【週刊ドラフトレポート#04】ドラ1候補へ急成長も 198cmの超大型右腕・小船翼、強肩強打のショート・石塚裕惺
今回紹介するのは、共に甲子園出場経験はないものの上位指名が有力視されている小船翼(知徳・投手)と石塚裕惺(花咲徳栄・遊撃手)の2人。その魅力を西尾さんが解説します。
(企画編集:Timely!編集部)
*現時点のレベルバロメーター:
★★★★★5:複数球団の1位入札濃厚
★★★★☆4:1位指名の可能性あり
★★★☆☆3:2位以上の可能性あり
★★☆☆☆2:支配下での指名濃厚
★☆☆☆☆1:育成であれば指名濃厚
「規格外の超大型右腕。最速は152キロに到達し、奪三振を量産中」
今年の高校生投手の目玉となりうる超大型右腕の小船翼 【写真提供:西尾典文】
【将来像】ファルケンボーグ(元・ソフトバンク、楽天)
日本人選手は当てはまらない。全盛期のファルケンボーグになれる素材
【指名オススメ球団】オリックス
高校卒のスケールが大きい投手が多く大成している実績から
【現時点のドラフト評価】★★★★☆(1位指名の可能性あり)
2014年にそれまでの三島高校から校名が変更となった知徳高校。これまで春、夏の甲子園出場はないが、2022年秋には県大会で準決勝に進出するなど近年力をつけてきている。
そんな知徳で今年プロから高い注目を集めているのがエースの小船翼だ。神奈川県の出身で中学時代は海老名シニアでプレーしていたが、怪我もあって当時は4番手投手であり、目立った実績はなかったという。ただ中学卒業時点で身長は190cmを超えており、その存在は県内で早くから噂となっていた。本格的にスカウトからの注目を集めたのは2年になってから。春にストレートが140キロを超えると、夏には2回戦で同地区の強豪である日大三島に敗れたものの最速146キロをマーク。この頃から翌年の有力候補として盛んに名前が聞かれるようになった。
初めてそのピッチングを見たのは昨年8月27日に行われた地区予選の沼津東戦だ。先発のマウンドに上がった小船は立ち上がりから140キロ台後半を連発し、2回には150キロをマーク。3回に甘く入った変化球をレフトスタンドに運ばれるソロホームランを浴びたものの、許したヒットはこの1本のみで、13奪三振で1失点完投勝利をあげて見せたのだ。フォームはテイクバックで右肩が下がり、「ガクッ」と沈み込む動きがあるものの、この日も四死球0と決してコントロールも悪くない。ただこの試合では145キロ以上をマークしたのは試合の序盤だけで、中盤以降は140キロ台前半にスピードダウンするなど、スタミナ面では少し物足りなさが残った。
次にピッチングを見たのは3月30日に行われた地区予選の御殿場西戦だったが、そこで小船は冬の間の成長を見せることになる。ストレートの最速は前年秋を上回る151キロをマーク。一冬を超えて1キロしかアップしていないと思われるかもしれないが、大きく異なっていたのがアベレージのスピードだ。昨年8月は3回以降明らかに球威が落ちていたが、この日は8回にも149キロ、9回にも148キロをマークするなど最後までボールの勢いが落ちることはなく、高い出力を維持し続けていたのである。8回に味方のエラーから2点を失ったものの、自責点0で完投し、奪った三振は18個を数えた。フォームも基本的な形は変わっていないが、沈み込んでから体重移動するまでにゆったりとした動きができるようになり、下半身の粘りがアップしたように見えた。またパスボールをした下級生の捕手に対しても全く苛立つような様子を見せることなく、盛んに励ましている姿勢にも好感が持てた。
4月中旬には取材で話を聞く機会もあったが、まだまだスピードアップする手応えを感じているとのことで、チームを指揮する初鹿文彦監督もその成長ぶりには驚いていると話していた。そしてその取材から2日後、県大会の浜松城北工戦では本人の言葉通り自己最速をさらに更新する152キロをマークし、14奪三振で完封勝利をあげている。試合後、初鹿監督と電話で話した際には体調は万全ではなかったとのことだったが、それでも地区予選からこれだけ続けて結果を残しているというのは実力が飛び抜けていることの証と言えるだろう。
これだけのスケールを持った投手はなかなか出てくるものではない。このまま夏に向けて順調に成長を続けていけば、今朝丸裕喜(報徳学園)と並ぶ高校生投手の目玉となる可能性もありそうだ。