ジェフ・フレッチャー著『SHOーTIME2.0 大谷翔平 世界一への挑戦』

打者・大谷翔平として経験した球種を自ら再現 3カ月足らずで「大リーグ有数」のツーシームを習得

ジェフ・フレッチャー
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 エンゼルスの番記者のジェフ・フレッチャーが綴る、現在進行形の生きる伝説の舞台裏!
 二刀流・大谷翔平のMLBの2022年シーズンから始まり、2023年シーズンとWBC優勝、そして新天地移籍までの舞台裏を追ったノンフィクション。
 アーロン・ジャッジ、マイク・トラウトといった、強力なライバル&盟友らの背景や生い立ちなど、アメリカのベテラン記者ならではの視点で描かれた「大谷本」の決定版!!

 ジェフ・フレッチャー著『SHOーTIME2.0 大谷翔平 世界一への挑戦』から、一部抜粋して公開します。

対戦相手の球種を得る

22年6月のヤンキース戦を契機に、大谷はツーシームを習得を始めた 【USA TODAY Sports/ロイター/アフロ】

 エンゼルスがニューヨークに遠征した6月上旬のことだった。大谷翔平は打席に立ち、ヤンキースの右の豪腕救援投手、クレイ・ホームズと対戦した。

 ホームズは大谷に対し、2球の100マイル(約161キロ)のツーシームの速球を投げ、大谷はこの球を自身の記憶に焼きつけた。

 速球は、投手の球の握り方によって2種類に分かれている。基本、指を4本の縫い目にかけるか、2本の縫い目にかけるかだ。

 フォーシームだと球は直線の軌道をたどるが、スピンがかかっているため、打者から見るとボールが浮き上がってくるような錯覚に陥る。実際のところ、この球は予測より下がり幅が小さいというだけのことだ。

 一方で、ツーシームの速球は、投手の腕の側に大きく変化してくる。右腕投手の場合、ボールは投手の右側、あるいは右打者の方向にえぐるように入っていく。

 こういう球の変化のことを「ラン」という。ボールがこの反対方向に曲がる場合、「カット」と呼ばれる。つまり、カットボールとは右打者から見て外側に曲がる速球なのだが、投手の指の使い方とスピンのかけ方により、フォーシームやツーシームほどの球速は出ない。よって、軌道変化のある変化球の一種とされている。

 大谷がホームズの投じるツーシームを体感したとき、これは自身の球種に入っていないものだと悟った。

 大谷は、直線の軌道をたどるフォーシームの速球を投げ込んでいた。自身のスライダーとカットボールはどちらも自身から見て左側に曲がっていくもので、カーブとスプリットはどちらも真下に落とす球種だ。

 自身の右側に曲がっていく球種が加わったらどうだろう、しかも、ホームズが投じるのと同じくらいの球速も出せたら、と大谷は考えるようになり、この球種の練習を始めた。
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