“6バック”をしっかり攻略も、笑顔なし ロス五輪世代の日本代表に見える新時代の視座

川端暁彦

キルギスの首都ビシュケクにて

スタジアムに近いキルギスのカフェ 【撮影:川端暁彦】

 キルギスの首都ビシュケクの街を歩いてみる機会もあった。あまり日本ではなじみのない国だが、最近だと人材交流の話題などでニュースに登場することも出てきた。

 その中で漠然とした情報で「あぶない国」であるかのように認識されていた方もいるようで、「キルギスにいる」と伝えると、大変に心配されたりもした。「犯罪率が日本に比べて何倍で~」みたいな話も聞かされた。だが、日本のように全国が均質的になっている国であれば「国の平均」はデータとして有用なのだろうが、多くの国は地方ごと、都市ごとの差が激しいものだ。

 少なくともこのビシュケクに「あぶない」印象はない。日本に比べると運転は荒っぽいが、夜になっても子どもや女性が1人で外出しているし、歩きスマホをしている人も珍しくない。治安という意味では、かなり高いレベルで維持されていることが明らかだ。

 立地の良さから行きつけになった市内のカフェで昨日、見知らぬキルギス人の女性から「iPhoneの充電器をちょっと貸してくれ」と言われて貸すなんていう一幕もあり、「これは何か裏があるのか?」と勘ぐってしまったが、本当に充電だけで話が終わった。

 いわゆる「あぶない街」でこういうやり取りがナチュラルに出てくることはあり得ない。人々は総じて気さくで親切で、ホテルの出口でまさかの大雨に呆然としていたら、傘を貸してもらえたなんてこともあった。

【撮影:川端暁彦】

 ちなみに、こちらはカフェで食べた鶏肉のトマト煮込みとご飯のプレート。抜群にバランスの取れた味わいだった。

【撮影:川端暁彦】

 中央アジアの人はチーズのような乳製品もトマトも大好きなので、イタリア料理とも相性がいいのだろう。ピザも抜群にうまい。

【撮影:川端暁彦】

 そして、本当に日本人の舌にアジャストしてくるのがキルギスの料理。こちらは鶏ガラスープの麺料理だが、また優しい味わいで抜群にうまかった。

 そんなわけで、オフ・ザ・ピッチに関して特に不満のないキルギスの日々なので、最後にその代表チームを相手に最高の試合を観ておきたいところである。

 素朴に優しく料理の上手なキルギス人たちは、フットボールとなれば剽悍(ひょうかん)な戦士に変わる。連勝同士で迎える9月29日の最終戦、ロス五輪を目指す新世代のポテンシャルの高さを感じられる、そんな熱い試合を観てみたい。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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