りくりゅうが復帰戦でみせた“滑る喜び” 世界選手権に向け「伸びしろしかない」

沢田聡子

「途中で止まろうかと」それでも滑り切ったフリー

フリーにはカナダの人気歌手、セリーヌ・ディオンの曲を選んだ 【Photo by Zhe Ji - International Skating Union/International Skating Union via Getty Images】

 三浦/木原のフリーは、セリーヌ・ディオンが歌う『Une chance qu'on s'a』を使っている。セリーヌ・ディオンは、2人の練習拠点であり世界選手権の開催地でもあるカナダの歌姫である。ドラマチックな曲に、2人の伸びやかなスケーティングが映えるプログラムだ。

 このフリーでも、ジャンプの得意な木原が珍しく3回転サルコウの着氷で手をつくなど、ジャンプのミスがいくつかあった。大技のスロー3回転ルッツは美しく決まり、確実に状態を戻しつつあることを感じさせると同時に、採点表には本来の滑りであればしないであろうレベルの取りこぼしも散見される。三浦/木原の復帰戦は、フリーは125.16、合計190.77、総合2位という結果だった。

 演技を終えて笑顔をみせていた木原は、フリー後の記者会見で「本当にフリープログラムがきつくて」と吐露している。

「練習であまりにもきつかったので、コーチの方から冗談で『あまりにもきつかったらペアスピンの時止まって休憩していいよ』と言われていた。本当に、試合の途中で止まろうかと思って(笑)。そんなような感じでした」(木原)

 それでもフリーを滑り切った木原は、テレビ局の取材に対し「残念な部分はたくさんあった」としながらも、手応えも感じている様子だった。

「短い準備期間の中で、ある程度試合できるレベルまでは戻せたので、良かったかなとは思いますけど。また世界選手権に向けてはまだまだ足りない部分が多いので、修正ポイント・伸びしろしかないかなって勝手に思って(笑)。『また一から頑張っていきたいな』と終わった瞬間から思いました」(木原)

 三浦も、記者会見で課題を挙げている。

「今大会ではレベルの取りこぼしが本当に多かったので、そこの見直しと、世界選手権に向けていい練習を積み重ねていけたらなと思っています」(三浦)

 まだ本来の状態に戻っていないことに対する焦りではなく、滑る幸せを感じながら試合に臨めるのが、三浦/木原の強さだろう。試合のリンクに戻ってきた“りくりゅう”は、3月のカナダで、多幸感あふれるプログラムをより高い完成度で披露してくれるはずだ。

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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