J2甲府はACLでも奇跡を起こせるか? グループ首位浮上に導いた選手起用と戦術

大島和人

甲府は8日の浙江FC戦を4‐1と快勝している 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】

 2022年の天皇杯を制したJ2ヴァンフォーレ甲府が、2023/24シーズンのAFCチャンピオンズリーグ(ACL)でも快進撃を見せている。ACLは推計人口約47億人のアジアから、トップ40のクラブが出場する頂上決戦。グループHの甲府は8日に国立競技場で浙江FC(中国)を4-1と下し、6試合中4試合を終えて勝ち点7のグループ首位タイに立った。11月29日にやはり国立競技場で開催されるメルボルン・シティ(オーストラリア)戦は「首位対決」で、これに勝利すればグループステージ突破へ大きく前進する。

 甲府はJ2でも際どい昇格争いの渦中にいて、まったく手を抜けない状況だ。ACL開幕後は週末のリーグ戦、週中のACLでターンオーバー(選手の大幅な入れ替え)を行い、2チーム制を敷いている。J2でも現在9戦負けなしと堅調で、J1昇格プレーオフ圏内の6位に踏みとどまっているのだからスゴい。山梨のプロビンチャ(地方都市の小クラブ)は、アジアの強敵相手にサプライズを見せている。

2週間前の敗戦からどう立て直したのか?

 甲府が8日に対戦した浙江FCは10月25日のアウェイ戦で0-2と敗れている難敵。当然ながら戦術的な修正が必要だった。

 篠田善之監督はホーム戦の勝因をこう説明する。

「オープンな展開になるほど彼らは強みを出していたので非常に警戒していたけれど、逆に自分たちの戦い方ができた。一つはウタカを先頭にして、飯島(陸)選手のプレスバックなど、前線からの二度追いが徐々に彼らを窮屈にできた。アウェイでは11番の選手(フランコ・アンドリヤシェビッチ)が林田滉也の裏に立って、(スペースに)出たらボールを供給されることが何度かあった。そこを本当にスカスカに使われたけど、(ホーム戦は)選手たちが理解してスペース上手く見ていた」

 攻撃面における最大の打ち手がMF中村亮太朗の起用だった。浙江FCはDFの『ハイライン』が特徴で、逆に言うとその背後には広いスペースが空いている。中村はそこを攻略するキーマンになった。

「浙江は本当にハイラインで、DFラインが止まって、バックパスをしたら上げてというのを繰り返してくる。アウェイに行ったときはスペースが空いている分、早めに蹴ってそれを拾われて、自分たちの時間を作れなかった。スカウティングでそれ(背後のスペース攻略)にチャレンジしようとは言っていたんですけれども(できなかった)」(篠田監督)

中村のスルーパスが起点に

中村亮太朗はスペースの配球力が高く、浙江FC戦のキーマンになった 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】

 中村は「リーグ戦要員」で、今季半ばに鹿島アントラーズから復帰して以後のほぼ全試合にフル出場している。11月3日のロアッソ熊本戦(○2-0)にも出ていたが、中4日の浙江FC戦も先発で起用された。スルーパスに強みを持つボランチで、実際に1点目と2点目は彼のパスが起点になっている。

「中村亮太朗はゲームをコントロールする、タメを作る、私達にとって非常に貴重な選手です。アウェイ戦は行ってないし、今日はキツいですけど、出てもらった。(甲府のアタッカーと浙江のDFが)入れ替わるシーンは非常に多かったと思いますけど、それを狙いながらやりました」(篠田監督)

 1点目(18分)のスルーパスは、ダイレクトで30メートル近くある距離からウタカに通した。2点目(45+2分)は右足のアウトでエリアの右に落とす絶妙の浮き球だった。決定的なスペースが見えて展開も人より早く読める、そして実際にそこへ出せるのは中村が持つ特別な能力だ。

 中村自身はこう振り返る。

「相手に集中力の切れる瞬間があるというのも言われていたし、チームとしても狙っていて、それが上手く行った。(1点目は)あれは上手く行ったっすね。(2点目のパスは宮崎)純真が見えたし、よく走ってくれたので、うまくスペースを落とせた」

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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