力石政法が決意の世界前哨戦、“天才”阿部麗也は再起戦 粒ぞろいの最強挑戦者決定戦【10月のボクシング注目試合②】

船橋真二郎

2階級で無敗同士の“最強挑戦者決定戦”

スーパーライト級の関根幸太朗は渡来美響と注目の無敗ホープ対決 【写真:ボクシング・ビート】

 10月は石井、池側の再戦のほかにも日本王座挑戦者決定戦に注目が集まる。日本王者と“最強挑戦者”が激突するチャンピオンカーニバル出場権をかけ、日本上位ランカーが激突する。

 26日の後楽園ホールはスーパーライト級の無敗ホープ対決。1位の関根幸太朗(ワタナベ/26歳、9勝8KO1分無敗)、2位の渡来美響(三迫/25歳、5勝3KO無敗)の対戦は、粒ぞろいと評判の高い今年のカードの中でも最注目の一戦になる。

 関根は花咲徳栄高、拓殖大、渡来は武相高、東洋大、ともに強豪校でアマチュア経験がある。が、18勝20敗と負け越しの戦績が示す通り、1学年上の関根は全国的な活躍はできなかった。5歳でグローブを握り、ジュニアの全国大会で活躍した渡来は、高校、大学時代はタイトル獲得こそなかったものの、全国大会の常連でトップを争った。

 プロの実績では強打者の関根がやや上回るか。プロ4戦目、6回戦で佐々木尽(八王子中屋)とダウン応酬の末に引き分けた一戦が光る。3戦全KOで全日本新人王MVP獲得は、さすがに4回戦レベルでは力の差があった印象だが、以降もKOの山を築いてきた。ここ2戦、無敗の中国人、フィリピン人を退けた渡来は、昨年に続くラスベガス合宿で腕を磨き、あのフロイド・メイウェザーが目をかける“天才児”カーメル・モートン(米)と手合わせするなど、経験を積んできた。

 パワーの関根、テクニックの渡来という見方は一面的で、関根の豪快なKOの陰にはテクニックがあり、渡来の確かな技巧の中でパワーが生かされている。ハイレベルで、緊張感あふれる戦いが展開されそうだ。中量級の注目対決は「BOXING RAISE」ほかで配信予定となっている。

 31日の後楽園ホールでは、こちらも注目の無敗同士のサウスポー対決。日本スーパーフライ級1位の重里侃太朗(じゅうり・かんたろう、志成/28歳、7勝2KO無敗1分)、同級2位の山口仁也(三迫/24歳、5勝2KO無敗)が雌雄を争う。

 ともにジュニア年代から試合を重ね、重里は興國高、駒澤大、山口は東福岡高、大東文化大でアマチュアキャリアを積んだ。実績では重里が上回る。プロ4戦目で元王者のベテラン・黒田雅之(川崎新田)を下し、名前を上げた。山口はプロ3戦目、アマ時代は一度も勝てなかった中垣龍汰朗(大橋)に競り勝ち、日本ユース王者となっている。

 気が強く、ここまで激闘を勝ち上がってきたのが山口。より試合運びの巧い重里には、度重なるケガや病気で競技続行を断念せざるを得なかった過去があり、リングへの思いには並々ならないものがある。日本タイトル挑戦権をかけた両者の戦いは、最終的に意地のぶつかり合いとなるか。「ABEMA」がライブ配信する。

山内は世界フライ級戦線に食い込めるか

再浮上を期す元王者の山内涼太 【写真:船橋真二郎】

 26日は元WBOアジアパシフィック・フライ級王者で日本同級3位の山内涼太(角海老宝石/29歳、12勝11KO3敗)にも注目したい。一昨年4月、WBO世界フライ級王者時代の中谷潤人に挑んだ世界初挑戦は8回TKO負け。昨年4月の日本フライ級王座決定戦では、永田丈晶(協栄)に判定で競り負けた。

 後がない山内は今年6月、若き1階級上の神崎靖浩(倉敷守安)との日本ランカー対決に気迫の6回TKO勝ち。再起から3連続KO勝ちを飾った。それ以上に再浮上を期して、腹が据わってきた印象が強かった。

 同い年で、経験豊富なオーリー・シルベストレ(比/30歳、18勝10KO9敗2分)との一戦に向けて練習に励む山内の「俺にはド突き合いしかできないんで。しばきます」のシンプルな意気込みにも覚悟がにじむ。熱を帯びる世界フライ級戦線に食い込めるか。勝負の来年に弾みをつけたい。

アメリカ、デンマークで女子バンタム級の世界戦

WBO女子世界スーパーフライ級王者時代の吉田実代 【写真は共同】

 日本時間24日、アメリカ・ニューヨークではIBF女子世界バンタム級王者の吉田実代(日本/36歳、17勝4敗)が挑戦者にシュレッタ・メトカーフ(米/39歳、13勝2KO4敗1分)を迎え、初防衛戦に臨む。

 吉田は昨年12月9日(日本時間12月10日)、アメリカに拠点を移して3戦目で殊勲の王座奪取。WBO女子世界スーパーフライ級王座に続き、2階級制覇を果たした。これが急きょ決まった世界挑戦で、その1ヵ月前に判定で敗れていたのがメトカーフだった。

 リベンジもかかる一戦はマディソン・スクエア・ガーデンのザ・シアターで行われるイベントのメインイベントとなる。

 また当初は8月開催予定だったWBO・WBC女子統一世界バンタム級タイトルマッチ、ぬきてるみ(真正/36歳、15勝10KO5敗)の4度目の世界挑戦は、統一王者のディナ・ソルスランド(デンマーク/30歳、22勝9KO無敗)のケガで延期となった。25日(日本時間26日)、場所は同じデンマークで仕切り直される。

 ぬきは2ヵ月の延期を有効に使い、無敗王者の攻略を果たしたい。奇しくも2日違いで開催される同階級の女子世界戦。男子に続く日本人女子のバンタム級世界3団体制覇はなるか。

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著者プロフィール

1973年生まれ。東京都出身。『ボクシング・ビート』(フィットネススポーツ)、『ボクシング・マガジン』(ベースボールマガジン社=2022年7月休刊)など、ボクシングを取材し、執筆。文藝春秋Number第13回スポーツノンフィクション新人賞最終候補(2005年)。東日本ボクシング協会が選出する月間賞の選考委員も務める。

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