町田に立ちはだかる新国立のJ1優勝ジンクス 2度PKで地獄を見た男が挑む東京決戦

大島和人

「黒田監督やスタッフの考えがしっかりと選手に落とし込まれていることが町田の強さにつながっている 【(c) FCMZ】

 FC東京との新国立決戦は「東京対決」でもある。FC東京の選手、サポーターが町田に対するライバル心を持っているかは分からないが、少なくとも町田にとってはJ1の先輩であり特別な相手。仙頭は小学生時代に観客としてダービーマッチの熱を経験していて、その重みをよく理解している。

 小学生時代の仙頭はガンバ門真でプレーしていて、大阪府枚方市から万博記念陸上競技場まで日常的に通う「青黒派」だった。1994年12月生まれの仙頭が小学5年だった2005年に、ガンバ大阪はJ1初優勝を飾っている。西野朗監督が率いる、魅力的なチームだった。

「ガンバとセレッソの試合はよく見に行っていました。会場の雰囲気が違うし、周りのお客さんもすごく熱くて『ダービーって特別なもんなんや』と身体で感じた部分があります。『マウントが取れる』じゃないですけど、応援してくれる人たちも、応援している側のチームが勝ったらすごく気持ち良く帰れますよね。僕もそうでした」

 PK戦がないリーグ戦ならば、仙頭も思い切ってプレーができるだろう。FC東京との大一番に向けた抱負はこうだった。

ダービーでの勝利が特別と知っているからこそ、東京の両チームからシーズンダブルを達成したい 【(c) FCMZ】

「東京にあるクラブ同士の戦いという特別感がありますし、監督も言っているように東京のチームである以上、そこで自分たちが一番ではないといけないという自負もあります。当然ながらサポーターの思いもあるはずです。同じ東京で、この町田を応援してくれている以上、自分たちは東京で一番のクラブだと結果で証明していきたいです」

 町田の選手たちに不足しているものは「経験」「成功体験」かもしれない。プロ8シーズン目となる彼にとっても、終盤戦の首位争いは初めての経験だ。

 ともかく今の町田には、Jリーグの歴史を変えるチャンスが残っている。新国立初勝利、ACL出場、J1制覇といった壁は明らかに高いし、誰かが引き上げてくれるものでもない。壁から振り落とされるリスクは当然ある。

「サポーターの想いと共に、ACL出場権や優勝を勝ち取るために新国立での勝利が必須 【(c) FCMZ】

 いずれにせよ選手たちが力を振り絞り、立ち向かい、最後は自力で乗り越えなければいけない――。そうやって「成功体験」を得ることで、チームは次のステージに進み、サッカー界の歴史も変わる。町田と仙頭にとって、新国立で開催する11月9日のFC東京戦はそんな大一番だ。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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