ACL国立開催は甲府の力になったのか? 晴らしきれなかった悔しさと、残した可能性

大島和人

宮崎純真(右)の同点ゴールで甲府は辛うじてグループ首位を保った 【Photo by Etsuo Hara/Getty Images】

 AFCチャンピオンズリーグ(ACL)はグループリーグの終盤を迎えている。東アジアの5グループ20チームからノックアウトステージ(決勝トーナメント)に進むのは8チーム。グループGのヴァンフォーレ甲府は11月29日にメルボルン・シティFCとの首位攻防戦に臨んだ。両チームは勝ち点、得失点で並んでいて、「総得点」で甲府が1点上回る状態。甲府が国立競技場のホーム最終戦で勝ち点3をつかめば、首位突破に大きく前進する試合だった。

 しかし結果は3-3の引き分け。両クラブの微差は変わらず、甲府のグループステージ突破はブリーラム・ユナイテッド戦の結果に委ねられる。

悔しさの残る引き分け

 11月12日にJ2のリーグ戦が終了しているため、甲府は強行日程から解放されている。一方で「中16日」の難しさもあったのか、試合の入りで早々に失点を喫してしまった。決定機の数を振り返れば甲府がやや優勢で、59分、64分の連続失点も含めてもったいない印象を否めない内容だった。甲府はここまでホームゲームが2勝、アウェイゲームは1分け1敗で「ホームの力」を武器にしてきた。しかしメルボルンC戦は勝ちきれなかった。

 記者たちの前に現れた甲府の選手たちは「悔しさ8割、安堵2割」という空気感だった。85分に同点ゴールを決めた宮崎純真はこう口にしていた。

「大きな勝ち点1ですけど、ホームでしたし、自分が勝たなければいけない試合という認識だったので、悔しい気持ちが強いです」

 自らの同点弾はこう振り返る。

「頭に当たってから肩に当たりました。クリス(ティアーノ)からのクロスはちょっと相手に触られそうだったけど、ファウルにならないくらいに攻めて身体を当てられたのが良かった」

 選手たちは試合前から「悔しさ」を抱えて国立のピッチに立っていた。甲府はJ1昇格プレーオフを自力で決められる6位で最終節に臨んだものの、ロスタイムに決勝点を許す逆転負けでモンテディオ山形に屈した。J1昇格という最大の目標はすでに消えていた。

 宮崎には別の悔いもあった。甲府は昨年10月16日の天皇杯決勝でサンフレッチェ広島を下してACLの出場権を得ている。しかし彼は決勝戦直前の練習中に負傷し、決勝の大舞台に立てなかった。

「去年の天皇杯で自分たちが勝ち取ったACLですけど、決勝はけがで出られなかった。あれから天皇杯の話はあまりしたくないくらい自分の中では悔しいけがでしたけど、今日はそれをちょっと晴らせました」

15887人が国立に

 チームも微差ながらグループGの首位を保った。最終戦で勝ち点3を得れば首位突破、もしくは2位抜けの可能性がかなり高くなる(※メルボルンCとの得失点差、他グループとの成績比較が絡むので「勝ったら確実に決まる状況」ではない)

 甲府は国立のホームゲームは2勝1分けで終えた。10月4日にブリーラムから挙げた劇的な勝利、快勝した11月8日の浙江FC戦と、サポーターにとっても見ごたえのある試合が続いた。国立開催の観客数は右肩上がりで増え、メルボルンC戦は15887人が来場していた。ホームの観客数で浦和レッドダイヤモンズ、横浜F・マリノス、川崎フロンターレに勝ったことはクラブにとって快挙だろう。

 宮崎はこう実感を述べる。

「大会が始まる前の想像と違って、たくさんの人が来てくれました。東京にあれだけ山梨の人たちが来てくれて、いつものホームとは違う何か特別な力が出てくる感じで、すごく楽しくできました。他のサポーターの人たちも来てくれて、だんだんと注目度が上がっているのも自分たちは感じています」

 新宿発の「特急かいじ号」は22時発、23時発ともに指定券が完売。国立のゴール裏には週末のリーグ戦と同等以上の甲府サポーターが詰めかけていた。またクラブが「他サポ」の来場を呼びかけたこともあり、バックスタンド寄りの一角にはカラフルなユニフォームやゲーフラが並んでいた。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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