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プレミアリーグ後半戦展望 “2強”の牙城を崩して優勝するとしたら…

森昌利

アーセナルは2強との直接対決に勝つことが優勝の絶対条件

2強の牙城を崩すとしたらアーセナルだろう。現時点で首位リバプールと5ポイント差の4位。昨季逃したプレミアの覇権をつかめるか 【写真:ロイター/アフロ】

 というわけで今季の優勝争いだが、現時点の順位表を睨むと、勝ち点45の首位リバプールから勝ち点40で5位のトットナムまでにチャンスがあるように見える。しかし実質的には、今季も近年のプレミア優勝争いの典型的構図となるリバプールとマンチェスター・Cの“2強対決”となりそうだ。

 ここに割って入るとすればアーセナルだが、それはリバプールとマンチェスター・Cとの直接対決2戦に勝利することが絶対条件となるだろう。

 アーセナルは12月23日のリバプールとのアウェー戦で優勝を争うチームに相応しいパフォーマンスを見せたにもかかわらず、続く28日、そして大晦日に行われた年末の2連戦で1点しか奪えず、ウェストハム、フラムに連敗して勝ち点6を喪失したのが痛恨だった。

 優勝するにはこの勝ち点6を2月4日にホームで戦うリバプール戦、そして3月30日に予定されているアウェーのマンチェスター・C戦に連勝して取り返すことが不可欠だ。しかもこの間、リバプールとマンチェスター・Cに追いすがるため、勝ち続けなければならず、とすれば奇跡に近い快進撃が必要になる。

 2位マンチェスター・Cと同じ勝ち点43を奪い、3位につけているアストン・ヴィラの健闘は今季前半戦の大きなニュースだ。しかし今後、ふた回り目のリーグ戦で前半戦と同様の戦績を収められるか、という問題がある。

 ホーム&アウェーで戦うリーグ戦のふた回り目、特に終盤戦は、序盤戦との比較でどのチームも勝ち点にシビアな戦い方をするものだ。例えばホームで6-1勝利を収めたブライトンとのアウェー戦(5月4日に行われる予定)。相手も戦略的に工夫を凝らし、同じような大勝劇で決着する可能性は相当低い。

 確かに岡崎慎司を追ってレスターの奇跡の優勝を目撃した筆者にとって、アストン・ヴィラの大穴優勝を完全否定するのは忍びない。しかしあのシーズンは強豪クラブがそろって足踏みしたが、今季のリバプールとマンチェスター・Cにそのような体たらくを期待するのは難しい。

 それでは2強のどちらが優勝するのか。正直なところ分からない。今季の伸びしろで言えばリバプール。安定性でマンチェスター・Cに分があるように見える。

CL出場権最後の1枠は優勝予想より難しい

前半戦のビッグサプライズとなったアストン・ヴィラ。このままのペースで勝ち点を積み重ねるのは容易ではないが、CL出場権獲得の可能性はある。現実的なライバルはトットナムか 【写真:ロイター/アフロ】

 現時点で英ブックメーカーの優勝オッズを覗いてみると、1番人気はやはり実績上位のマンチェスター・Cで、断トツと言える1.5倍前後の数字。2番人気のリバプールは3.25倍から4倍で、オッズ的には明確な差が生じている。

 しかしどうだろう。1888年に世界初のプロリーグが創設されたイングランドにおいて、これまでに4連覇を達成したクラブは皆無だ。昨季に11連覇を成し遂げたドイツのバイエルンは言うまでもなく、スペインではレアル・マドリーやバルセロナが4連覇以上を達成しているし、近年のイタリア・セリエAではユベントスが9連覇もしている。ところが競合が激しいサッカー発祥国でこうした長期の連覇を実現することは歴史的にも難しいことが証明されている。

 もちろん昨季にトレブルを達成したペップ・グアルディオラのマンチェスター・Cは、その136年の歴史の壁をぶち破る常識はずれの強さを備えているように見える。

 けれども悲願の欧州CL優勝を果たし、栄光という栄光を平らげた昨季を経て、今季にイングランドの歴史を塗り替える偉業を達成するパワーが、特にメンタル面で残っているのかは疑問だ。人間、満腹になればもう飯は食いたくない。最終的にはハングリーさがものを言う。

 それにマンチェスター・Cには現在115件に及ぶ財務規定の違反問題がつきまとっている。今季、違反が見つかったエヴァートンには勝ち点10を即はく奪という制裁が下った。

 先週もさらにエヴァートン、そしてノッティンガム・フォレストにも違反が見つかったという報道が流れたが、その一方で115の疑惑を抱えながら勝ち続けるマンチェスター・Cを指し、“制裁に相応しいクラブが他にある”という意見も表面化している。

 また、これは完全に日本人サッカー・ファンのオカルトでもあるが、ユルゲン・クロップ監督はこれまでに香川真司、南野拓実と日本人選手を2人獲得して、その両選手のデビューシーズンにドイツとイングランドでリーグを制覇している。

 2度あることは3度ある。中盤の選手が大きく入れ替わった今季は、欧州CL出場権確保が最大の目標と見られていたリバプールだが、ここまで20戦でわずか1敗。新加入の遠藤航を「ここまで押し上げるチームだとは思わなかった」と驚かせた過激なまでの攻撃性で、期待を上回る進境を示している。

 そこで今季は、日本代表主将がアンカーとしてレギュラーに定着したチームということも含め、リバプールの優勝に期待したい。

 2位はマンチェスター・C、そして3位アーセナル。4位争いはトットナムとアストン・ヴィラのデッドヒートになるだろう。最後の欧州CL出場権を獲得するのはこの2チームのどちらか。けれどもこの4位は優勝を予想するより難しい。

 ヨーロッパリーグの出場権は、欧州CL出場権争いに敗れたトットナムとアストン・ヴィラのどちらかがまず獲得。ヨーロッパリーグのFAカップ優勝枠とリーグカップ王者に与えられるカンファレンスリーグ出場権は、その2つの国内カップの結果次第だが、リーグ戦6位以下が繰り上げで出場権を得られることになれば、現時点で6位のウェストハムから、7位マンチェスター・U、8位ブライトン、9位チェルシー、そして10位のニューカッスルまでが圏内となり、熾烈(しれつ)な戦いが最後まで繰り広げられそうだ。

 最後に降格は、シェフィールド・ユナイテッド、バーンリー、そしてルートンの今季の昇格3クラブが“本命”。このなかで生き残る可能性があるとしたら、ホーム戦でリバプール、そしてアーセナルを相手に善戦したルートンか。

 その場合の降格候補は、今季不調のブレントフォード。また今回の違反発覚でノッティンガム・フォレスト、そしてエヴァートンにさらなる勝ち点はく奪の制裁が下されることがあれば、この2クラブも当然、来季のチャンピオンシップ(英2部リーグ)でのプレーを強いられる可能性が高まることになる。

(企画・編集/YOJI-GEN)

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著者プロフィール

1962年3月24日福岡県生まれ。1993年に英国人女性と結婚して英国に移住し、1998年からサッカーの取材を開始。2001年、日本代表FW西澤明訓がボルトンに移籍したことを契機にプレミアリーグの取材を始め、2024-25で24シーズン目。サッカーの母国イングランドの「フットボール」の興奮と情熱を在住歴トータル29年の現地感覚で伝える。大のビートルズ・ファンで、1960・70年代の英国ロックにも詳しい。

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