“開心那スタイル”で2大会連続銀メダル 荒畑潤一が語るスケボー女子パークの本質

田中凌平

スケートボード女子パークでは、15歳の開心那が2大会連続となる銀メダルを獲得した 【写真は共同】

 8月6日(日本時間7日)にパリ五輪のスケートボード女子パークが行われ、開心那(WHYDAH GROUP)、草木ひなの(スターツ)、四十住さくら(第一生命保険)の3選手が出場。決勝に進出した開が92.63で準優勝を果たし、草木はフルメイクができず69.76で8位だった。東京五輪で金メダルに輝き、連覇をかけて臨んだ四十住さくら(第一生命保険)は、予選10位でまさかの決勝進出を逃した。

 予選1位通過の開は、決勝の1本目から91.98の高得点を叩き出す。しかし、アリサ・トルー(オーストラリア)やスカイ・ブラウン(英国)ら海外勢も続々と高得点を連発し、メダル争いは混沌を極めた。3位で迎えた3本目、開は1本目を上回る92.63の滑りを披露し、東京五輪に続く2大会連続の銀メダルに輝いた。

 3年前の東京五輪よりも格段に競技レベルが上がったスケートボード女子パーク。今後のメダル争いはさらに熾烈を極めることが予想されるだけに、日本のスケーターたちはパフォーマンス向上のために何を意識すべきなのだろうか。18歳で全日本チャンピオン(AJSA)を獲得し、日本スケートボードシーンを牽引してきたパイオニアの荒畑潤一さんに日本勢3選手の滑りと、スケーターとして大切にすべき本質について語ってもらった。

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“唯一無二のスタイル”が光った開の滑り

“開心那スタイル”を貫いたスケーティングは、荒畑さんも「かっこよかった」と太鼓判を押す 【写真は共同】

 開選手の滑りはすごく良かったと思います。まったく失速しませんでしたし、きれいでかっこいいスケーティングでした。トリックは玄人好みのものも入れていれば、フロントサイドグラブなど派手なフリップも入れているので、構成も素晴らしかったです。個人的な意見になりますが、私の中では「開選手の滑りが金メダル」でした。

 開選手の滑りはスタイリッシュでかっこよく、スケーターの本質をもっとも体現していると感じます。開選手にしかできない攻め方をして、他の選手と違う滑りをするところが、さらにかっこいいと感じさせる点ですよね。まさに開選手の“唯一無二のスタイル”が確立されています。

 予選から安心して見ていられましたし、ふんわりと板に乗っているのではなく、足が板にピタッとついてコントロールできている印象を受けました。スタイルが選手によって異なるので一概には言えないのですが、1位のトルー選手との差を強いて挙げるのであれば、エアーのバリエーションかなと思います。しかし、開選手はエアーで勝負をするスタイルではないので、レールのバリエーションの難易度を上げたり、フリップでかける削り系のトリックを増やしたりすることが、今後の得点アップにつながるはずです。

 開選手はきれいにメイク(トリック成功)していましたし、エアーもしっかりと飛び切っていました。難易度の高い1個1個のトリックをしっかりとまとめたところはさすがです。12歳で迎えた3年前の東京五輪から身長も20センチほど伸びて、どんどんかっこよさが増しています。まだ15歳ですし、今後のさらなる成長に期待です。

ハイレベルな中にも温かさを感じた空気感

決勝で8位に終わった草木だが、「勝つなら金メダル」の姿勢で果敢に高難易度の技に挑戦した 【写真は共同】

 草木選手は8位という結果でしたが、ものすごく“攻めた滑り”をして自分らしさを表現していました。五輪のような最高峰の舞台では、置きにいって勝てる試合ではないので、「勝つなら金メダル」という気持ちがひしひしと伝わってくるほどでしたね。

 決勝ではいきなりドラ・バレラ選手(ブラジル)が85.06を出しましたし、最終的にメダルを獲得するには92.31を上回る高得点を出さなければなりませんでした。強敵ぞろいの試合で草木選手がメダルを獲得するには、ベストを出すしかないので全力で滑っていましたね。予選の滑りにサランラップ360とキックフリップ・インディーを加えられれば、十分にメダルは狙える得点でした。

予選敗退となった前回王者の四十住は決勝進出を逃したものの、自身のスケーティングを貫いた 【写真は共同】

 四十住選手は予選の1本目で79.70を出したので「決勝は行けるかな」と思ったのですが、想像以上に他の選手のレベルが上がっていて、残念ながら決勝には進出できませんでした。2本目と3本目で最初よりもアップグレードした滑りができれば決勝に行けたと思うと、より悔しさが増しますね。

 予選後のインタビューでも80点台を出せなかった悔しさに涙を浮かべている様子でした。その中で私が感動したのは、「決勝には行きたいけれど、他の選手がミスするのを願いたくはない」と発言していたことです。とても四十住選手らしさが出ていて素晴らしいなと感じました。各選手がいい滑りをしたらお互いに讃え合う姿も印象的でしたし、それがスケートボードの良いところです。特に女子のパークは、会場全体がスケーターへのリスペクトに溢れた温かい雰囲気でしたよね。

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著者プロフィール

東京都出身。フリーライター。ラグジュアリーブランドでの5年間の接客経験と英語力を活かし、数多くの著名人や海外アスリートに取材を行う。野球とゴルフを中心にスポーツ領域を幅広く対応。明治大学在学中にはプロゴルフトーナメントの運営に携わり、海外の有名選手もサポートしてきた。野球では国内のみならず、MLBの注目選手を観るために現地へ赴くことも。大学の短期留学中に教授からの指示を守らず、ヤンキー・スタジアムにイチローを観に行って怒られたのはいい思い出。

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