独立Lのドラフト候補投手たち 海外で活躍する選手も続々「環境に適応するマインド」を持つのは?

金沢慧

リーグを牽引する松江優作(火の国S)、香水晴貴(石川MS)の評価は?

【公式記録等から筆者作成】

 上の表ではIPBLに所属するヤマエグループ九州アジアリーグ(KAL)、北海道フロンティアリーグ(HFL)、日本海リーグ(NLB)の注目投手を挙げた。

 火の国サラマンダーズ(火の国S)で4年目を迎えた左腕・松江優作は6月の佐賀インドネシアドリームズ(佐賀ID)戦で完全試合を達成。球速も自己最速の147キロをマークするなど、着実にレベルアップしている。9月16日終了時点ではリーグの防御率1位で、名実ともにKALを代表する左腕となっている。

 日本海リーグ(NLB)では優勝した石川ミリオンスターズ(石川MS)の右腕・香水晴貴の安定感が光る。防御率、奪三振、勝利数がすべてリーグトップで、今年のNLBを代表する投手だ。

 松江や香水のような150キロ台の速球がなく、かつ20代中盤、ただし独立リーグの中での完成度は高いというタイプの投手はこれまで敬遠される傾向にあったが、果たして今年はどうか。

「高身長」「若さ」によるポテンシャルを評価される投手は誰か?

 昨年のドラフト候補紹介コラムでは過去の独立リーグの指名傾向を示したが、「高身長」「若さ」は基礎体力、スキルの伸びしろが大きい選手という意味で指名の重要な要素となっていた。結果的に2023年も谷口朝陽(当時は徳島IS)のようなほとんどリーグでの実績がない選手が西武から指名されており、今年もそのような「ポテンシャル」を評価した指名は変わらずあるだろう。

【公式記録等から筆者作成】

 上の表は「高身長」「若さ」の観点でピックアップした投手リストだ。まず長身投手としては、平均球速でもランクインしていた愛媛MPの廣澤優が挙げられる。日大三時代から注目されていた投手だが、JFE東日本時代は出場機会を得ることができず、今年から独立リーグの門を叩いた。リーグでも前期は先発、後期はリリーフで登板実績を積んでおり、防御率5位と結果もついてきている。すでに高卒5年目のシーズンを迎えており年齢的に若くはないが、さらなるポテンシャルを評価している球団もあるだろう。

 昨年は修徳でドラフト候補に名前が上がっていた徳島ISの篠崎国忠も「若さ」「高身長」というポテンシャルは魅力的。まだ公式戦では3イニングだけの登板であり、スカウトにアピールする場を得たいところだ。

 「高身長」ではないが「若さ」がアドバンテージとなり候補となりそうなのは髙橋快秀(徳島IS)と黒野颯太(石川MS)だ。

 特に黒野は高卒新人ながらNLBで最も多い68回を投げており、1つ上のレベルで年間通して投げられる体力、スキル面はスカウトに披露できている。石川MSは27日から栃木県小山市で始まるGCSの初戦でIBLJ代表と戦うことが決まっており、普段のリーグ戦では富山GRNサンダーバーズ(富山SB)との試合のみだった黒野にとってトーナメント戦で未知のチームを相手にした時の調整力、マインドをアピールする大きなチャンスとなるだろう。

一発勝負のGCSで何を見せられるか?

 昨年のGCS初戦では当時富山SBの大谷龍輝(ロッテ)と徳島ISの椎葉剛が投げ合う場面があり、結果的に両投手ともドラフト2位で指名された。いつものリーグ戦とは違う一発勝負のGCSへの取り組み方は、スカウトがいままで積み重ねてきた評価とはまた違う観点での加点要素となり得る。

 また、指名の当落線上ギリギリのところにいる選手にとってGCSは最終テストの場になるだろう。基礎体力やスキルが同じくらいの投手を比較したときに、球団はより環境変化に強い、成長意欲のあるタフな投手を選ぶはずだ。

 9/17終了時点でGCSにはNLBの石川MS、KALの北九州下関フェニックス(北九州下関F)、BCLの信濃GSと開催地枠で栃木ゴールデンブレーブス(栃木GB)が出場を決めており、IBLJは徳島ISと愛媛MP、HFLは石狩レッドフェニックス(石狩RF)と美唄ブラックダイヤモンズ(美唄BD)によるプレーオフの勝者が進出する。独立リーグ日本一決定戦を経て指名を勝ち取る投手が出てくるのか。ドラフト会議をより深く見るためにも小山での戦いをチェックしておきたい。

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著者プロフィール

1984年生まれ、福島県出身。学習院大学在学中の2005年夏の甲子園で阪神園芸での整備員アルバイトを経験するなど、基本的には高校野球マニア。 筑波大学大学院体育研究科を修了後、2009年にデータスタジアム株式会社に入社し野球のアナリストとして活動を始めた。NHK-BSで放送されている「球辞苑」には2015年から出演している。2018年からは本所属を株式会社リクルートテクノロジーズ(現・株式会社リクルート)のデータ利活用の部署に移し、主にHRメディアでのデータ分析環境の整備や機械学習を用いたアプリケーション開発のPMOとして従事した。 2022年10月に独立し、現在は四国アイランドリーグplusのアナリティクスディレクターなどプロスポーツリーグ等でのHR領域のデータ活用推進を行っている。また、スポーツアナリティクスジャパン(SAJ)2022ではプロジェクトマネージャーを担うなど、スポーツをきっかけとした文化交流のカンファレンスやイベントの企画、運営にも携わっている。

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