「一石三鳥」を得た大岩監督の入れ替え戦略 パリ五輪アジア最終予選、準々決勝進出決定

川端暁彦

活気が生み出す第3の効用

第1戦で先発を外れた選手たちは、逆にモチベーションを上げてこの試合に入っていた 【Photo by Zhizhao Wu/Getty Images】

 チームとして一体感を持って戦う姿勢は大事だが、同時に1人の選手として競争を戦っていく姿勢も別に失ってはいない。メンバーを入れ替えながら戦う第3の効用は、そうした競争意識を促すことでもある。

 第2戦で藤田に代わってキャプテンマークを預かった副主将の山本はこう語る。

「チームとして成長していくために、やっぱり下からの突き上げだったり、サブのやつが『スタメンを奪ってやる』っていう気持ちを持っていることは大事。それがあってこそチームは成長する。たぶん、恵允(佐藤)とかは今日決め切れなくて悔しい思いをしたと思うけど、逆にそれが次の韓国戦のパワーにもつながっていくと思う」

 第1戦で先発を外れた選手からは試合前後に、「悔しかった」「やってやると思ってた」「信頼を取り戻したかった」――そんなワードが聞こえてきた。控えに回った選手がモチベーションを失わないことで生まれるエネルギーは、チームと個人の成長につながっていく。

「すごくチームとして活気がある」と振り返ったのは、初先発のDF鈴木海音(磐田)だが、これこそ大岩監督が真に狙っていたものだろう。

 当然ながらメンバー入れ替えにはリスクも伴うものだが、そのリスクを負うだけの価値はあると「最終的にジャッジした」(大岩監督)わけだ。

そして日韓戦は1位突破を懸けて

昨年のアジア競技大会の決勝では韓国に惜敗。大岩監督にとってはリターンマッチとなる 【写真は共同】

 この流れで迎える第3戦は、韓国が相手となる。「特別な見られ方をするもの」と指揮官が位置付けるように、伝統ある日韓戦には、特別な意味づけを伴いがちではある。

 両チームともに2連勝で準々決勝進出を決めており、無理に勝ちを狙いにいく必要のない試合という見方もあるかもしれない。ただ、グループ2位抜けの場合、相手は開催国のカタールとなる。地力も高い上に、ホームアドバンテージを持つ相手を向こうに回すのは、やはり避けたいところだ。「3試合を勝って準々決勝へ行く」(大岩監督)ことを狙うことになる。

 ここまで日本と韓国は勝利数だけでなく、得点数、失点数でも完全に並んでおり、優劣がない状態。このため、大会規定により、この第3戦が引き分けの場合、PK戦でどちらが1位抜けになるかを決することになる。

 指揮官は「レギュレーションについて大会前から理解していましたけど、いざこういう状態に置かれると何か不思議な感じはします」と苦笑い。ノックアウトステージを前にして、各選手のPKに関するデータを採られてしまうのも避けたいので、できれば90分以内に勝ち切りたいところである。

 そして、この韓国との第3戦に向けてもガラリとメンバーを変更していくことは確実だろう。その上で勝ち切って3連勝での首位通過となれば、パリ五輪への距離は一段と縮まることになる。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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