井端弘和氏が久々登場!侍ジャパン、プロ・アマ野球の今を語る「帰ってきた!井端・西尾のドラフト対談 番外編」

Timely!編集部

社会人野球ならではのスカウティングと育成

NTT東日本のコーチ時代に井端監督が指導をした日本ハムの上川畑大悟選手 【写真は共同】

西尾 NTT東日本ではコーチをされながらスカウティングもされていましたが、初めて社会人野球の現場を経験してみていかがでしたか?

井端 プロ野球はリーグ戦で143試合やって優勝を決めますけど、都市対抗野球は会社を背負って負けられない試合を戦うわけですよね。そういう部分ではWBCやオリンピックとほぼ変わらない気持ちかそれ以上という感覚を受けました。それくらい都市対抗野球に懸けているというか、そこが全てと思ってやっているところにいられたのは、自分の中で良い経験をさせてもらったと思っています。

西尾 選手をスカウティングするうえで重視していたことはありますか?

井端 良い選手を見つけるのは簡単なんですよ。でもそういう選手は大体プロや大学に行ってしまいますから、その辺の選別が難しいですよね。本人がプロに行きたいと思っているところに社会人野球のスカウトとして声をかけてしまうと「オレはプロに行けるレベルじゃないのか」と思われてしまいますし、そういう難しさがありました。だから(最上級生になる前、プロが目をつける前に)早め早めに声をかけていました。その選手がその後プロ注目選手になってしまったら仕方がないと思いながら。プロから声はかからないけど社会人にきてもう一つレベルを上げればプロに行ける選手を獲りたいなと思っていました。

西尾 NTT東日本でコーチをやり出したあたりから、大卒だけでなく高卒の選手も獲り始めましたよね。

井端 そうですね。今は4人高卒の選手がいて、毎年1人くらいずつ高卒の選手も入ってきているんですけど、でも初めは高卒の選手をどう指導するか、首脳陣は難しそうにしていましたよ。怪我をさせてもいけないし、逆に体作りといっても本人は面白くないだろうし。どのくらいのバランスでやっていいのかが、最初の子には難しかったのかなと思いますけどね。

西尾 今年は広陵高校から池本真人選手が入社しましたけど、一緒に見ていてたセンバツの時のワンプレーを見て印象に残ったんですよね。

井端 広陵のショートの子(小林隼翔/立教大)を観ていたんですけど、良い選手だったので「これはまぁ大学に行っちゃうよな」と思いながら観ていて。試合も1点差だったと思うんですけど、9回に守備固めで池本選手が出てきたんです。プロも注目する小林選手を外野にまわしてまで守備固めで入ってくるということは「上手いのかな?」と注目していたら、1アウト2塁でショートにゴロが飛んで、なぜかドキっとしたんです。この場面で出てきて初めての打球処理、バウンドも合ってないってすぐに分かったんです。「かわいそうに……」くらいの感じで観ていたんです。でも合っていなかったんですけどグラブを地面につけて我慢したんですよね。それで捕ったんですけど、バウンドが合っていないときのスローイングってちょっと慌ててしまうんですけど、落ち着いて柔らかいスナップスローをしたんです。「すごいな」と思ったのと「何も考えていなかったのかな」というのと、どっちなんだろうと気になって、そのワンプレーを自分の中でずっと考えていました。知り合いの記者に試合後にそのことを聞いてほしいとお願いして、それで彼の答えを聞いて、じゃあもう一回じっくりプレーを観に行こうかなと思ったんです。

西尾 実際に広陵にも観に行かれたんですよね。

井端 ずっと練習を見させてもらったんですけど、高校生の中では(ショートの守備は)群を抜いていると思いますし、何よりもあの体(180cm)の大きさで(守備の)柔らかを出せるというところが彼の一番の魅力かなと思いました。一緒に観に行った会社の人も「獲得OK」を出してくれて、それですぐに動いてもらって獲ったんです。レギュラーではないですけど1年目の春先から大会に出たり、練習試合でも使ってもらえているので順調にきているようです。まだ線は細いですけど徐々に体の厚みも出てきてますし、何年後かには守備なら楽しみだなと思います。

西尾 井端さんがコーチをしているときにプロ入りしたのが、井端さんと同じショートの上川畑大悟選手(日本ハム)でした。僕も大学時代から見ていましたけど正直あんまりプロに行く選手という感じがしなかったのですが、井端さんはやっぱり守備を買われていたんですか?

井端 守備はやっぱり上手かったですよ。ちょっと雑なところはあったので、そこの雑さは取らないといけないと思ったのと、体型もポッチャリしていたところがあったので、そこも余計なものを削ぎ落とさないといけないかなというのはありましたけど。

西尾 最初のうちは体力も課題だったと仰っていましたね。

井端 練習、トレーニングをしていってちょっとずつ体力はついてきましたけど、本来は2年でプロに行かせたかったというか行ってほしかったのですがもう1年かかってしまいました。せっかくいいものはあるのでね、日本ハムでももうちょっと頑張って欲しいと思いますね。

西尾 これから都市対抗も本戦があって社会人野球が盛り上がる時期になりますね。

井端 そうですね。都市対抗は予選も含めて観に行って欲しいなと思います。高校野球も熱いですけど大人の本気を観てもらいたいですね。

3/4ページ

著者プロフィール

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント