9試合ぶりの14号で大谷はトンネルを脱したのか 打撃低迷の裏にある「調子の波」と「フィジカル」
5月29日のメッツ戦で14号2ランを放つ大谷 【写真は共同】
「だから、あまりBBQ味は使わないようにしている。なくなると怒られるから」
大谷翔平(ドジャース)は、久しくサンフラワーシャワーを浴びていなかったが、5月29日(現地時間、以下同)のメッツ戦で左翼に14号2ランを放ち、12日ぶりにそれを味わった。
今季、得点圏に走者を置いて初の本塁打。また、シティ・フィールドでの初本塁打となり、これでメジャー26球場目。全球場コンプリートまで、シチズンズ・バンク・パーク(フィリーズ)、PNCパーク(パイレーツ)など、あと6球場となった。ピッツバーグは6月に、フィラデルフィアは7月にそれぞれ訪れることになっている。
T・ヘルナンデスから祝福の種を浴びせられる大谷 【写真は共同】
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5月28日のダブルヘッダー第1試合を終えて、9戦41打席ノーアーチ。今季ワーストを更新していた。また、5月16日から5月28日までの11試合は43打数8安打、1本塁打、10三振、打率.186、出塁率.239、OPS.565。今季、5〜6試合の単位で意図的に切り取れば、その間の打率が1割台ということはあったが、10試合を超えたことはなかった。
ひょっとしたら訪れているのか、深い波が――。ボール球を振って空振りをするたび、右方向への内野ゴロに倒れるたび、大谷自身のそんな言葉がよぎった。
サンフランシスコで、あわや“スプラッシュヒット”か――という特大の本塁打を放った5月14日の夜のこと。今季の安定感について聞くと大谷は、「調子の波というのは、周期もあれば深さもある」と話し、続けた。
「まだ調子の一番悪い、深い波が来ていないだけなのかも分からない」
その時点では、打てない打席が続いても、深くも長くもなかった。それはただ、彼の中では偶然ではなく必然であり、昨季つかんだ自信に裏付けられていた。
「何をすればいいか、いい状態を維持しやすいのかとか、そういう調整も含めて、『なんでこうなっているのか』というのを理解すれば、その好調を維持したり、不調を早く脱したりというのがしやすい」
これは、今年のキャンプ初日のコメントだが、その感覚を失っていないのか。そのつかんだものは正しかったのか。サンフランシスコで大谷に問うと、それを否定しなかった。
「自分がもう、感じが悪いなと思ったときに改善できる引き出しというか、そういうのは毎年、歳を重ねるごとに、経験するごとに、『これをやればこういう風になって、改善されていくんだな』というのが分かる。そこはだいぶ進歩している」
スイング軌道がおかしければ、構えを微調整した。ボール球を振っていれば、感覚とストライクゾーンのブレを補正した。