細部にまでよく気が付くバウアー アメリカとの違いを意識しながら取り入れた日本の長所とは
9月中旬、リハビリの合間にインタビューを実施 【スポーツナビ】
「日本にも、サイ・ヤング賞のような賞があるの?」
沢村賞というのがあると伝えると、「メジャーでサイ・ヤングを取ったら、いつか沢村賞も狙ってみたい」と言いながら、東京ドームの方に顔を向けた。
翌年、ナ・リーグのサイ・ヤング賞を獲得。日本でも今年、その可能性が出てきた矢先だった。5月27日以降、8月25日の中日戦を終え、15試合に登板すると、112回2/3を投げて、9勝2敗、2完投。防御率2.00。
9月も中4日で投げ続ければ、逆転もあるのか? というところだったが、8月30日の阪神戦で、三塁前のゴロを処理した際に右足付け根を痛め、顔を歪めた。翌日は右足が上がらず、検査の結果、「右腸腰筋遠位部損傷」と診断された。離脱が1ヶ月を超えることが確実となると、その可能性が潰えた。
「仕方がない」
検査結果が出てから、「掛ける言葉がない・・・」とメッセージを送ると、そう返信があった。
当初、インタビューを9月2日に行う予定だった。ケガで延期となったが、9月16日にリモートで行うと、「前日から、軽く走り始めた」と明かし、「リハビリは順調」と思ったより明るい表情だった。
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いやなことがあっても24時間以降は切り替える主義
リハビリの経過を聞くと、「まずは、普通に歩けるようになるところから始めて、そこから可動域を出し、筋量を戻していく。そういったプロセスを一歩一歩、進めているところ」と説明。それから2週間ほどでライブBPにも登板したことで、14日から行われたCS(クライマックスシリーズ)での登板も視野に入るほどだった。
彼は通常、なにかがあったとき、その原因を徹底的に探る。後編で改めて別のケースを紹介するが、ケガに関してはどうだったのか? 疲労に起因し、思うように体が動かなかったのか。どこかに張りがあり、普段とは違う動きになったのか。本人もいくつかの可能性を考えたようだが、思い当たる節はなかった。
「ケガの前兆はなくて、そのときのジャンピングスローの結果、ケガに繋がったと思う。プロのレベルで、一瞬のタイミングで全力プレーをすると、そういったケガをしてしまうことがあるので、今回もそういう偶発的な動きが、ケガにつながった」
不可抗力。強いて言えば、競争心の強さが、ケガを招いた。
さて、そんな近況を聞いた後で、まずは、日本での生活ぶりを聞いた。5月終わりに話をしたとき、「日本の食事が美味しくて、体重が増えてしまった」と苦笑した。「本当にお寿司は美味しい。気づくとたくさん食べてしまうが、そうなると、一回で摂取する炭水化物の量も相当なものになるので、それが原因かも」。
その後、どう? と聞くと、やはり日本の食習慣にどう適応するかは、課題のひとつだったそう。
「日本では脂身の多い肉がいいとされているけど、アメリカでは赤みの付いている肉のほうが美味しいとされている。だからまず、自分に合う肉を探した」
日本では確かに“霜降り”の方が人気。アメリカでは逆に“脂”として敬遠されがち。そうした違いも理解する必要もあった。
また、「日本では、一食に必ずご飯や麺がついてくる。そうした炭水化物の多さも、シーズン当初の体重増につながったと思う」とのこと。「でも、来日してから3〜4週間かけて、自分にとってどういう栄養環境がいいのか、徐々に見つけることが出来て、最終的には206〜209パウンドという、自分が理想とする体重に落ち着くことができた」。
アメリカでは、カロリー計算された食材宅配サービスを利用していたバウアー。朝など、必要なものをすべてジューサーにかけ、それを飲み干していた。調理時間、食器を洗う時間も短縮できるからだ。日本ではそこまでしてないようだが、食事に行くときは、美味しいものというより、そのときに必要なものを摂るようにしているそう。