カーリング世界選手権13カ国中11位の日本代表コンサドーレ フィジカル向上で捲土重来を期す

竹田聡一郎

大会途中で清水が流した涙の理由

大内遥斗(中央)は「個人的には大会の入りの部分で課題も出た」と語る 【筆者撮影】

 経験豊富なバックエンド、サードでスキップの阿部、フォースの清水徹郎、いずれも3勝で11位という結果に対しては「受け止めるしかない」と阿部、「言い訳はできない」と清水。それぞれ息を吐いた。

 阿部のショット率は77%でポジションごとで11位、清水は76%で同10位だった。劣勢なゲームが多い以上、バックエンドのショット率が下がるのは仕方がないといえ、物足りない成績であることは明らかだ。

 阿部は「例えばドイツ戦であったり、スチールをされている苦しい時にチームとしていい空気を醸成できなかった」と省みたが、確かに劣勢の時こそ若手へのコミュニケーションの仕方などにもう少し気を配る必要があったかもしれない。

 日本人最多の9回目の世界選手権出場となった清水だが、ラストロックを投げるのは初めてだった。

 ニクラス・エディン(スウェーデン)、ブラッド・グシュー(カナダ)をはじめ、世界の名手との投げ合いは緊張と消耗を強いられるもので、大会序盤から「自分のミスでチームを悪い雰囲気にしてしまった」と悔恨の涙を流す場面もあった。

「個人的にはミスもあったし、大会中盤から後半にかけて自分の感覚と阿部ちゃん側から見ているものと、少しずつズレていった。それは苦しかったですね。ミスが出たり少し崩れてしまうのは仕方ないけれど、それでも最低限のショットを決め続けるだけでチームが楽になる。疲れていても最低限を決めることができるような練習は意識していきたい」(清水)

 列強の強いプレッシャーにさらされながら、若手をケアしつつ、高いところを目指す。困難なミッションではあるが、それが彼らの選んだ道だ。精度を意識し、チームショットを増やし、なんとか白星を重ねていく。世界選手権という得難い経験を重ねたのだから、チームとして次のフェーズに進まないといけない。

世界と撃ち合う姿勢から得た課題と、2026年五輪への道のり

優勝したスウェーデンとの試合はハーフまではリードするなど健闘した 【著者撮影】

 チームは9日に羽田から帰国し、同日に北見、札幌へとそれぞれ戻っていった。阿部と清水は職場へ。学生の大内と敦賀は新年度を迎え、中原はロコ・ドラーゴと合流する。今季を終え、来季へ向けてアイスリーディングやサンディング(ストーンの研磨)への対応、チームショットの増加、LSDの改善など、課題が見えてきた。

 課題が浮かび上がったのは、全12試合で世界の強豪に臆さず攻撃的なカーリングを貫いたからだ。安易にリスクを減らすために相手の石をテイクせず、「ここに置かれたら嫌がるだろうな」という場所を阿部のブラシは示し続けた。上位チームと点差があっても、カナダやイタリアなど相手スキップに時間を使わせ、打ち合うチームの印象を残したのではないか。今後、精度の部分をトレーニングでどう補うか。来季の注目ポイントだ。

 また、今季からチームにフィフス兼コーチとして加入した敦賀信人はシーズン途中からコーチに専任したため、フィフスのポジションはまた空いている。あるいは刺激と競争を生むために、新たな選手を加える可能性もあるだろう。

 束の間のオフを挟み、チームは8月上旬に開幕する北海道ツアーの「稚内みどりチャレンジ杯」で来季をスタートさせるだろう。秋に入るとにカナダに渡航し、10月下旬からラクームで行われるパンコンチネンタル選手権に日本代表として出場し、来年の世界選手権出場権を獲得するタスクがある。

 3勝で11位。開幕まで2年を切った2026年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪出場に向けても厳しい結果になってしまった。阿部は自身のSNSに「求めていたものではなく」という言葉で心情を吐露しているが、「正統な実力と結果」としたうえで「だからといってチャレンジしないというわけでは決してなく、今は早く練習したい」と決して下を向かなかった。彼らの挑戦は続く。

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著者プロフィール

1979年神奈川県出身。2004年にフリーランスのライターとなりサッカーを中心にスポーツ全般の取材と執筆を重ね、著書には『BBB ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅』『日々是蹴球』(講談社)がある。カーリングは2010年バンクーバー五輪に挑む「チーム青森」をきっかけに、歴代の日本代表チームを追い、取材歴も10年を超えた。

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