20歳の新鋭、パリ五輪バスケ代表入りなるか? ジェイコブス晶の可能性と課題

大島和人

ジェイコブス晶(左)にとって6月23日のオーストラリア戦は代表2試合目だった 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 世界の「ベスト8」を目指すチャレンジが、1カ月後に迫っている。バスケットボール男子日本代表のパリオリンピック・グループリーグ初戦は7月27日のドイツ戦。昨年のワールドカップ(W杯)の世界一チームと、いきなり対峙することになる。

 日本は2023年のW杯を3勝2敗で終え、「アジア最上位」に入った。この結果により1976年のミュンヘン大会以来48年ぶりとなる自力の五輪出場を決めた。

W杯組も既に選考漏れ

 五輪本大会のエントリー(登録)は12名。トム・ホーバスヘッドコーチ(HC)は過去の取材で「メインが8人くらいいて、他の4人のポジションをすごく探している」と明かしている。「メインの8名」は明言されているわけではないが、おそらくこの顔ぶれだ。

ジョシュ・ホーキンソン(サンロッカーズ渋谷)
八村塁(ロサンゼルス・レイカーズ)
渡邊雄太(フェニックス・サンズ)
馬場雄大(長崎ヴェルカ)
富永啓生(ネブラスカ大)
比江島慎(宇都宮ブレックス)
富樫勇樹(千葉ジェッツ)
河村勇輝(横浜ビー・コルセアーズ)
※カッコ内の所属は2023-24シーズンのもの

 特にホーキンソン、八村、渡邊の3ビッグは「メイン中のメイン」で、1試合あたり30分以上の起用もあり得る。

 一方で「つなぎ」「控え」の役割も軽視できない。3ビッグを可能な限りフレッシュな状態で試合に出させる、3ビッグ不在時のプラスマイナス(出場している時間帯の得失点差)を悪化させないーー。そんなセカンドユニットをどう構成するかは、チームの重要テーマだ。八村、渡邊が合流していない今の時期は新戦力を試すチャンスでもある。

 「9枠目以降」を巡るバトルは既に佳境だ。2023年のW杯でメンバー入りした原修太、西田優大も既に代表候補合宿から外れた。メインを引き立たせるチームバランス、補完関係が大きく問われるため、能力が高ければ選ばれるわけではない。

 日本代表は6月22日と23日に、札幌でオーストラリアとの強化試合を2試合行っている。22日はオーストラリアが90-89で勝利し、23日の再戦は95-95の引き分け(※オーバータイムがない特別ルール)だった。

Bユース初の代表選手

現在はハワイ大でプレーしている 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 2試合へのエントリーはそれぞれ12名で、22日と23日で4名が入れ替わっている。センター(C/5番)、パワーフォワード(PF/4番)でのプレーが想定される「ビッグマン」はホーキンソン、川真田絋也、渡邉飛勇、山ノ内勇登、井上宗一郎、ジェイコブス晶、張本天傑、吉井裕鷹の合計8名が試された。(※ジェイコブス、吉井はスモールフォワード/SF登録だがPFも対応可能)

 ホーキンソンは「当確」で、川真田、井上、吉井もW杯の登録メンバーだ。渡邉、張本も負傷がなければW杯出場のあり得た選手で、この6名は評価がかなり定まっている。

 チームの上積みとして期待を感じるのが20歳のジェイコブスだ。彼は2004年4月生まれで、現在はハワイ大に在学中。アメリカの西海岸育ちだが、日本語のコミュニケーションにも不自由はない。

 ジェイコブスはBユース出身者として初のA代表(※年齢制限のない日本代表)選手でもある。彼はコロナ禍の2020年末に来日(帰国)し、まず横浜ビー・コルセアーズのU18に加入した。そこから人生は拓けていく。

 横浜BCの白澤卓アカデミーダイレクターは当時こう述べていた。

「彼はロサンゼルスにいたんですけど、ジムがロックダウンをしてバスケができなかった。母が日本人で横浜市に(祖母が)住んでいるので、(2020年の)年末に帰ってきてバスケができるところを探したら、僕らがヒットして来てくれました」

 白澤ダイレクターは「2メートル/ポイントガード」という内容のエントリーが来て、冷やかしを疑ったという。しかし彼の眼の前に現れたのは本物の2メートルだった。左利きでスキルも高い彼はU18チームを経てトップチームにコールアップされ、17歳7ヶ月0日という当時のB1最年少出場記録も樹立している。その後オーストラリアの「NBAアカデミー」に移り、昨秋にハワイ大へ入学。NCAAⅠ部のファーストシーズンを終えたところだ。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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