうまくいって、そこから煮詰まる時期があるけど、崩れてもすぐ戻るので、あまり気にしていなかったんです。もともと感覚でプレーするタイプなので、そこまでプレーについて考えること自体なかったのかもしれないですけど、今はちょっと、このままじゃダメだな、という思いが一番強いです。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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