220センチのフィリピン代表が河村勇輝と横浜で競演 NBA候補2人が生む阻止不可能なプレーとは?

大島和人

カイ・ソットの「高さ」は圧倒的だ 【(C)B.LEAGUE】

 2023年12月30日のB1「横浜ビー・コルセアーズ×シーホース三河」戦で、220センチのフィリピン人センターがホームデビュー戦を飾った。

 カイ・ソットは21歳ながら既に昨夏のFIBAバスケットボールワールドカップでもプレーしているフィリピン代表の中心選手だ。2019年3月に渡米したものの、コロナ禍に巻き込まれて(NBAの下部リーグに相当する)Gリーグへの出場が叶わなかった。ただ2021年から、オーストラリアのNBLでプロのキャリアを本格的にスタート。2022-23シーズンの後半戦から広島ドラゴンフライズに合流してB1で21試合プレーし、今季は怪我明けのタイミングで横浜BCに期限付きで移籍している。

 フィリピンはバスケットボール人気が高く、ファンの強烈な熱狂でもおなじみ。Bリーグではドワイト・ラモス(レバンガ北海道)やキーファー(滋賀レイクス)、サーディ(三遠ネオフェニックス)のラベナ兄弟といった同国出身の人気選手がプレーしている。ただソットはそんな中でも一、二を争う人気プレーヤーだ。

 横浜BCには河村勇輝が所属している。バスケファンには説明不要だが、昨シーズンのBリーグMVPに輝いた22歳のポイントガードで、W杯でも大活躍を見せた人気選手だ。21歳のカイ・ソットと22歳の河村は既に世界の大舞台を経験しているだけでなく、2016年4月のU16アジア選手権準々決勝で対戦した縁もある。そのときは河村が2得点にとどまったのに対し、カイ・ソットは28得点の大活躍。フィリピンが72-70で日本を下している。

初戦は13分弱の出場で3ブロック

 30日のカイ・ソット加入初戦は横浜BCが73-72で勝利した。彼は12分52秒の出場で4得点、4リバウンド、3ブロックを記録している。相手のシュートを叩き落とすブロック、空中でパスを受けてそのままダンクを叩き込む「アリウープ」と、長身を生かしたインパクトのあるプレーを見せていた。

 青木勇人ヘッドコーチ(HC)は試合をこう振り返っていた。

「彼自身がゲームに対してものすごく意欲的で、プレーに飢えていました。プレー、DFシステムのピックアップ(把握)も素晴らしく早いので、今日は行けるなと思って起用しました。ペイントエリア(ゴール下の制限区域)内の存在感は期待していたところです。練習で合わせる回数は少なかったですけど、ポジティブな場面が多く見られたし、かなりのインパクトを残してくれたと思います」

 カイ・ソット自身はこう口にしていた。

「プレーをハードにやり切ること、しっかり走り切ってリバウンドを取り、チームのためにDFをがんばることを考えて試合に臨みました。腰の怪我からの復帰戦で、まだ完全な状態でやるのは難しいと思っていましたが、実際にやってみていい感じでした。これからの試合を経て、パフォーマンスを上げていきたい」

カイ・ソットのピック&ロールに可能性

 B1では現在最長身のカイ・ソットだが、反転の鋭さや縦のスプリント力も兼ね備えている。ハンドラーとの連携からDFのズレやミスマッチを誘発する「ピック&ロール」は彼を生かすプレーに違いない。カイ・ソットが相手へスクリーンをかけた後にロール(反転)からゴール下に飛び込む鋭さ、迫力を兼備しているからだ。

 横浜BCのハンドラーといえばまず河村だが、彼はこう述べる。

「今週から(カイ・ソットが)5 on 5に入って練習をしたんですけど、彼とすごく相性が良くて、ロールのタイミング、嗅覚に似ている部分がありました。今日は彼をどう生かそうかなというので、ロングパス、アリウープパスに何本かチャレンジしてみました。ターンオーバーが2個くらいありましたけど、ピック&ロールで彼とのホットラインを作ることができれば、新たな武器になります。それはすごく楽しみだし、そこが機能してくればシューター陣が空いてきたりとか、自分が空いてきたりとか、色んな部分がチームとして機能していくと思います」

 ディフェンス側もピック&ロールに対しては色んな手を打ってくる。ただスイッチ(受け渡し)をして220センチに小柄な選手をつけるのは禁物だ。そのままビッグマンが対応し続けると、スクリーンから生まれた「ズレ」をハンドラーに使われてしまう。3人目、4人目がインサイドに寄ってスペースを消そうとしたら、今度は外が空く。

 カイ・ソットと河村、他のハンドラーとの連携が合うという前提さえクリアされれば、彼らのピック&ロールからはその先に様々な広がりが生まれるはずだ。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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