週刊ドラフトレポート(毎週木曜日更新)

【週刊ドラフトレポート#04】ドラ1候補へ急成長も 198cmの超大型右腕・小船翼、強肩強打のショート・石塚裕惺

西尾典文

「木製バットでも快音連発。強打の高校ナンバーワンショート」

打撃だけでなく堅実な守備でも評価が高い石塚裕惺 【写真提供:西尾典文】

石塚裕惺(花咲徳栄 3年 遊撃手 181cm/81kg 右投/右打)

【将来像】西武時代の中島裕之(中日)
強いリストで長打を放つスタイルと強肩がイメージと重なる
【指名オススメ球団】西武
源田壮亮、外崎修汰の後釜となる大物野手が欲しいチーム事情から
【現時点のドラフト評価】★★★★☆(1位指名の可能性あり)

 2017年夏に甲子園初優勝を果たした花咲徳栄。2015年からは8年連続でドラフト指名を受けており、全国でも屈指の「勝ちながら選手をプロに輩出する」チームだ。連続ドラフト指名は昨年で途切れたものの、今年はショートの石塚裕惺が高い注目を集めている。中学時代は関東でも屈指の強豪である佐倉リトルシニアでプレー。花咲徳栄でも1年秋からレギュラーとなり、旧チームから中軸を任されている。

 そんな石塚の評価が一気に上がったのが昨年秋の関東大会だ。チームは準々決勝で常総学院に敗れたものの、石塚は2試合で6打数5安打を記録。初戦の横浜戦では特大の一発を放つなど、5安打中3本が長打という大暴れだった。打撃に注目が集まる石塚だが、ショートとしても深い位置から強く正確に投げられる強肩が目立ち、秋の県大会、春日部工戦で放ったスリーベースでは11.58秒(12.00秒を切れば俊足と言われる)をマークするなど脚力も備えている。惜しくも選抜出場はあと一歩のところで逃したものの、もし出場していれば大きな話題となったことは間違いないだろう。

 石塚の評価をさらに上げることになったのが4月4日から行われたU18侍ジャパンの強化合宿だ。合宿初日、グラウンドに現れた石塚を見てまず感じたのが秋と比べて体が一回り大きくなっていたこと。練習後の取材でもそのことについて触れると、オフの間に積極的にトレーニングに取り組み、またスピードも落ちないように意識しているとのことだった。そして圧巻だったのが練習でのフリーバッティングである。この合宿では国際大会を想定して全員が木製バットを使用しており、中には明らかに苦しんでいる選手もいたが、そんな中でも石塚は軽々とフェンスを越える当たりを連発して見せたのだ。マシンから来る一定したボールではなく、バッティングピッチャーのボールもしっかりスタンドまで運んでいるところにも打撃技術の高さがうかがえた。

 昨年12月に行われた大学日本代表候補合宿ではドラフト1位候補に挙げられる渡部聖弥(大阪商業大)や西川史礁(青山学院大)も大きなアーチを描いていたが、フリーバッティングの打撃だけであれば石塚も全く遜色ないレベルだった。本人の話では1月から木製バットで練習してきており、この合宿の時点では反発力の弱い新基準の金属バットでも練習試合で4本のホームランを放っているという。U18侍ジャパンの小倉全由監督(前・日大三監督)も木製バットで「なかなか打球が飛ばない」と話していたが、その中でも印象に残った選手として石塚の名前を挙げていた。

 2日目に行われた紅白戦ではノーヒットと結果を残すことはできなかったが、守備では堅実なプレーを見せている。視察に訪れたプロ野球のスカウト陣も軒並み石塚に対して高い評価を口にしており、昨年秋と比べても確かな成長を見せたことは確かだろう。

 今年のドラフト候補となるショートでは明治大の宗山塁が目玉と見られているが、打者としての将来性を考えると石塚を高く評価する球団が出てきても全くおかしくない。春、夏の大会でさらにアピールすることができれば、昨年の横山聖哉(オリックス)のように、いきなり1位指名を受けることも十分に考えられるだろう。

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著者プロフィール

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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