【週刊ドラフトレポート#15】この夏の最注目右腕!福岡大大濠・柴田獅子 大砲候補の桐朋・森井翔太郎は日米スカウトが熱視線
「日米14球団のスカウトが集結!進学校に出現した大砲候補」
圧巻のバッティングで日米のスカウト陣から注目を集める桐朋・森井 【写真提供:西尾典文】
【将来像】福留孝介(元中日など)
パワーに加えて柔らかさもあり確実性と長打力を備えた打者になれる素材
【指名オススメ球団】中日
石川昂弥より下の年代にスケールの大きい強打者タイプが不在
【現時点のドラフト評価】★★★★☆
1位指名の可能性あり
東京都国立市にある桐朋高校。都内でも屈指の進学校として知られており、政財界にも多く人材を輩出しているが、野球部は上位に進出することは稀で、これまでプロ野球に進んだOBもいない。そんなチームで今年高い注目を集めているのが森井だ。小学校時代は西武ライオンズジュニアにも選ばれた経歴を持ち、強豪校へ進学するという選択肢もあったそうだが、小学校から入学していた桐朋に内部進学する道を選んでいる。
その評判を初めて聞いたのは昨年春のことだった。桐朋に投手としては140キロ以上のボールを投げ、打っても長打を連発する大型の選手がいるという。気になって担当スカウトに聞いたところ「野手として見ていますが、来年が楽しみというレベルではないです」と話しており俄然興味が沸いた。ちなみに2年夏は東海大菅生に敗れたものの、昨年楽天から3位で指名を受けた日當直喜からヒットも放っている。
ようやく現場でプレーを見ることができたのは昨年9月3日に行われた秋季東京都大会のブロック予選、対新宿高校戦だった。この試合で森井は3番ショートで出場。夏まではサードを守っていたこともあって、守備に関してはシートノックを見てもまだ動きが慣れていない印象を受けたが、スローイングに関しては高校生の中に1人だけ大人が混ざっていると感じるほどの強いボールを投げていた。ただ肩が強いだけでなくスナップスローも上手く、短い距離でも長い距離でも速く正確に投げられるのは大きな持ち味である。
そして圧巻だったのがバッティングだ。第1打席でいきなりセンターオーバーのツーベースを放つと、第2打席ではセンターフライに倒れたもののその滞空時間は6.38秒を記録。高校生の外野フライで6秒を超えることはなかなかあるものではなく、それだけヘッドスピードとインパクトが強い証拠と言えるだろう。続く2打席は死球とセカンドゴロだったが、最終打席でもセンターのフェンスに直撃するヒット(前の走者が詰まっていたためシングルヒット)を放って見せた。相手からのマークも厳しく、なかなか甘いボールは来なかったが、それでもしっかりボールを見極めてあわやホームランという当たりを2本放ったのは見事という他ない。試合会場は桐朋のグラウンドということもあって、夏に引退した3年生も応援に駆け付けていたが、「練習試合では毎試合のようにホームランを打っています」と話していた。
森井のバッティングについてもう一つ強く印象に残っていることがある。それは3月に森井の親族から送られてきた練習試合の映像だ。相手は県外の強豪校ということだったが、低めのボールをとらえた打球はあっという間にライトフェンスを越え、打った森井はいわゆる“確信歩き”のようにゆっくりと走り出してダイヤモンドを一周していたのだ。ちょうどこの頃、甲子園では選抜高校野球が行われており、今年から導入された低反発の新基準バットの影響でホームランや長打が激減していることが話題となっていたが、森井の打球はそんな影響を全く感じさせないものだった。選抜では以前このコラムで取り上げたモイセエフ・ニキータ(豊川)と正林輝大(神村学園)がホームランを放っているが、この2人と比べてもスイングの迫力は上回っているように見えた。
春以降、森井の周囲は日を追って騒がしくなり、7月7日に行われた西東京大会初戦には日米14球団、42人ものスカウトが視察に訪れている。試合は富士森を相手にコールド負けとなり、森井自身もノーヒットに終わるなど満足のいく高校野球の終わり方ではなかったものの、「高校生野手ではトップクラスの評価」というスカウトのコメントも聞かれており、その高い評価は揺るがないものとなっている。
進路についてはNPBとアメリカの大学で迷っているとのことで、昨年の佐々木麟太郎(花巻東→スタンフォード大)のように渡米を選ぶことも十分に考えられるが、プロ志望届を提出となれば一気にドラフト戦線を賑わせる存在となることは間違いない。ドラフト会議まで残り3カ月。果たして森井はどんな決断を下すのだろうか。