坪井慶介が指名するサッカー男子メダル獲得のキーマン「彼がいるかぎり日本の守備が崩れることは──」

吉田治良

スペイン戦のカギを握る中盤の攻防

東京五輪の準決勝で敗れたスペインにリベンジを果たし、悲願のメダル獲得へ──。絶好調の守護神・小久保がいるかぎり、日本の守備が崩れる心配はないか 【写真は共同】

 さて、準々決勝の相手はスペインになりました。エジプトとの対戦を予想していたので少しあてが外れましたが、エジプトもなかなかいやらしいチームですし、決勝トーナメントになれば、どこと当たっても同じです。1つひとつ勝ち上がっていくしかありません。

 オリンピック予選を兼ねた、昨年のU-21欧州選手権を制したスペインが強いのは間違いないでしょう。丁寧にボールを繋いで、再現性の高い攻撃を仕掛けてくるはずです。ワイドアタッカーがカットインして、インサイドハーフと連動しながらフィニッシュに持ち込む形は、分かっていても止めるのが難しい。

 ただそこは、今の日本の守備組織なら対応できるんじゃないかと期待しています。むしろ怖いのは、スペインらしいパスワークよりも、日本が攻め込んだ後のカウンター。イスラエル戦でも不用意な横パスをカットされてカウンターを浴びたシーンがありましたが、ここからは1つのミスが致命傷になります。より集中力を高く保って、カウンターへの警戒を怠らないでほしいですね。

 スペイン戦のキープレーヤーには、中盤の藤田選手と山本選手を挙げておきます。おそらくスペインがボールを握る展開になるはずで、大岩さんも極端に守備的に戦うことはないと思いますが、現実的には相手に持たれることを想定して試合に臨むのではないでしょうか。特にA代表クラスのアレックス・バエナ(ビジャレアル)、フェルミン・ロペス(バルセロナ)、パブロ・バリオス(アトレティコ・マドリー)の3人で構成する中盤に、どこまで制限をかけられるかがポイントになるでしょうね。

 相手がアンカーを置く3センターハーフか、ダブルボランチなのかを見極め、そこに藤田、山本の両選手がどうプレッシャーをかけていくか。この中盤の攻防が、勝敗を左右するカギになりそうです。ただ、スペインはセンターバックのパウ・クバルシ(バルセロナ)やエリック・ガルシア(ジローナ)など、最終ラインからも決定的なフィードが出てきますからね。前線の選手がプレスをかけて、そのパスの出口に蓋をすることも必要でしょう。

 日本が1次リーグ最終戦のイスラエル戦でターンオーバーを採用したのと同じく、スペインもエジプトとの第3戦でかなりメンバーを入れ替えていましたね。ともに良い状態でぶつかることになるので、ガチンコの好勝負が見られるはずです。

 それでも、エジプトに負けてグループ2位で準々決勝に臨むスペインより、きっちりイスラエルにも勝って、3連勝で1次リーグを突破した日本のほうが勢いはあります。なにより、エースの細谷(真大)選手に、待望の今大会初ゴールが生まれたのは大きかった。主力に休養を与えられたことに加え、イスラエル戦にもう1つの大きな価値を生み出しましたね。

 今後を見通すと、優勝候補のフランス、アルゼンチンも反対側の山に入りましたし、スペイン戦をクリアすれば、いよいよメダルが見えてきます。その可能性を数字で言うのは難しいですが、手が届くところまで近づいているのは間違いありません。

 僕は、それを現実にするキーマンは、小久保選手だと思っています。マリ戦もイスラエル戦もそうでしたが、ポジショニングが抜群で、特にファーサイドへのシュートに対する反応が素晴らしい。もはやこの絶対的守護神がいるかぎり、相手がどこだろうと日本の守備が崩れることはないような気がしているんです。

(企画・編集/YOJI-GEN)

坪井慶介(つぼい・けいすけ)

1979年9月16日生まれ、東京都出身。四日市中央工から福岡大を経て、2002年に浦和レッズに入団。1年目からJリーグ新人王に輝く活躍を見せると、その後も長くCBのレギュラーとしてチームを支え、J1リーグ優勝(06年)やACL制覇(07年)など数多くのタイトル獲得に貢献した。日本代表として、06年のドイツ・ワールドカップにも出場(通算40試合・0得点)。湘南ベルマーレ、レノファ山口を経て、19年シーズンを最後に現役引退。現在はサッカー解説者、タレントとして活躍中。

2/2ページ

著者プロフィール

1967年、京都府生まれ。法政大学を卒業後、ファッション誌の編集者を経て、『サッカーダイジェスト』編集部へ。その後、94年創刊の『ワールドサッカーダイジェスト』の立ち上げメンバーとなり、2000年から約10年にわたって同誌の編集長を務める。『サッカーダイジェスト』、NBA専門誌『ダンクシュート』の編集長などを歴任し、17年に独立。現在はサッカーを中心にスポーツライター/編集者として活動中だ。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント