遠藤航、攻守の切り替えを支配する「6番」へと変貌 “5メートル前方”の新たな景色の中で進化を続ける
クロップ監督が「勝利への欲望が高まった」と語った同点弾
フラム戦の後半38分から出場した遠藤は、その4分後に大仕事をやってのける。サラーからのバックパスを引き出し、右足で狙いすましたシュートをゴール右上方に沈めた 【ロイター/アフロ】
その足元へエジプト代表FWが丁寧なパスを送ると、ペナルティエリアの手前から遠藤が少し体を開いて右足を一閃した。右隅のトップコーナーを狙ったテクニカルなフィニッシュだった。このシュートが遠藤が描いたイメージ通りにフラム・ゴールの右隅トップコーナーに突き刺さって3-3の同点となると、アンフィールドが大揺れに揺れた。
目の覚めるような遠藤の同点弾に続き、この試合で全盛期のデイヴィッド・ベッカム級のフリーキックを叩き込んで先制点をもたらしていた(記録上は相手GKのオウンゴール)アレクサンダー=アーノルドが、こぼれ球を拾って右足ボレーで決勝点となるゴールを挙げた。
遠藤の同点弾からわずか1分後の後半43分だった。試合後クロップ監督が「あの同点弾で勝利への欲望が高まった」と語ったが、まるで遠藤が連携プレーで心を通じ合わせるアレクサンダー=アーノルドの背中を押したかのように、フラムに引導を渡す4点目を決めた。
イングランドで「フットボールは4-3の試合が一番劇的で面白い」と言われるが、この試合の結末にはドイツ人闘将も「まさかフラムの試合に来て、一生忘れられない試合を見るとは思わなかっただろう」と舌を巻いた。
今のメンバーで本職のナンバー6は遠藤だけ
遠藤はクロップ監督が求める「ナンバー6」に着実に近づいている。この先、ドイツ人指揮官は中盤3人の構成に頭を悩ませることになるのではないか 【Photo by Andrew Powell/Liverpool FC via Getty Images】
先週の欧州戦では、アーセナルの冨安健洋も大活躍だった(チャンピオンズリーグのRCランス戦)。前半45分間だけのプレーだったが、右サイドバックでありながら2アシストを記録した。
そんな日本代表の後輩に刺激を受けるかと遠藤に尋ねると、少し申し訳ないというようなはにかんだ笑顔を見せて「試合は見てないんです(笑)」と一言。しかし、「ああやって彼も3シーズン目でスタメンを勝ち取るようになった。サブで入っていくことが多かったと思いますが、そこからしっかりやらなくてはならないことをやって、少しずつ信頼を勝ち取っていった。そこは僕も同じようにやりたい。それが選手としてあるべき姿だと思います」と話して、ベンチスタートが続くリーグ戦で、それがたとえ短いプレー時間であろうと「チームメイトと監督の信頼を勝ち取ることが先決」ときっぱり言った。
今季のリバプールは主将のジョーダン・ヘンダーソンをはじめ、ファビーニョ、ジェームズ・ミルナー、アレックス・オクスレイド=チェンバレン、ナビ・ケイタが去り、中盤が一気に刷新された。新加入の中ではドミニク・ソボスライとアレクシス・マック・アリスターがリーグ戦で先発し、グラフェンベルフ、そして遠藤の2人が、U-9からリバプールに所属する生え抜きのカーティス・ジョーンズ、16歳で天才MFとの触れ込みで移籍してきたエリオットという10代から一軍入りしている2選手とともに、残り一つのレギュラーの椅子を争っている状況だ。
現在6番はマック・アリスターのポジションだが、守りもできることで中盤中央に抜擢された形であり、本来は8番の選手。この位置の経験値では遠藤の方が上だ。今のメンバーで「本職のナンバー6」と呼べるのは日本代表主将だけである。
その遠藤が3か月間で急激にリバプール仕様の6番に変貌した。さらにフラム戦での鮮烈な同点ゴールにより、決定力でも大アピールに成功した。今後はクロップ監督にとって、中盤の先発メンバー3選手の選択と組み合わせが大きな頭痛の種となりそうである。
(企画・編集/YOJI-GEN)