週刊MLBレポート2024(毎週金曜日更新)

松井の記録に並び、抜いたことは「日本球界にとって大きい」 大谷が考える日本人打者の可能性とは?

丹羽政善

本塁打は打撃の可能性を広げる

昨年9月に行われたヤンキースOBが集う恒例行事「オールドタイマーズ・デー」で、ファンに応える松井秀喜さん。言わずと知れた、日本人パワーヒッターのパイオニアだ。 【Photo by Jim McIsaac/Getty Images】

 咀嚼(そしゃく)を加えるなら、サイズがあって長打力もあるなら、その持ち味を大切にすべき。メジャーリーグに行ったら日本人選手のパワーでは通用しないという思い込みがあるとしたら、それは違う。日本人選手がメジャーリーグでホームランのタイトルを取るなんて、誰も予想していなかった。自分で可能性を狭める必要はない。自分が本塁打の数を伸ばしていくことは、あとに続く選手の道標になる。だから、本数にこだわっていくーー。

 本塁打の位置づけに関しては、「バッティング自体は、可能性を広げていく作業」とも話した。

「フォアボールもあるし、単打もあるし、二塁打もあるし、ホームランもある。可能性を広げるなかで、ホームランがあるかないかでは、相手にかかるプレッシャーも違う。来るボール自体にも多少は影響を出せるので、そういう意味では大事。自分の長所でもあるので、大事にしていきたい」

 もちろん、だからといって誰もが大谷に続けるわけではない。しかし、誰かが超えていかなければ、レッテルは貼られたままである。ひいては二刀流も同じこと。大谷が失敗していたら、ジャイアンツが2022年、23年と、2年連続で二刀流選手を1位で指名することはなかった。今年のドラフトで1巡目——トップ5での指名が有力視されるフロリダ大のジャック・カグリオーンが、メジャーリーグで二刀流を目指すこともなかったのではないか。

「日本の野球界にとっても大きいこと」

 ずっと靄のかかっていた言葉が、すっと腑に落ちた。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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