週刊MLBレポート2024(毎週金曜日更新)

9試合ぶりの14号で大谷はトンネルを脱したのか 打撃低迷の裏にある「調子の波」と「フィジカル」

丹羽政善

大谷が語る下半身の重要性

 その流れで見ていくと、今回はやや修正に手こずっているように映ったが、感覚というより、フィジカルに問題があった可能性を否定できない。

 それは、5月25日のレッズ戦で三塁打を放ったときに、全力疾走をしていなかったことで明らかとなったが、5月16日のレッズ戦で出塁したときにけん制球が左太もも裏に当たって以降、5月28日まで43打数8安打(打率.186)だった。

 大谷はその状態について、「次の日くらいから徐々に張りが出て、その中で走っていたので、徐々に悪くなった」と明かしたものの、打撃への影響については、否定している。「状態がそこまで良くないというのはもちろんあると思いますけど、軸足の影響はあんまりないかな」。

 果たしてそうだろうか。大谷は2019年9月に、左膝蓋骨(しつがいこつ)の手術を行った。新型コロナウイルスの感染拡大で短縮シーズンとなった20年は、打率1割台に終わっている。すると21年、下半身の重要性について、何度か口にした。

 キャンプではこんな話をしている。

「去年はやっぱりどうしても上体でさばきにいくしかなかったので、それなりの数字しか残らないというか、そういう技術の数字が残るというのは、いい勉強になった」

「上体がしっかり残ってる段階で、打ちにいくかどうかを下半身で決めている」

 開幕して結果が出始めると、改めて下半身の重要性を強調した。

「ああいう飛距離を出すっていうのは下(半身)でしっかりと捉えないと難しいので、そこは去年と違うところ」

「やっぱり、膝じゃないですかね。実際に、去年やってみて分かりましたけど、かなり重要なところだなっていうのは感じてますし、やっぱりバッティングでそこを気を付ければいい状態を保てる」

 19年から20年にかけて、深い波に飲み込まれてもがいた教訓は、その後の糧となった。

 今回、単なる打撲ということなので、完治は時間の問題。肉離れではないことに、誰もが安堵した。やっかいなのは、この2週間ほどで変な癖がついていた場合。無意識のうちに左足をかばう打ち方をしていたとしたら、そうした修正はときに時間を要する。

 もっとも、その答えも引き出しのちょっと奥にあるかもしれない。過去に経験していることなのだから。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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