渡邊雄太不在のピンチを救う千葉Jのベンチメンバーたち 田代直希が「地元」で思い、表現していること

大島和人

琉球時代と変わる田代の役割

試合中の田代は「戦う姿勢」が全身からにじみ出ていた 【(C)B.LEAGUE】

 田代は自らの「ファーストゲーム」をこう振り返る。

「千葉ジェッツの一員としてプレーできたことが、まず何より幸せでした。コンディションの調整をしくじりまして、プレシーズンは合流できなかったので、どうしても試合に絡むところは難しかったです。不本意にも渡邊選手が足を怪我してしまったので、チャンスが巡ってきました。そこをどれだけアピールできるかなと考えて、とりあえず持てるものは全て出し切ろうと思っていました」

 田代は琉球のキャプテンも務めた選手だが、千葉Jはそのポジションに富樫がいる。渡邊の存在も当然ながら大きい。さらに西村文男は大ベテランで、乱れた流れを落ち着かせるガードだ。当然ながら田代に求められる役割は琉球時代と違う。

「ジェッツは昨シーズンとメンバーが大きく変わっていませんが、見ているとエナジー全開でプレーする人がいないように感じたので、その役割は僕がやっていこうかなと思いました。僕の持ち味は『持っているものを全部出す』ところです。そこは池内(勇太)GMからも『そこが今のジェッツに欲しいところだから、役割を全うしてくれ」と言われていました』

 結果として田代は若手のような「荒削り」なプレーをしていた。17分41秒で3ファウルは少し多いが、逆にオフェンスで2つのテイクチャージを取っている。守備戦術的には千葉Jのローテーション、スイッチにまだアジャストが必要で、試合後は本人も反省を口にしていた。しかしコート上の活気を生み出すプレーをしていたことは間違いない。

「本来はそういう(リーダーとしてまとめる)役割をやるべきですけど、それ以上に自分のアピールが今日は強かったです。試合を重ねるにつれて『落ち着かせる』ところは出していきたいと思いますが、ジェッツは(西村)文男さんがいるので、少し役割が変わってきます」(田代)

地元に誕生した「夢のアリーナ」

ららアリーナ 東京ベイは今季から千葉Jのホームになる 【(C)B.LEAGUE】

 田代は原修太とともに千葉県船橋市出身の地元育ちで、試合後のヒーローインタビューに彼が登場したときの声援も特大だった。

 千葉Jは今季からホームをLaLa arena TOKYO-BAY(ららアリーナ 東京ベイ)に移している。5日が9708人、6日が9739人という観客数はこれまでのおおよそ2倍で、会場へのアクセス、演出なども大幅にバージョンアップされている。

 田代は新アリーナでプレーする感想をこう口にしていた。

「このようなアリーナでプレーできてまず何より幸せです。こういうアリーナは全国に今できてきていますが、それが僕の生まれ育った土地に誕生したことは、もう本当に奇跡に近いくらいだと思います。なかなかそういう境遇の選手は多くないので1試合1試合、噛み締めながらプレーしたいです」

 千葉Jの底力だけでなく、選手とファンが「夢のアリーナ」を得た喜びも我々に伝わってくる、6日の宇都宮戦だった。

試合後の田代は柔らかい表情が戻っていた 【(C)B.LEAGUE】

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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