池江璃花子は戦い続けるーー 100mバタフライ準決勝で敗退した彼女が「次」に向けて語ったこと

大島和人

4年後の「リベンジ」を口に

悔しさとともに「4年後」への意欲を口にしていた 【写真は共同】

 しかし、そんな悔しさを「次」のエネルギーにしようとしている様子も見て取れた。

「来年で代表入って10年になるので、ここであまり気持ちが折れている姿をみんなに見せているべきではないと思います。まだ(競泳の)初日が始まったばかりで、自分ができることはもうないですけど、チームのサポートだったりをしたい。リレーはまだ残っていますけど、多分バタフライは泳げないと思います。100のバタフライは平井選手にすべて託します」

 練習のタイムは上がっていたのだという。彼女は「本番で練習の成果が出ない」ことに、もどかしさを感じている様子だった。

「一番は気持ちだと思っていて、やはり100mバタフライに対する恐怖心が、ここまで練習をしてもまだ拭えなかったのが事実です。自分の練習、これまでのタイムを考えたら、55秒くらいはいつか出るかなという期待みたいなのもあったのですが、結局そのような目標にも届きませんでした。でもまた4年後リベンジをしに、ここに戻ってこようという気持ちにはなりました」

次の目標に向けて

池江にはまだまだ意欲も可能性もある 【写真は共同】

 2021年の東京大会当時に比べれば身体のコンディションが戻っていた様子だし、直近は自分を追い込む練習も積めていた。そんな感覚と現実のギャップを、受け入れられない様子が見て取れた。

 もっとも、2016年とは「周り」が変わったという側面もある。

「最近は『悔しいです』ばかりで、勝てないレースも前よりは増えています。もちろん周りのレベルが上がっているのもそうですけど、自分が成長してないことでもあると思います。今すぐは気持ちの整理も必要なのであれですけど、次のオリンピックに向けて、自分の目標をしっかり立てて、それをクリアできるように。もっと高い目標を立てられるように、もっと努力をしていかなければいけないなと思います」

 彼女はそんな言葉でインタビューを終えた。24歳の池江はまだ成長への渇望を失っていない。パリ五輪はもがいた状態のまま個人種目のレースを終えたが、葛藤の先にどこかで答えが見つかるかもしれない。今はまず心身の疲れを取り、リフレッシュすることが先決だろう。しかし平泳ぎの鈴木聡美のように、30歳を過ぎて「成長期」を迎えた女性スイマーもいる。

 2028年のロサンゼルス五輪が、10代の後半で悲運に見舞われた池江に、今度は幸運の女神が微笑む舞台となることを願いたい。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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