新戦力の活躍で昨季王者・広島を撃破 開幕戦で見えた群馬と細川一輝の可能性

大島和人

細川(写真左)はチーム最多の13得点で勝利に貢献した 【写真は共同】

 りそなグループB.LEAGUE 2024‐25シーズン(Bリーグ)の開幕戦が、他の22チームに先立って10月3日(木)に行われた。ホームチームの群馬クレインサンダーズが昨シーズンの王者・広島ドラゴンフライズを82-53で下す衝撃的な展開で、新シーズンは幕を開けている。

 このカードには浅からぬ両チームの縁があった。辻直人(群馬)と山崎稜(広島)は両チームに在籍歴がある。カイル・ミリングヘッドコーチ(HC)に至っては、今年5月のチャンピオンシップ(CS)で広島をB1王者に導き、今シーズンからは群馬の指揮を執っている。

 広島はドウェイン・エバンス、河田チリジの負傷欠場という「ハンデ」があった。とはいえ群馬は指揮官が交代し、さらに先発5名のうち2人が新加入選手で、チーム作りは明らかに途上だ。そのような中で「らしさ」が出る戦いを見せた事実は、彼らのポテンシャルを証明している。

新加入・細川が開幕戦のヒーローに

 厚い選手層は群馬の新たな強みだろう。開幕戦の出場時間を見ると、チーム最長のケーレブ・ターズースキーでさえ26分26秒。82点中37点がベンチメンバーのポイントで、特定の個人に依存していない戦いに成功した。トレイ・ジョーンズはB2時代からのメインハンドラーだが、ボールのシェアが徹底されていて、彼への依存度もいい意味で下がっている。

 攻撃にはまだ行き届かない部分もあり、試合の後半だけで24秒バイオレーションを5度も喫している。しかしそれはボールを全員で動かし、オープンショット、イージーショットを作る狙いゆえの副作用。試合を積み重ねるにつれて、ズレも消えていくだろう。

 開幕戦は新加入選手が及第点のプレーを見せていた。ヨハネス・ティーマンは2023年のワールドカップ(W杯)でドイツの優勝に貢献した万能ビッグマンだが、25分32秒の出場で9得点、7リバウンド、3スティールを記録し、周りとの関係もズレを感じなかった。川崎からの移籍となるポイントガード(PG)藤井祐眞も3ポイント(3P)シュートこそ「6分の1」と不発だったが、得意のディフェンス(DF)やドライブを存分に見せ、7アシストを決めている。

 やはり新加入の細川一輝は、大一番で「決め手」となるプレーを見せた。187センチ・92キロの彼はシューティングガード(SG)の先発として起用され、チーム最多の13得点を記録。辻やトレイ、八村阿蓮との併用となるため出場は14分28秒と短かったが、第3クォーターに決めた3本の3Pシュートは広島を突き放すブーストになった。

 ミリングHCは細川の起用をこう説明する。

「彼は2番(SG)としても、3番(スモールフォワード/SF)としてもすごくいい選手だと思います。プレシーズンでも彼の(戦術)遂行力はすごく良かったと評価しているので、今日はスタートで起用しました」

 キャプテン辻は試合をこう振り返る。

「開幕戦でお互いに硬さも見られましたし、なかなかシュートが入らなかったりもしました。だけど後半は自分たちのバスケットが出ました。細川選手が流れを作ってくれて、そこからDFもずっと良くなったと思います」

チームメイトの力でシュートが打ちやすく

山崎稜(左)は群馬のブースターからも大きな拍手で迎えられていた 【写真は共同】

 細川は3PシュートとDFを強みとする典型的な「3&D」タイプ。過去2シーズンは三遠ネオフェニックスで30%台後半の3Pシュート成功率を記録し、なおかつアスリート性を活かした守備も高く評価されていた。

 Bリーグで似たタイプを探すなら原修太(千葉ジェッツ)、遠藤祐亮(宇都宮ブレックス)あたりになる。自分でボールを運ぶことはあまりないが、相手がトレイや藤井のドライブに寄って「収縮した」スペースを活かし、オープンショットを放つ役割を任されている。逆の見方をすれば、シュート確率の高い彼が外にいると相手DFはインサイドに寄りにくい。

 彼は自らのマインドについてこう述べる。

「自分はシューターとして出ていて『外しても打ち続ける』というところでやっています。チームメイトも決めようが外そうが、どんどん打てと言ってくれます。群馬は良いスクリーンもかけてくれてやりやすいし、プレーの幅も少しずつ広がっていくのかなと感じています」

 チームメイトの貢献には、こう感謝する。

「本当にスクリーナー、パスのタイミングで、ズレを作りやすいという兆候があります。ハンドラーはみんなドライブができるので、相手はそちらを警戒している。その隙にちょっとしたスペースでフリーになれています」

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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