ACL国立開催は甲府の力になったのか? 晴らしきれなかった悔しさと、残した可能性

大島和人

「他サポ」を選手はどう見たか?

「他サポ」は節度を持ちつつ、甲府を後押ししていた 【Photo by Masashi Hara/Getty Images】

 もちろんJITリサイクルインクスタジアム(小瀬)でホームゲームをやるのがベストだったことは間違いない。ただスタジアムの仕様がアジアサッカー連盟の規定を満たさず、「セカンドベスト」としてクラブは国立を選択した。興行原価は間違いなく高くなるが、国立は都会のオフィスワーカーにとって平日でも足を運びやすい立地だった。

 東京都府中市出身、山梨学院高OBの宮崎にとっては国立も小瀬もホームだ。

「国立で点を決めてみたかったです。出身は東京なので色んな知り合いが来てくれて、試合が終わってから連絡をもらって、また実感している感じです」

 クラブも結果的に地元で開催できないピンチをチャンスに変え、チケット販売や「ホームの空気作り」に成功した。宮崎は振り返る。

「初戦の国立で、すごく感動したのを覚えています。勝って手を振っているときに色んなサポーターの人がいて、素直にマジで感動して『すごいな』と。批判的な声もあるみたいですけど、自分はそれで感動したし、ありがたく思っています。こんなことはこの後ないかもしれないですけど、いい経験をさせてもらっています」

 43分にビューティフルゴールを決めた鳥海芳樹は言う。

「正直に言うと初戦が(集客の)ピークなのかなと僕たちは思っていたんですけど、毎試合増えてくれて、今日も最後のコーナーキックは声量の上がるのがすごく伝わってきました。それが(宮崎)純真のゴールにもつながったと思いますし、僕たちへの後押しを強く感じていました」

 国立開催、他クラブのサポーターも含めた後押しはチームを押し上げた。メルボルンC戦の3-3という結果は満足のいくものではないが、ともかく次のステージに進む可能性は残った。

決戦は12月12日のアウェイ戦

「悔しさ」もまだ選手たちを駆り立てるエネルギーとして残っている。宮崎はグループ最終戦に向けた決意をこう口にしていた。

「リーグ戦の最後は山形のアウェイで(J1昇格プレーオフ出場を)決められませんでした。次はアウェイの地で『借りを返す』ではないですけど……。皆さんに注目していただいている中で、ACLは(グループリーグを)突破して本当に意味が出ると思います。難しい試合にはなりますけど、今日みたいな(緩い)試合の入りはせず、堅く勝てればいいと思っています」

 グループGの最終戦はタイの強豪ブリーラムが相手。10月のホームゲームは甲府が1-0で勝利しているものの、12月でも最高気温が30度を超えることが珍しくない環境の難しいアウェイ戦になる。

 その次のステージは2024年2月にホーム&アウェイで組まれるラウンド16。果たして甲府は国立の夢舞台に戻れるのか?その答えは12月12日に出る。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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