[金曜特別コラム]最先端レフェリング論(2) J2・J3にVARがなかなか採用されない理由
W杯では1試合で13人もの大所帯がVARに関わっている
カタールW杯では「VAR1人・AVAR3人・RO3人」という7人体制で運用された 【Photo by Pablo Morano/BSR Agency/Getty Images】
さらに補足するとカタールW杯ではVARルームがスタジアムとは異なる専用施設に設置されたため、万が一通信が遮断した場合に備えて「バックアップVAR」が各スタジアムに1人置かれた。さらにスタジアムには副審のバックアップも用意された。
つまりスタジアムに「主審+副審2人+第4審判+バックアップVAR+バックアップ副審」、専用施設に「VAR+AVAR3人+RO3人」という大所帯だったのである(レフェリー10人+オペレーター3人)。
AVAR3人の役割分担は次の通りだ。
【AVAR1】(アシスタントVAR)
主にメインカメラの映像を注視。VARがビデオで事象を確認している間、ピッチで起きていることをチェックしてサポートする。通常のAVARの役割とほぼ同じ。
【AVAR2】(オフサイドVAR)
オフサイドの判定を担当。半自動オフサイドテクノロジーの助けを借りて、潜在的なオフサイドをチェックする。
【AVAR3】(サポートVAR)
主にTV中継で流れている映像を注視し、VARの事象チェックをサポートする。
W杯ではカメラの台数も違う。JリーグのVARには最大12台のカメラが使われているが、カタールW杯では42台のカメラが使われた(そのうち8台はスーパースローモーション、4台はウルトラスローモーション)。
W杯では、通常には設置されていない角度にもカメラが設置されている 【Photo by Dan Mullan/Getty Images】
とはいえ、「レフェリー10人+オペレーター3人」という運営体制を各国のリーグで実行するのは現実的ではないだろう。もともとVARシステムの目的は重大なミスの防止で、完璧さを目指すものではない。リーグごとに持続可能なグレードを採用すべきである。
だからこそ「VARライト」が開発されたのだが、世界中に普及するにはさらなる簡易版が必要だ。もちろんビデオ判定の精度は落ちるだろうが、品質とコストがトレードオフなのは世の常である。
VARが決して全知全能の神ではなく、あくまで道具のひとつにすぎない――そういうレフェリーにまつわる基本知識がさらに広く知れ渡れば、VAR簡易版の普及は早まるはずだ。
<次回に続く>
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