V奪還を狙うA東京コンビが語る「常勝アルバルクの宿命とBリーグの進化」

小永吉陽子

【©ALVARK TOKYO】

 現在、Bリーグ東地区の首位争いをしているアルバルク東京。5シーズンぶりのリーグ制覇に向けてカギを握っているのが、ベテランのライアン・ロシターと若き司令塔、テーブス海だ。年齢差9歳の仲良しコンビにここまでの戦いぶりと、東地区の重要な連戦が待ち受ける終盤の戦い方、そして年々レベルアップしているBリーグの進化について聞いた。

「ライアンは僕のキャリアにとって大切な存在」

【スポーツナビ】

――それぞれ、お互いをどう見ていますか?

テーブス 僕はプロとして最初に宇都宮ブレックスに入団したのですが、その当時からライアンはスター選手でありながら、初日から僕に気さくに声をかけてくれました。ライアンってポイントガードの要素があるじゃないですか。当時、右も左もわからなかった自分に、ガードとして細かくアドバイスくれたんです。ライアンは僕のキャリアにとっては大事な選手で、自分が成長する姿を見せたいと思う存在です。アルバルクでまた一緒にプレーできてうれしいですね。

ロシター NCAAでプレーしていた時から、海の存在は知っていました。非常にアグレッシブで、いいパスを持っていて、クイックネスがある選手だと思いながら見ていました。宇都宮に入った1年目はBリーグにフィットするのが難しかったと思うけど、宇都宮がチャンピオンシップで戦うためのキーマンになる選手だと思っていました。今シーズン、アルバルクでプレーすると聞いたときは、一緒にプレーしたかったのでうれしかったですね。以前はドライブ中心だったけど、今ではキャッチ&シュートやドリブルからのシュートの確率が上がったし、ポイントガードとしての判断が良くなりました。ここ数年で非常に成長しましたね。

――アルバルクの公式SNSなどで、2人はナイスコンビな姿を見せていますが、プライベートでも仲がいいのですか?

テーブス SNSでは仲がいいように見せているだけです(笑)

ロシター そうなんだ。僕らはそんなに仲良しじゃないよね(笑)

――そうなんですか!? てっきり仲がいいのかと…

テーブス いや、本当は仲いいです(笑)。仲はいいんですけど、休みの日にご飯を一緒に食べに行くような仲の良さではなくて、チームでは一緒にいることが多い感じですね。たとえば、チームで何か面白いことが起きていると、必ずといっていいほど、ライアンと目を合わせちゃいますね。お互いに英語で話せることが大きいですし、それ以上に、ユーモアがあるライアンの考え方とは似ている感じがしますね。

ロシター 海とはそんな関係だね。あ・うんの呼吸というか、アイコンタクトは多いよね。

常勝チームのプライド

【©ALVARK TOKYO】

――今シーズンは勝率でトップ争いをしています。ここまでの戦いぶりをどう評価しますか?

ロシター 怪我人がいた中でも結果を残していることは評価できます。Bリーグは60試合と長いので、もし負けたとしても、一つの結果で下を向くのではなく、切り替えることが必要です。残り試合は少なくなったけど、上位チームであれ、下位チームであれ、自分たちの目の前の試合に勝って、いかにいいポジションでチャンピオンシップにいけるか、という段階に来ています。

テーブス 今のところ、課題がありながらもいい結果を残していると思います。アルバルクはベテランの選手、若い選手、外国籍選手がいい感じでバランスが取れていると感じます。そういったバランスが取れている中で1人の特別なスター選手がいるわけでもなく、勝利に貢献できる選手が集まっているからこそ、自信につながるゲームができていますね。

――過去にアルバルク東京に所属した選手たちは「常に優勝を目指すチーム」と言って戦っていました。2人はどう感じますか?

ロシター その通りですね。優勝を目指して期待に応えることはプレッシャーとして重みもありますが、選手としてはそれがやりがいです。アルバルクというチームは毎年優勝を目指すチームなので、アルバルクのユニフォームを着たら「目の前の試合に絶対に勝つ」とメンタリティーを持って戦う重みがあります。チーム練習以外にも、個人でシューティングをしたり、個人スキルを上げる練習をしたり、そうした全員の努力がチームの貢献へとつながっています。また、勝利へのプレッシャーはありますが、その中でもバスケを楽しめる気持ちも持っていますね。

テーブス 僕はアルバルクに来て1年目ですが、一流の強豪チームだと実感しています。選手だけでなく、コーチングスタッフや関係者の皆さんが、優勝するために動いている素晴らしい組織だということを初日から感じていました。正直な話をしますけど、僕は昨シーズン、滋賀レイクスで「残留しなければならない」という経験をしました。そういうプレッシャーがあった僕からすると、「優勝を目指す」というプレッシャーより、「残留しなければ」というプレッシャーのほうが苦しかったです。アルバルクの一員として、優勝を目指すことに対しての責任はめちゃくちゃ持っていますが、そこにプレッシャーはなくて、楽しくチャレンジさせていただいています。ごめんなさい。ライアンとは違う意見だけど……。

ロシター (それはわかる、という表情でうなずく)

テーブス だから、今は「恵まれているな」と感じながら、全力でチャレンジしています。

――昨シーズンは残留争いの中、どういう心境でプレーしていたのですか?

テーブス やっぱり、滋賀に移籍したときには期待感があったので、そうした状況から残留争いをするのは、僕だけでなく、みんながショックだったと思います。先日、茨城ロボッツと対戦して接戦になったときにも感じたのですが、やはり残留がかかっているチームは必死さがありますよね。悪い言い方かもしれないですが、毎試合毎試合、死ぬ気でやるようなところがあります。ただ、僕は滋賀での経験が今に生きていると感じます。アルバルクでは接戦になってもあまり動揺しないというか。だから、今は優勝へのチャレンジを楽しめているのだと思います。

ロシター 海の意見は確かにそう思う。シーズンを通して降格がある、ない、という中で戦うのはメンタルの面で大きな違いがあります。JBLの時代は降格がない年もあったし、すでに来シーズンのことを考えながら消化試合をしているチームもありました。Bリーグでは、下位のチームは降格したくないからあきらめない姿勢で戦う。ファンはそういう雰囲気を知っているから応援する。この競い合うところが、Bリーグのいいところです。

2人が感じるBリーグの進化

【©ALVARK TOKYO】

――日本でのプレー歴が長いライアン選手にお聞きします。Bリーグになってから選手の意識、環境の変化をどう感じていますか?

ロシター 総合的に見て、選手とチームのレベルが上がってきていることを実感します。今では世界中のリーグで活躍している選手がどんどんBリーグにやって来るので、すごく面白くなっているし、毎年リーグのレベルが上がっています。下位チームが上位チームに勝ってもおかしくないです。毎年レベルが高くなることによって、ファンの皆さんの応援が活気づいていくし、非常にいいことだと思います。

テーブス 僕も間違いなく、年々レベルが高くなっているのを感じます。僕がアメリカの大学を辞めて宇都宮に入るとき、大学のチームメイトやスタッフは「NCAAのディビジョン1でプレーしているのに、日本のリーグでプレーするの?」みたいな感じで言われたんですよ。でも今は、スペインの一部リーグ(ACB)の選手が来ていますよね。ACBはNBAの次のリーグと言われていますし、ユーロリーグでプレーしている選手も多いリーグですから。(セバスチャン・)サイズはスペイン代表で、レオ(レオナルド・メインデル)はブラジル代表。グダ(アルトゥーラス・グダイティス)はNBAにドラフトされた経験があります。そういう世界中の選手たちが日本でやりたいと思うリーグになっているので、多分今ならば、僕の大学のチームメイトたちもBリーグに入りたいと思う。本当にこの数年、いろんな方のおかげで素晴らしいリーグが作り上げられていると思います。

――NCAAは世界最高峰のアメリカで繰り広げられる大学リーグ。Bリーグとは実力の差があると感じますか?

テーブス 僕がBリーグに入ったとき、最初の頃は勝手に「NCAAのほうがレベルが高いんじゃないか」と思っていたところもあったんです。でも、よくよく考えたら、やっぱりプロは20代、30代の選手がいるわけで、大学生に比べたらはるかに経験があるし、IQも高い。NCAAにも身長だったり、フィジカルだったり、能力が素晴らしい化け物のような選手はたくさんいるんですけど、経験がやっぱりプロとは違うと実感しました。僕自身、大学ではそこそこ活躍できたと思っていましたが、実際にプロに入ったら、本当に何も知らない自分がいたというか、やっぱりプロはすごいなって思いましたね。

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著者プロフィール

スポーツライター。『月刊バスケットボール』『HOOP』編集部を経て、2002年よりフリーランスの記者となる。日本代表・トップリーグ・高校生・中学生などオールジャンルにわたってバスケットボールの現場を駆け回り、取材、執筆、本作りまでを手掛ける。

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