45歳の“新米監督”阿部慎之助が新たな風を吹かせる 「喜」を出しながら「愛される巨人」を取り戻す

三和直樹

今季から巨人軍を指揮する阿部新監督。シーズン開幕を前に「改革」への想いを語った 【写真:花田裕次郎】

 第20代巨人軍監督、阿部慎之助。2001年から巨人軍で現役生活19年を過ごして“史上最強捕手”の称号を得た男は、2軍監督、1軍ヘッドコーチを経て、今季から新監督に就任して3年連続V逸&2年連続Bクラスと苦しむチームの舵取り役を任された。スローガン「新風」を掲げ、新たにスポーツチャンネル「DAZN」の『GIANTS -INSIDE-』のアンバサダーにも就任した45歳に、開幕直前の意気込みを聞いた。(取材日:3月22日)

チームを「変える」ために

――いよいよ開幕が迫ってきました。選手時代、コーチ時代を経て、新たに監督としてシーズンを迎える今現在の心境は?

 すごく、今までに感じたことがないようなワクワク感がありますね。

――改めて、今年のチームスローガン「新風」に込めた想いは?

 ジャイアンツが90周年を迎えて、その伝統をしっかりと継承しつつ、新しい風を吹かせたい。チームとしてどんどん新しいことにチャレンジして行こうという気持ちを込めての「新風」ですね。新風を巻き起こしたい。

――チームとしては3年連続で優勝を逃し、ここ2年はBクラスです。やはり「変えないといけない」というが思いが強いのでしょうか?

 そうですね。時代は変わっているということも理解していますし、指導者として選手たちを見守って行かなきゃいけない部分もあると思うんですけど、今まで通りではダメだと思う。そういうことも含めて、いろんなことにチャレンジして、どんどん試して、変えて行きたいと思っています。

――具体的に、先発、リリーフ、打線など、チームのどの部分を変えたいと考えていますか?

 攻撃陣でいうと、打つ打たないという部分ではなくて、やっぱり走塁だと思います。ピッチャー陣は、去年は救援陣が良くなかった。でも今年はしっかりと補強もして厚みも出ましたし、楽しみだなと思っています。

――走塁という部分では、去年もホームランはかなり出ていた中で勝ち切れなかったという課題があったということですね?

 そうですね。ヒットなしで1点を取るっていう野球を目指していきたいと思います。去年、ホームランが1番多く(12球団トップの164本塁打)てもBクラスだったということは、みんなが理解していますし、優勝した阪神との違いも全て洗い出して、みんなが自覚している。まずは走塁から変えて、阪神との差を少しでも縮めていきたい。

「喜」はどんどん出していきたい

2年連続に終わったチームを浮上させることができるのか 【写真は共同】

――キャンプインから約2カ月が経過して、チームが変わって来たという手応えは?

 チームの中からずっと見ているとチームの変化というものは分かりづらいんですけど、僕がやりたい野球、どういう野球をやりたいのかっていうのは、浸透してきてくれたかなとは思います。

――そのやりたい野球、阿部野球っていうのはどういうものなのでしょう?

 今までのようにホームランをガンガン打ってというだけでは勝てないというのは分かりましたし、そこに緻密さもしっかりと入れながらやっていきたい。相手を考えさせる野球っていうのが僕のやりたい野球ですね。

――実際に監督してオープン戦などでベンチに座って、改めて感じたことや発見はありましたか?

 今までもコーチをやっていたので新しい発見ってのは特にないですけど、やっぱり監督としては、たまに「こうしておけば良かった」という風には思うことはあります。そういうことを徐々にでも少なくしていければと思うし、そのためには決断力っていうのは大事だし、難しい部分だなと思います。

――コーチ時代の経験もあります。監督になっても継続していきたい部分もあると思いますが?

 よくみなさんが、僕らしく、阿部らしくやればいいって言ってくれるんですけど、まだその“らしさ”っていうのは正直、よく分かってはいないです。でも、選手のモチベーションを下げることが一番良くないことだと思いますし、これまでの経験の中でも思っていることです。とにかく選手たちには前向きな言葉をかけて、モチベーションを下げないように心掛けたい。

――テレビの放送などで映るベンチの中での楽しそうな表情も印象的ですが、監督として心掛けていることは?

 まぁ、喜怒哀楽の中だったら、「喜」はどんどん出していきたいし、なるべく「怒」は出さないようにしようとは思っています。やっぱり選手は敏感ですし、監督のいろんな姿を見ている。新米監督ですけど、まずは僕が堂々としていなきゃいけない。もちろん一緒に喜んじゃう時はあるでしょうけど、冷静に、しっかりとチーム全体をみるっていうのが1番大事かなと思いますね。

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著者プロフィール

1979年1月1日生まれ。大阪府出身。学生時代からサッカー&近鉄ファン一筋。大学卒業後、スポーツ紙記者として、野球、サッカーを中心に、ラグビー、マラソンなど様々な競技を取材。野球専門誌『Baseball Times』の編集兼ライターを経て、現在はフリーランスとして、プロ野球、高校野球、サッカーなど幅広く執筆している。

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