ぶっつけ本番サウジGPで7位入賞の鮮烈F1デビュー イギリスはなぜベアマンのような才能を生み出せるのか

柴田久仁夫

「F1大国」イギリス

「史上最も成功したイギリス人ドライバー」ルイス・ハミルトン 【MercedesF1】

 それにしてもベアマンの母国イギリスは、実に多くのF1ドライバーを産み出してきた。今シーズンだけでもハミルトン、ジョージ・ラッセル、ランド・ノリスの3名が参戦。すでにスペインやフランスの2名を抜いて国別では最多だったが、ベアマンが加わったことで4名になった。20人しかいないF1ドライバー中、イギリス人が20%を占める。突出した数字である。

 しかも彼らはいずれも、並のドライバーではない。ハミルトンは言うまでもなく、ラッセル、ノリスは次世代のチャンピオン候補と目される。サウジではベアマンを含め全員が6位から9位に入り、きっちり入賞を果たした。

 1950年に始まるF1の歴史を振り返っても、歴代イギリス人ドライバー161人、チャンピオン経験者10人という数字は他国を圧倒する。イタリアでさえ99人、チャンピオンは1950年代に活躍したアスカリ、ファリーナ以来出ていない。「グランプリ」発祥の地フランスも、F1ドライバーは71人、チャンピオンはアラン・プロストのみだ。

(注)アメリカ人ドライバーの大部分は1950年代のインディ500出場者 【スポーツナビ】

 一方でイギリスは、F1チームが集中する国でもある。現在の全10チームのうち、イギリス以外に本拠地を置くのはわずか3チームしかない(フェラーリ、RB、キック・ザウバー)。レッドブルやアルピーヌのように、たとえチームの登録国籍がオーストリアやフランスであっても、マシン開発、製作を行うファクトリーはイギリス、中でもイングランド地方に置かれる。歴史的にその周辺に関連産業が多く存在し、何より世界中から集まる優秀な人材が、F1の公用語である英語で仕事ができることが大きい。

 そんな「F1大国」イギリスから、優秀なドライバーが輩出されるのは当然ということなのだろう。

なぜイギリスから、こんなにも多くの才能が生まれるのだろう

再びルクレール(写真)と組んで、フェラーリ黄金時代を築くかもしれない 【Scuderia Ferrari】

 しかしこの見方では、説明できない事実も多い。最たるものが、マックス・フェルスタッペンの存在だ。

 「F1不毛の地」であったはずのオランダから、フェルスタッペンというとんでもない才能がどうして生まれてきたのか。オランダ人F1ドライバーとして唯一表彰台経験のある父ヨスの英才教育があったとはいえ、彼の出現は突然変異的としか言いようがない。

 他にもたとえばフィンランドのような人口550万人の小国から、ケケ・ロズベルグ、ミカ・ハッキネン、キミ・ライコネンと、名だたる世界チャンピオンが続々と出たのも、実に不思議な話だ(かつてライコネンの故郷に取材に行った時には、「フィンランドは水が違うからだよ」と、煙に巻くような話をされたものだが)。

 ただしベアマンに限っていえば、「今こうして一緒に走っているハミルトンや、ラッセル、ノリスに憧れてレースに励んできたことが、今回のF1デビューに繋がった」と、本人は言っている。今後ベアマンがF1昇格を果たして彼らのように活躍すれば、さらに若いイギリスの才能も彼に続くことだろう。

(了)

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著者プロフィール

柴田久仁夫(しばたくにお) 1956年静岡県生まれ。共同通信記者を経て、1982年渡仏。パリ政治学院中退後、ひょんなことからTV制作会社に入り、ディレクターとして欧州、アフリカをフィールドに「世界まるごとHOWマッチ」、その他ドキュメンタリー番組を手がける。その傍ら、1987年からF1取材。500戦以上のGPに足を運ぶ。2016年に本帰国。現在はDAZNでのF1解説などを務める。趣味が高じてトレイルランニング雑誌にも寄稿。これまでのベストレースは1987年イギリスGP。ワーストレースは1994年サンマリノGP。

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