J2甲府はACLでも奇跡を起こせるか? グループ首位浮上に導いた選手起用と戦術
甲府は8日の浙江FC戦を4‐1と快勝している 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】
甲府はJ2でも際どい昇格争いの渦中にいて、まったく手を抜けない状況だ。ACL開幕後は週末のリーグ戦、週中のACLでターンオーバー(選手の大幅な入れ替え)を行い、2チーム制を敷いている。J2でも現在9戦負けなしと堅調で、J1昇格プレーオフ圏内の6位に踏みとどまっているのだからスゴい。山梨のプロビンチャ(地方都市の小クラブ)は、アジアの強敵相手にサプライズを見せている。
2週間前の敗戦からどう立て直したのか?
篠田善之監督はホーム戦の勝因をこう説明する。
「オープンな展開になるほど彼らは強みを出していたので非常に警戒していたけれど、逆に自分たちの戦い方ができた。一つはウタカを先頭にして、飯島(陸)選手のプレスバックなど、前線からの二度追いが徐々に彼らを窮屈にできた。アウェイでは11番の選手(フランコ・アンドリヤシェビッチ)が林田滉也の裏に立って、(スペースに)出たらボールを供給されることが何度かあった。そこを本当にスカスカに使われたけど、(ホーム戦は)選手たちが理解してスペース上手く見ていた」
攻撃面における最大の打ち手がMF中村亮太朗の起用だった。浙江FCはDFの『ハイライン』が特徴で、逆に言うとその背後には広いスペースが空いている。中村はそこを攻略するキーマンになった。
「浙江は本当にハイラインで、DFラインが止まって、バックパスをしたら上げてというのを繰り返してくる。アウェイに行ったときはスペースが空いている分、早めに蹴ってそれを拾われて、自分たちの時間を作れなかった。スカウティングでそれ(背後のスペース攻略)にチャレンジしようとは言っていたんですけれども(できなかった)」(篠田監督)
中村のスルーパスが起点に
中村亮太朗はスペースの配球力が高く、浙江FC戦のキーマンになった 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】
「中村亮太朗はゲームをコントロールする、タメを作る、私達にとって非常に貴重な選手です。アウェイ戦は行ってないし、今日はキツいですけど、出てもらった。(甲府のアタッカーと浙江のDFが)入れ替わるシーンは非常に多かったと思いますけど、それを狙いながらやりました」(篠田監督)
1点目(18分)のスルーパスは、ダイレクトで30メートル近くある距離からウタカに通した。2点目(45+2分)は右足のアウトでエリアの右に落とす絶妙の浮き球だった。決定的なスペースが見えて展開も人より早く読める、そして実際にそこへ出せるのは中村が持つ特別な能力だ。
中村自身はこう振り返る。
「相手に集中力の切れる瞬間があるというのも言われていたし、チームとしても狙っていて、それが上手く行った。(1点目は)あれは上手く行ったっすね。(2点目のパスは宮崎)純真が見えたし、よく走ってくれたので、うまくスペースを落とせた」